Mayeul Vigouroux 「La Manticore ラ・マンティコール」¥3273+tax
タイトルのManticoreとは、ライオンの胴と人の顔と蠍の尾をもつ伝説上の人喰い怪物。
暴君である女王ユスラの出産に立ち会った夫グフランは、妻のミソジニーを怖れ、とりあげられたばかりの女児を見るや「立派な男の子だ!」と妻を労い、すぐさま兄弟のもとに子供を送り出し、男子として養育させる。シャミルと名付けられたその子は、叔父のもとで大事に育てられ、礼儀作法から学問、戦術などの教養を身につけてゆくが、衣服の下に隠されたもう1つの自分のアイデンティティに苦悩するようになる。
成長して、母を訪ねたシャミルは、突然、許嫁がいる同盟国の王女ジョティとの政略結婚を言い渡され、国を出るものの、破いた衣服に自身の血を塗り、Manticoreに襲われて亡くなったことにして、姿を消して漂泊の旅に出た。
行き着いた町の公衆浴場で、居合わせた女性に、男性でもあり女性でもある自身の苦悩を告白し、ケアを受けたシャミルは、風の噂で自分が去った後、母が病にたおれ、国が乱れ、ジョティも姿を消したことを知り、彼女を探し出し、陰謀が渦巻く城へと乗り込む。
自身のアイデンティティや運命に苦悩する一方で、学びや癒しを得ながら、邪悪な力と闘い母と向き合い、自らの居場所を探すシャミルの様子を、架空の国を舞台に寓話のように描きます。シャミルの不安や苦悩やときとしてManticoreの姿になって登場します。
著者のMayeul Vigourouxは、ENSAD(国立高等装飾美術学校)に学び、神話や寓話、中世の装飾写本などに着想し、卒業制作のためにこの作品を制作。細部に施された様々な装飾模様の美しさや、絵巻物のように一つのコマに異なる時間のレイヤーが重ねて描かれているのが印象的です。
Atelier Quintalで多色リソ印刷されています。
34cm x 27 cm ミシン綴じ 48pages フランス語