月別アーカイブ: 2020年8月

大竹昭子 随想録「スナップショットは日記か? 森山大道の写真と日本の日記文学の伝統」

大竹昭子 随想録「スナップショットは日記か? 森山大道の写真と日本の日記文学の伝統」¥900+tax

随筆・小説・書評・写真論などで活動する大竹昭子が都内の4つの書店を会場に開催するトークと朗読のイベント〈カタリココ〉から生まれた文庫本シリーズ「カタリココ文庫」。
対談の記録だけでなく、大竹昭子の散文もシリーズに加わりました。

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20代のデビュー当時から80才をすぎた現在まで、スナップショットという方法にこだわり、昨年(2019年)写真界のノーベル賞とも言われるハッセルブラッド国際写真賞受賞した森山大道。
80年代半ばに森山と知り合い、その作品を見ることで写真世界と繋がってきた著者は、ヨーテボリでの授賞式に駆けつけ、このシーンを皮切りに、森山大道の写真の核心を探ってゆきます。

森山の写真は、街路で目にしたものをスナップショットするという単純な方法で撮られていながら、世界が異界に満ち満ちていることを見る者に突きつけます。
日々歩いて撮るというシンプルさと、それが生みだすイメージとの飛躍。

著者はこの2点に注目し、そこにドナルド・キーンが『百代の過客』のなかで指摘した日本の日記文学の伝統が息づいているのではないかと考えます。
スナップショットは1950年代、カメラの小型化とともに広まりましたが、世界的には衰退する傾向にあります。
ところが、日本では森山大道をはじめとしてこれにこだわる写真家は多く、若い世代にも引き継がれています。
そこに平安時代以来の日記文学の伝統がかたちを変えて継承されているのではないか、という著者の指摘は、コロナ禍にあって日記が見直されているいま、さまざまな方向に考えを発展させる可能性を秘めています。

また本書の文章スタイルも、旅紀行やエッセイや評論の要素を併せ持ちながらも、そのどれにも属さない独自なものです。これについて著者はつぎのように述べています。

「写真について書かれた本は、専門用語や思想書からの引用が多く、難解になりがちです。写真はだれでも撮れる身近なものにもかかわらず、それについて語ろうとするとどうして難しい文章になるのか、というのは長らく私の疑問でした。
今回の本ではそれに挑戦し、写真の外に立って内部を観察しようと試みました。写真に関心のある人はもちろん、そうではない人にも自然に入り読み終えることができればうれしいです」

初出は『新潮』(2020年7月号)、それにコロナ禍の2020年6月19日に行った森山大道への最新インタビューを収録して1冊にまとめました。
森山の生い立ちや写真との出会いにも触れ、巻末に略年譜が付いた本書は、森山大道の写真を知るための手引きにもなるでしょう。

装丁は横山雄+大橋悠治
写真:森山大道

文庫68pages

河野聡子編「閑散として、きょうの街はひときわあかるい」TOLTA マイナンバープロジェクト 2020年4月20日ー5月19日

河野聡子編「閑散として、きょうの街はひときわあかるい」
TOLTA マイナンバープロジェクト 2020年4月20日ー5月19日 (TOLTA)¥1500+tax

2020年春、コロナ禍で、私たちは日々、様々な数字をつきつけられた。
毎日発表される感染者数や死者数、受診の目安としての4日以上続く37.5度以上の熱、2m以上の社会的距離、3密、2週間の隔離などなど…多くの人がこれらの数字に注目し、一喜一憂した。
あるいは、感染予防に名の下に、マイナンバーという個々に割り振られた数字に、個人情報がひもづけされて管理されるのでは…という不安や危惧も再燃した。

そんな中で、言葉と詩の未来を追求するヴァーバル・アート・ユニットTOLTAは、偶然にも自粛要請期間に重なった4月から5月にかけて、数字を含むテクストを1日1編以上、ネット上の共有ファイルに書き込むマイナンバー・プロジェクトを呼びかけ、そこに集まったテクストを詩として再構成したのが本書である。

感情を含まない(はずの)数字や数値によって、2020年の春、人々が動揺や不安を覚えた、その空気を伝えるテクストが詩人の視点によって鋭く再編されています。

【執筆者】
ゲスト参加者(敬称略)
暁方ミセイ、及川俊哉、大崎清夏、岡本啓、小峰慎也、柴田望、タケイ・リエ、文月悠光、北條知子、三上温湯、宮尾節子、吉田恭大
TOLTA
河野聡子、佐次田哲、関口文子、山田亮太

