月別アーカイブ: 2016年12月

アレクサンダー・ゾグラフ作 ハル吉訳「爆撃地セルビアからの手紙」

アレクサンダー・ゾグラフ「爆撃地セルビアからの手紙」

アレクサンダー・ゾグラフ作 ハル吉訳「爆撃地セルビアからの手紙」(峠の地蔵出版)¥1400+税

かつてバルカン半島にあったユーゴスラビアは90年代に入ると、スロベニア、マケドニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ…と、各地域が紛争を経て次々に独立。そこからあぶれたセルビア人がコソボに移住したことから、アルバニア住民の反発を招き、98年に、過激派のコソボ解放軍とユーゴスラビアおよびセルビア軍が対立し、コソボの自治回復を支援するNATOの介入を招き、セルビアは空爆にさらされた。

本作は、1999年のNATOによるセルビア空爆中に、漫画家ゾグラフが、友人の漫画家クリス・ウェア(『ジミー・コリガン』が有名)に、当事者としての週刊漫画を描いてはどうかと勧められ、爆撃のさなかに海外の雑誌やウェブサイトに掲載された1ページ完結漫画集。

爆撃の危険の中、限られた情報の中で、漫画家は事態を冷静に見詰める一方で、「僕はただ漫画を描きたいだけなんだ。悪夢から目覚めさせてくれ」と訴えたり、アイロニーたっぷりに爆弾の種類を描き分けたり、停電中に自分の内なる声に耳を傾けたり、はたまた友人のロバート・クラムが夢に出てきたり…。

爆撃への恐怖と不安はたまた、紛争に対する無力感だけでなく、創作や漫画への想い、日々の暮らし、などが、プロパガンダや圧力の下にもかかわらず驚くほど冷静かつリアルに描かれた、著者の代表作で、何カ国語にも翻訳されたもの。特徴的なタッチも、読みすすむにつれて、クセになってきます。

今回、本書の訳者で発行人のハル吉が、国際的に活躍するセルビアを代表する漫画家のひとりであるゾグラフにダメもと?で出版の企画を申し込んだところ快諾され、原書にはない、セルビア地図や脚注、インタビューも付して出版の運びとなった。
巻末インタビューでは、自作のみならず、セルビアの漫画シーンについても言及しています。

A5判120pages

爆撃地セルビアからの手紙

稀見理都「エロマンガノゲンバ」

稀見理都「エロマンガノゲンバ」

稀見理都「エロマンガノゲンバ」(三才ブックス)¥1750+税

エロ漫画家や出版社などへの取材を通し、エロ漫画業界を切り開く同名の人気同人誌の書籍化。
2014年の冬コミで絶賛された伝説の同人誌に、駕籠真太郎、早見純、有馬○太郎、甘詰留太のインタビュー4本を新たに加え、28人のマンガ家と1人のハガキ職人から各々が歩んだ“血と汗と涙と汁のエロマンガ道”をと取材。
早見純先生の謎のミステリアスな私生活も語られています。

【カバーイラスト】森山塔
【口絵イラスト】陽気婢
【特別収録】甘詰留太描き下ろしマンガ『いちきゅーきゅーぺけ外伝 甘詰留太1974年生まれの場合』
エロマンガノゲンバ史年表
エロマンガ雑誌カタログ

【インタビューイ】
森山塔(山本直樹)
海野やよい
ねぐら☆なお/河本ひろし
亜麻木硅
しのざき嶺/ちゃたろー
ダーティ・松本
千之ナイフ
風船クラブ
伊駒一平
うたたねひろゆき
田沼雄一郎
陽気婢/魔訶不思議/ぢたま某
魔北葵
猫島礼
がぁさん
江川広実
山咲梅太郎
田中ユタカ
島本晴海。
松山せいじ
駕籠真太郎 (★)
早見純(★)
有馬○太郎(★)
三峯徹
甘詰留太(★)

解説:永山薫

★は新規インタビュー

A5判340pages

ナギサプロ『夜のハレンチ野郎』

ナギサプロ「夜のハレンチ野郎」

ナギサプロ「夜のハレンチ野郎」(凡天劇画会)¥600+税

兎月書房『墓場鬼太郎』4巻以降(ニセ鬼太郎)の作者・竹内寛行が、若者たちの無秩序なセックスとバイオレンスを描いた連作短編集「夜のハレンチ野郎」。
竹内寛行がチーフを務めるナギサプロ=凡天太郎プロダクションによるもので、60年代に「漫画パック」に掲載された短編6本を収録。

