For Everyman vol.01(For Everyman)¥1000
特集は日本映画ですが映画誌ではなく、広い意味での文芸総合誌を目指すFor Everymanが創刊されました。
インターネットにより、個々の趣味や嗜好がマニアック化する中で、活字メディアもそれに追随する昨今。個々の対象を深く掘り下げるだけでなく、現実を俯瞰して地図を書いたり、大きな方向を模索する事(は至難の技だけど)も忘れずに、個と社会のあいだで緩やかに繋がったり影響しあったり試行錯誤してゆく理想を雑誌で試みようという感じ。
編集人・河田拓也氏の言葉によれば「過去の雑誌で言えば、広義のサブカルチャーが、文学も日々の暮らしも政治もざっくばらんに含包していた、たとえば「話の特集」のような誌面を目指したいと思っています(当然、一つ一つの思想、見解は異なりますが)。」とのこと。
内容は—-
●特集1 「いま、木下恵介が復活する」山田太一×原恵一 4万字超ロング対談
「日本の社会はある時期から、木下作品を自然に受け止めることができにくい世界に入ってしまったのではないでしょうか。しかし、人間の弱さ、その弱さが持つ美しさ、運命や宿命への畏怖、社会の理不尽に対する怒り、そうしたものに対していつまでも日本人が無関心でいられるはずがありません。ある時、木下作品の一作一作がみるみる燦然と輝きはじめ、今まで目を向けてこなかったことを多くの人がいぶかしむような時代がきっとまた来るように思います」山田太一『弔辞』より
震災を経験し、バラバラな個人が貧困の影に怯えるいま、「近代個人の淋しさを人々に味あわせるに忍びない感受性を持ちつつ、自身はその孤独を敢えて引き受けて明晰な個人であろうとした」通俗を恐れない巨匠が、最良の後継者お二人の語りの中に蘇る。
●特集2 大映「悪名」「犬」シリーズ再見&藤本義一ロングインタビュー
「現実を安易に楽観せず、だからこそ否定面を大げさに嘆くほど呑気でもない」「苦しみ、哀しみを受け止めながら剥き出しにしすぎない、隣人への節度と労り」娯楽映画の安定感について。
今東光・勝新太郎・田宮二郎、そしてアルチザン魂を語る。(取材・構成 奈落一騎)他
●未公開シナリオ『六連発愚連隊』全掲載&追悼高田純
『仁義なき戦い』と『ガキ帝国』を、結ぶミッシングリンク。
「人や社会の汚れを認めず、否定すればするほど、極道は減ったかわりに、カタギ外道が増えてはいませんか?」
ピラニア軍団、松田優作、泉谷しげるらの熱き連帯。そして、笠原和夫の「100箇所の付箋」。
●『本と怠け者』&『For Everyman』ダブル刊行記念 荻原魚雷×河田拓也「高円寺文壇 再結成対談」
「誰もが明るく生きられるわけじゃないし、苦しく考えながら生きざるを得ない人生もある。地味な文学者たちに、そんな勇気と居直りを貰った」
下積み経験と、文学遍歴を語り合う。
【書評】
山田太一『空也上人がいた』 河田拓也
竹中労『聞書 庶民列伝 上』 佐藤賢二
古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』 渡辺真吾
『脚本家白坂依志夫の世界』 松本るきつら
高野真之『BLOOD ALONE』 たかやまひろふみ
【エッセイ】
追悼 出崎統 松本るきつら
「祭ばやしが聞こえない 〜関東甲信越小さな旅打ち〜」 天野剛志
『For Everyman』発刊の言葉に替えて
ジャクソン・ブラウン&デヴィッド・リンドレー『LOVE IS STRANGE』について 河田拓也
表紙イラスト TAIZAN
A5判236P