A5変形134pages

少女廣告 第七號 特集「街の奇跡をあなたにあげたい」

少女廣告 第七號 特集「街の奇跡をあなたにあげたい」¥454+tax

商品とともに消費され時代とともに変化する広告を掘りおこし、レビューする「少女廣告」。

第七号の特集は、「街の奇跡を、あなたにあげたい 。-CMに観る都市生活の昼と夜-」

21世紀へのカウントダウンを迎えて90年代、来るべき新時代に向けての革新的商品のリリースやモデルチェンジ、イメージチェンジが展開された夢多き時代を広告で振り返ります。

特別寄稿として、同時代の東京の街を撮影した映像が話題のLyle Hiroshi Saxon氏(ビデオグラファー、フォトフラファー、実はコピーライターも)のショートエッセイを収録。

○わたしと商品 ザ・スミ子(プロ彼女/兼業農家)「わたしのフジテレビジョン」
○CMコーディネート 金の卵が作ったあたらしいまいにち-JR東日本suica
○特別寄稿 Lyle Hiroshi Saxon「探して見ればある」
○本とモノ
J.H.グリフィン著 / 関口 功訳「世界ノンフィクション ヴェリタ24 より わたしのように黒く」
Beth Lahickey 著 「All Ages: Reflections on Straight Edge」

袋とじ製本になっていて、内側には図版やテクストがあります。
わら半紙のような紙に懐かしい時代の広告…ですが、QRコードがあって関連映像も見れます。

A5判32pages
表紙の女の子の耳に本物のピアスがついているものもあり。

駕籠真太郎 画集『死詩累々』発売記念展

2020.8.15 sat —8.28 fri

駕籠真太郎のアートワークを網羅した本格的画集『死詩累々』の発売を記念して、タコシェにて展覧会を開催いたします。

◎駕籠真太郎「死詩累々」(アトリエサード)¥3200+tax
オリジナル作品はもとより、色紙作品からポスター、フライヤー、Tシャツ、CD、DVD用のイラスト作品、個人誌・単行本の装画まで、不謹慎すぎるアートワーク277点を収録した大判サイズの画集です。
A4判128pages

※新作画集など駕籠真太郎関連の商品を5000円以上をお買い上げの方に先着でTシャツをプレゼントいたします。(なくなり次第終了となります)
>>>会期中、展示の様子をチラ見せいたしますので、お楽しみに!

刈部山本「埼玉「裏町メシ屋」街道旅」

刈部山本「埼玉「裏町メシ屋」街道旅」(光文社 知恵の森文庫)¥860+tax

町歩きをしながらの大衆食(ラーメン・町中華・食堂・酒場等)レポを、ブログ”デウスエクスマキな食卓”やミニコミ同人誌で発表してきた刈部山本が、『東京「裏メシ屋」探訪記』に続き、今度は埼玉を行く。

前著で、東京周縁部を深堀した著者だが、埼玉に特化した本の企画を提案された時には驚きや戸惑いもあったそう。
しかし、自身が埼玉出身のうえ、「翔んで埼玉」などをはじめとした埼玉への注目度uprという追い風、さらには知られていないものこそ紹介するというミニコミ活動で培ったスピリットで、埼玉の地元に根ざした「いい店」を巡る。

旧街道沿いをメインに、歩いては食べ、食べては歩き、銭湯で休んで最後に一杯。歴史と文化、食が交差する、これまでなかった埼玉グルメ本です。

【目次】

■第一章 工場労働者が支えた川口
~大衆食堂の記憶と、共働き世代の子供の聖地「ぼったら」

■第二章 西川口~蕨 今昔物語
~NK流から大陸中華へ、激変の西川口周辺を散策する

■第三章 ラーメンショップ路線バスの旅
~郊外ロードサイドの象徴「ラーショ」を味わい尽くす!

■第四章 大宮~川越を繋ぐ痕跡
~大宮の昭和残照から川越廃線跡うどん巡りへ

■第五章 川越「裏町メシ屋」紀行
~隠れご当地グルメで辿る“小江戸”じゃない川越

■第六章 広大なるフライ文化圏
~行田・熊谷・深谷の駄菓子メシ「フライ」を求めて

■第七章 秩父盆地 極楽案内
~秩父セメント廃線と、類まれなる盆地カルチャー

コラム1 埼玉の熊手市は酉の市ではない!
コラム2 伊勢崎線(松原団地~越谷)
コラム3 大宮~鴻巣路線バスの旅
コラム4 伊勢崎線(越谷~栗橋)
コラム5 最北の地・本庄へ

文庫326pages(光文社 知恵の森文庫)

※これまでタコシェにて、長年にわたり多くのお客様に”デウスエクスマキな食卓”をお求めいただいたご縁から、著者より16ページの特典冊子『川口「裏町メシ屋」少年期」をつけていただきました。