時代とはいえ、人権お構いなしのエロとバイオレンスの横行がすごい、まさにハレンチな世界。
それは50年代末~60年代初期にかけて、貸本漫画の衰退と入れ替わるようにおこった劇画ムーブメントの中で、”青年漫画”へと結実するメインストリームとは別に、傍系劇画誌の無法地帯に棲息し、やがてエロ劇画へ開花する作品で、凡天劇画会では「番外地劇画」と称して復刻しています。

ゆきがかり上?アシスタントもしていた田中多美子(凡天太郎夫人)へのインタビューで、凡天太郎とアシスタントたちナギサプロの面々の様子が語られています。漫画も破天荒なら描く人たちも無茶苦茶だったようです。

A5判96pages
わかりにくですが表紙のタイトルは銀。

BOOK5 vol.22 最終号「年末恒例アンケート 今年の収穫」

book5 22号

BOOK5 vol.22 最終号「年末恒例アンケート 今年の収穫」(トマソン社)¥600+税

本や古書店、名画座まわりのニッチなテーマを掘り下げてきたBOOK5の最終刊。

2016年の終わりとあわせての、さようならですが、恒例のアンケートで、ゆかりの作家やアーティスト、編集人、書店員etc. 約90人がそれぞれ、今年出会った本とそれ以外の収穫をあげています。

特集 年末恒例アンケート 今年の収穫

いがらしみきお/植本一子/木村衣有子/岡崎武志/林哲夫/平山亜佐子/山本善行/小田島等/西崎憲/柳瀬徹/山川直人/世田谷ピンポンズ/小山力也/宇田智子/濵田研吾/島田潤一郎/月永理絵/イーピャオ/小山ゆうじろう/内堀弘/林さやか/前野久美子/扉野良人/かとうちあき/畠中理恵子/南陀楼綾繁/荻原魚雷/浅生ハルミン/北村知之/森山裕之/北條一浩 他

連載
コラム・新刊案内  朝倉史明/南雲重徳/佐藤翔/栗山新/荻原魚雷・鳩野恵介
せどりしようZ! Z
漢字のカナメ 虚勢博士
古本屋ツアー・イン・ドリーム 小山力也
詩はSFに乗って Pippo
どうせ本は見つからない 南陀楼綾繁
なんてひどい店なんだ 古書赤いドリル 那須太一

18×21cm 60pqges

B00K5は終刊ですが、編集人は2016年11月末から善福寺で古書店「松田書店」をオープン! 新たな形で活動続行中!!!
東京都杉並区善福寺2-24-20
吉祥寺から徒歩15分/ 関東バス*立野境 徒歩30秒
営業時間 12時ごろから日没まで
不定休 日・祝開店 (おでかけ前にトマソン社さんのサイトやtwitterなどでご確認ください)

池田ハル 絵本ジン「あーちゃんのおきにいり」

池田ハル あーちゃんのおきにいり

池田ハル 絵本ジン「あーちゃんのおきにいり」¥1018+税

「女の子」を描いたイラストレーション、漫画、版画を通して、展示、ジン制作から、広告、装画、ファッションブランドとのコラボレーションなどを手がける池田ハルが、子育の傍ら、幼い娘とともに楽しめる、おしゃれなモノづくりを提案するweb連載「ハルさんちのハンドメイド~大きな手小さな手」から生まれた作品を元に作ったジン。

26回までの連載の中から、娘が気に入った作品、自分が気に入った作品を選び、写真とイラストで絵本のように仕立てました。

DIY精神あふれる時計、顔や模様を描いたクッキー、お手玉、テースケース、ペーパークラフトケーキ、花瓶、カレンダー、ワンピース、ブローチ…母娘で共通して気に入ったものもあれば娘のお気に入り、母のお気に入りがあり、セレクションから子供の目線と親の目線が感じられて、微笑ましいです。

A5判26pages オールカラー
初版限定70部 サインとエディション、表紙にシルク手刷りの蝶々入り(オマケのステッカー付き)

池田ハル「あーちゃんのおきにいり」 池田ハル「あーちゃんのおきにいり」