関根美有 傑作選「はびこる愛」(シカク出版)¥1000+税
これまで関根美有が自主制作で発表し、久しく品切れだった名作たちがシカク出版から傑作集として発行されました。
●収録作品はーーー
タグレッツ/僕とカメラと……。/アルプススタンド/片想い家/コントトール/ハロー!トーテムポール/ママール・フ・モモール、なりに
●エベレストライブラリスタッフによる解説
●漫画家高野雀さんによるコメント
初版の際のタコシェでの作品解説をいくつか再録しておきます。
☆☆☆
◆ママール・フ・モモール、なりに
芸術家ママール・フ・モモールを主人公に、芸術を日常とすることを選んだがゆえに、地上から常に10センチ浮いているような、違和感ある日常を生きる男の様子を、シンプルな線画で淡々と描く。
自画像の中の自分を描いた自画像、芸術家でありながらとるに足りない床のシミと区別がつかない存在となったママール、あるいは宇宙に浮遊する偉大な芸術家となるママール……、ママールの空想や妄想のようで、あらゆる芸術家に通底するひたむきさと孤独を象徴したような描写が、グラフィカルに表現されています。
ママール・フ・モモールの行動を説明するナレーションも詩的でひとつの芸術家像、スタイルを打ち出しています。
☆
◆片想い家
主人公は30才に近いというのに、フラフラしていて「家」になろうとしない半家半人キャラ?ベンブ君。自立しようとしない息子にしびれを切らした両親に追い出され、人間界で一人暮らしをしながら立派な家になる修業をはじめたものの、だらだらすごすうちに2年が経ち、仕送りをもらえるのもあと1年に迫っても、いまだ自立の気配なし…。
それでも同じアパートに住むギターのうまい窓子ちゃんと、友達になってスタジオで演奏したり、遊び歩いたり…。ところが、その窓子ちゃんが近頃、忙しくなったのか遊んでくれなくなり、一人でふらふら公園に行ってみたり、家でゴロゴロしてたり…すると、少年に会ったり、勧誘の人が訪ねてきます。
そんなありふれた人たちとの出会いの中にも、みんながそれぞれ何かをひそかに思っていることに気付くベンブくん。はたしてこれのどこかが修業?という日常の中、ベンブ君はどうなるのでしょうか?
☆
◆タグレッツ
立食い蕎麦屋に通う、雪国出身の青年が、店の女性に密かに心を寄せ気持ちを打ち明けるタイミングを待ちながら、(田舎)臭を意識する「タグレッツ」
A5判306pages