カテゴリー別アーカイブ: 書籍

梁丞佑 写真集「人」

梁丞佑「人」(Zen foto gallery)¥4630+税

梁丞佑による土門拳賞受賞後最初の作品集「人」は横浜寿町を舞台にした人々がテーマ。
受賞作の「新宿迷子」同様に、自身が街に飛び込み、路上の住人となり人々と交わる中で、その自然な姿、あるいは普段みせない表情を捉えています。

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神奈川県横浜市寿町。
横浜中華街から10分ほど歩いた所に存在する。
最初は話に聞いて何の気なしに訪れた。
いろんな国の言葉が聞こえ、さらに私が思っている日本像とはあまりに違う街の様子に「ここは日本ではない」と感じた。

撮りたいと強く思い、この街に通いつめるわけだが、しばらくは「ただ、見ていた」。隠し撮りをするという方法もあったのだが、それではなんだか気がとがめ、彼らと交わりたいと思った。
とりあえず、道に座って酒を飲んでみた。
彼らは私が煙草の吸殻を灰皿に捨てたら「変な奴だ」と言った。言葉も乱暴。しかし「分け合う」ことを知っていた。生活は貧しくても心は豊かであるように感じた。

こうして彼らと過ごす事3ヶ月。やっと、私に1人が聞いた。
「お前は何をやっている人間なんだ」と。
仕事もせずに日がな一日道に座っている事を、やっと奇妙に思ってくれたのだ。
満を持して私は言った。
「写真しています」と。そこから私の撮影が始まった。

ぎりぎりで、這いつくばるような、そうかと思えば、すでに全てを超え浮遊しているような、悲しさや寂しさ辛さとともに、幸せも楽しみも、悪意も善意も。
手に取るように感じられた。
「人が生きるということは…」
そう問われているように感じた。

ある日、コインランドリーの入り口で雨宿りをしていた一人の中年男性がいた。血だらけだった。「どうしたの?」と聞いたら、その男性は私の目を見て、
「だるまさんが転んだ…」とだけ繰り返した。温かいお茶を差し出したら、
「ありがとう」と言って、ただ握っていた。私がいるときには、飲まなかった。

日本には「だるまさんが転んだ」という遊びがある。
鬼が「だるまさんが転んだ」といって振り返ると、鬼に向かって近づいて来ていた人達は、動きを止める。もし動いている事がばれると、自分もまた鬼になる。

オレに構うな。

「だるまさんが転んだ」

もしかするとそういう事だったのかもしれないと今になって思う。

2017年現在、寿町は他のドヤ街と同じく以前の姿は消え、高齢化が進み、街の「境界」は曖昧になり他の街となじみつつある。

これらの写真は、2002年から2017年まで寿町で撮影したものです。  ーーー梁丞佑

profile
梁丞佑(Yang Seungwoo)
韓国出身。96年に来日、日本写真芸術専門学校、東京工芸大学芸術学部写真学科、
同大学院芸術学研究科メディアアートを修了。在学中より写真家として活動を開始し、2003年の在学中に米国International Photography Awards Other Photojournalism Section入賞。2008年にはキャノン写真新世紀佳作入選、2009年に東京都美術館にて開催された第34回「視点」への出品など、対象に深く入り込むスタイルを貫き、国内外で評価を得ています。
2017年土門拳賞受賞。

A4判112pages English/Japanese

池田ハル 初単行本「裸のアヌーシュカ」

池田ハル「裸のアヌーシュカ」(青林工藝舎)¥1800+税

女の子をモチーフに、イラストレーターとして活動していた池田ハルが、2003年の「第五回アックスマンガ新人賞」の古屋兎丸個人賞受賞をきっかけに漫画を描きはじめ、10数年がかりで完成させた作品集、初漫画単行本!
連載分を大幅に加筆修正し、52ページの描きおろしを加えての完成版です。

作者が大好きなゴダールの「気狂いピエロ」の中のアンナ・カリーナを下敷きにしたモチーフやオマージュ、インスパイアされた物語が詰め込まれています。一般的な漫画のコマ割りとは違った、イラストブックのような構成もところどころにあり鉛筆で描かれたタッチが味わい深いです。

A5判212pages 初版300部でエディション入り。
タコシェでお求め分にはサインと特典のポストカードがつきます!!

