田口史人「レコード寄席覚え書き・春」

田口史人「レコード寄席覚え書き・春」 ¥1260
レコード寄席
 高円寺の“円盤”店主、田口史人が、流行歌ではない、生活の中で生まれたレコードを紹介するトークイベントのための覚え書き第一集。
 般若心経を歌うやけにゴージャスな中年女性の自主制作盤から、緊急の手引きを満載したジャケを壁に掛けて活用できる(音は著名人たちの緊急対処法トークでレコードで聞く必要があるのか謎のものの)お役立ちアイテム、キレものが居たと思われる高校の卒業記念のやけに気がきいた内容のレコードなど、百枚のハヤリウタとは別次元にある、生活に密着したレコードについて徒然に書き下ろした文集。
 万博についての説明やイメージを6枚組ソノシートで説明する「万国博を成功させよう」など戦後〜高度成長経済の活力に溢れる昭和の生活がレコードを通じて感じられる不思議な世界です。
 モンドの一言で括って笑い流したり、高みから笑うのではなく、全く素性の知れない歌い手の歌や声にひたすら耳を傾け、あるいはその内容から作り手や時代に思いを馳せる、レコードを通しての真摯な聞き取りの姿勢が伝わってきます。聴く事の新たな境地を示してくれる一冊!
オールカラー、CDR付き。
A5判46P
※テレビが、家電やガンダムの蘊蓄を語り、情報や蘊蓄が消費されてゆく中で、批評したりカテゴライズせず、ただ聴くというシンプルな作品へのアプローチには目からウロコ。また、円盤という、作り手との直取引のみで成立するショップ+ライブ空間を通して生まれた覚え書きは、また円盤というお店の一部でもあり、大きな広がりを感じます。おすすめの一冊です。