日別アーカイブ: 2020 年 8 月 23 日

SF・幻想文学・変な小説系翻訳同人誌 BABELZINE vol.1

BABELZINE vol.1 (バベルうお) ¥909

英語圏を中心としたSF・幻想文学・変な小説を翻訳するサークル「バベルうお」の同人誌。

ここ数年のうちに発表された、英語圏の日本には殆ど紹介されていない(けど、現地では注目の)未邦訳翻訳小説11編と、主宰者でもある白川眞氏の評論「疫病時代のバーチャルリアリティと性の想像力」を収録。

収録作品は—

【翻訳】
● ピーター・ワッツ「血族」藤川新京 訳
はるか遠未来、統合された集合知性と化した人類の記憶のアーカイブから1人の男が再構成される。男の名前はフィル。彼が目覚めさせられた理由とは、そして人類の辿った運命とは?
巨匠ワッツによる「ヒトであるということの意味」をテーマにした力作。

● リッチ・ラーソン「肉と塩と火花」平海尚尾 訳
近未来、知性化チンパンジーと人間のバディ刑事が挑む奇妙な殺人事件。チンパンジーのクーが抱える存在の耐えがたい孤独に差し込む一筋の希望。バカSFとあなどるな!

● ジョン・チュウ「確からし茶」 川端冷泉 訳
確率変数を通して世界に干渉する能力を持つ女性、ケイティ。彼女は同じ力を持つ父親から、その力を振るうことを固く禁じられていたが、友人からある事件への介入を頼まれてしまう。彼女の決断は、そして事件の顛末は…
超能力系親子ハートフルストーリー

● マリ・ネス「キスの式典」 空舟千帆 訳
女の子は誰でも一生に一度、列に並んで「彼」にキスをすることーーなじみ深いおとぎ話に題材を借りつつ、忘れがたい印象と問いを残す小品。

● S・チョウイー・ルウ「母の言葉」 藤川新京 訳
言語能力を脳から抽出する技術が一般化した近未来、娘のために母親の下した決断は大きな代償を伴うものだった。母娘三世代を通じて伝えられるもの、そして失われるものを描いた痛切な言語SF

● テンダイ・フチュ「ンジュズ」 内藤惇 訳
テラフォーミングが進んでも、古くからの風習が失われるには至っていない近未来。語り手は衛星ケレスに滞在中、水難事故で息子を失う。そこで彼女を待っていたのは、核融合プラントの貯水池に住むという水魔「ンジュズ」を鎮めるための儀式だった―鮮烈なアフリカSF。

●ソフィア・サマター「セルキー譚は負け犬のもの」 西村取想とシタギセール=カオル 訳
海ではアザラシ、陸では人間、それがセルキー。愛しい人を失ってしまうセルキー譚に少女が背を向けるための、ひとつの出会い。ジュブナイルの揺れる心がいま叫び出す。
ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞、英国SF協会賞ノミネートの傑作!

●ラショーン・M・ワナック「一羽は悲しみ、二羽でよろこび」 白川眞 訳
死んだ子どもの世話をするアンダーテイカー。抱えきれない悲しみを、カラスが子どもとともに連れ去ってゆく。
深く、果てしない悲しみと向き合うための物語。

● ケリー・ロブスン「二年兵」 藤川新京 訳
皆がさげすむ存在である「二年兵」のミケルは妻と二人暮らし。ある日彼は清掃員として働く研究所で奇妙な赤ん坊を拾う。ようやく一人前の父親になれたと喜ぶミケルだったが…歪んだ父性のかたちを描く戦慄のホラー。

● ベストン・バーネット「エンタングルメント」 川端冷泉 訳
遠く離れた銀河に存在する数多の文明が互いに交流している遠未来。惑星レンに生まれ、地球でヒトとして育てられた「僕」は、自らのアイデンティティを求めてヒトとの逢瀬を繰り返す。硬派なSF世界を舞台にした、幾重にも「もつれあった」物語。

● ジェームズ・ビーモン「オルガンは故郷の歌を奏で」 藤川新京 訳
少年オザンの乗り組む飛行船の武器はオルガンの音色に操られる不気味な猿の大群だった。クリミア戦争を舞台に少年の成長を描く、血生臭くもカラフルなスチームパンク。

【評論】
「疫病時代のバーチャルリアリティと性の想像力」

A5判196pages