発売記念の個展をパールブックショップ&ギャラリーさんで7/23まで開催。

石川次郎 Jirô ISHIKAWA「C’est comme ça」

石川次郎 Jirô ISHIKAWA「C’est comme ça」(Editions Matiere) ¥2130+税

2017年5月、横山裕一をはじめグラフックなコミックを発行するフランスのEditions Matiereから出た作品集。2009年にタコシェで発行した「GIRO」に次ぐ作品集で、新作「東京の夜」を含む9短編を収録。

仏訳は、夢野久作や内田百閒などの文学作品から児童文学、コミックまで手がけるパトリック・オノレ。

収録作品
PAPER ROOM
プリティ・ラブ
ふつう(NORMAL)
パール(PERLE)
誇大えすい〜X(SeXXXL)
チンコマン (L’HOMME-BITE)
乞食志願(UN FUTUR CLODO)
東京の夜(NUIT DE TOKYO)
なにしにきたんだっけ(QU’EST-CE QUD JE FOUS LA?)
●作家インタビュー

手描きとは思えない美しい描線の石川次郎作品のタッチを忠実に再現しながら、擬音などの描き文字も、シーンにあわせて作家の描き文字に沿わせてフランス語をルビ的に配置したり、別途、文字を作ってあてはめたりと、丁寧な作業でグラフィック美と原作の持ち味を最大限に発揮しています。

表紙もモノクロ画を独自に彩色、蛍光ピンクと金の描線が美しく、見返しも蛍光ピンクと金です。

15×21cm 168pages

金原みわ「日本昭和珍スポット大全」

金原みわ「日本昭和珍スポット大全」(辰巳出版)¥1500+税

さいはて紀行」(シカク出版)で、珍スポットとそこに息づく人々を暖かく描いた金原みわのが、昭和に誕生した珍しい場所を巡ったガイドブック。

全国各地の遊園地、博物館、温泉、旅館、遊戯施設、各種商店、飲食店、映画館、雑居ビル、歓楽街など、種々雑多なスポットを巡り、かろうじて昭和の終わりに生まれた平成育ちの筆者が『懐かしさ』を覚えるのでなく、はじめて見つけたような「斬新」さを感じる”物件をレポート。

panpanyaの「足摺水族館」のモデルになった足摺海底館、UFO遭遇体験をメニュー化した食堂、地盤沈下で傾く店に主人も客も体を適合させて持ちこたえている蕎麦店、96才の看板娘のいる競技場etc, スポットを紹介しながら、著者ならではの視点でそこに寄せる人々の想いにも心を寄せています。

懐かし自販機ハンター魚谷裕介との対談も収録。

A5判128pages

佐藤直樹「秘境の東京、そこで生えている Unexplored Tokyo: There, it has grown」

佐藤直樹「秘境の東京、そこで生えている Unexplored Tokyo: There, it has grown」(東京キララ社)¥3800+税

アートディレクター、グラフィックデザイナーとして長く活躍し続けてきた佐藤直樹が、2013年頃より木炭で身近な植物を描きはじめた「そこで生えている。」シリーズ。

子供の頃、無心に絵を描いていたのが、誰かに見られる事を意識してから、何かを失い元に戻れなくなった作者が、改めて「それ」を意識したのは、思春期の一時期を過ごした荻窪を歩いていた2011年。「それ」はただそこに生えるように存在しており、その直後に、大地は大きく揺れた。

そこにただ生えているものを描くことで、描いて描きまくれば、それが何かわかるようになるのだろうか?あちこちに、生えているいろいろなものを感知しては描き続け、とまらなくなってしまっている、増殖中の作品の記録、第一弾。

84mに達するパノラマ作品や、30mを超える新作など、全長150mを超え日々進化を続ける作品群の大規模個展が、アーツ千代田 3331にて2017年4月末に開催される。

図録を兼ねた画集として出版される本書は、220mm四方の紙面に作品群を再配置、躍動感溢れる筆致を手に取り観ることができる待望の第一画集となる。

巻末には、水沢勉、円城塔、宇川直宏、原田マハによる寄稿・対談を収載。作品へのレスポンスとしての挿文、アートとデザイン、創造の衝動、絵画史をめぐる対話・論稿など、増殖する作品群と並走するテキスト群を収めた。今日の表現活動に横たわる前提をほぐし、新たな視座をもたらす一冊。

22cm×22.3cm 160pages