牧ヒデアキ写真集「透明バリア」(makira)¥3000+tax
信号で停まった、運転中の車のサイドウィンドー越しに眺めた景色にいつもと違った感覚を覚えた著者は、以後、信号待ちの際に、フレームに切り取られた一期一会の風景に何らかの妙や偶然を感じれば写真と撮った。
窓枠に切り取られた景色の中に、入れ子のようにミラーがあり、その中にまた別角度の景色が映り、車というパーソナルな空間から透明なバリアを介して見る、近そうでいて触れることのできない世界。
2020年春から、コロナ禍で、パーテーションやビニールシートによるバリアと非接触を意識させられたとき、著者は2016年から19年にかけて撮りためたこれらの写真をまとめることを思いついたという。
表紙は、タイトルにちなんで、サイドウィンドー型に切り抜き、透明フィルムを嵌め込んでおり、本文もところどころ切り抜いたページ越しに画像を見る仕掛けがあります。
道端や空き地に打ち捨てられたように置かれ、水槽や物入れとして利用されている浴槽を集めた写真集「浴槽というモノリス」にも共通する、切り取りの妙がここでも発揮されています。
A5判並製86pages