日別アーカイブ: 2007 年 12 月 24 日

音楽誌 Sweet Dreams 創刊

Sweet Dreams1 ¥980

 音楽誌「map」編集者でライターの福田教雄さんが新雑誌を作りました。
甘美なタイトルとコンパクトですてきな表紙デザインに、ちょっとオシャレ系…?と思ってスルーしてたら損をします!
 国内外で出版不況や雑誌が衰退する中で、敢えて氏が雑誌を創刊したのは、2007年に相次いで休刊した『Weekly World News』最終号のコラム「ウェブ・サーフィンみたいかもしれないけど、こっちが現実なんだってことを子どもたちに教えてほしい」というメッセージや、『Punk Planet』の表紙の「これは最後の号である。このあとは、きみたち自身で闘うのだ」という言葉に後押しされて、のようです。
 そんな、”ちょっといい話”はさておき、この雑誌のすばらしさは、消費のための音楽やアートを追いかけない徹底した表現を丁寧に紹介しているところ。
 たとえば、都市伝説的(というか八切止夫的にという方が日本の本好きにはわかりやすかもしれません)に、正体不明のまま70年代から現在にいたるまで精力的にレコードおよびCDを約50枚もリリースしてきたミュージシャン、ジャンデックを40Pにわたって特集。本当にいるかいないのかさえ怪しかった謎の人物像を解明しつつ、全リリース作品のレビューを掲載、伝説に包まれたその人と音の輪郭を明らかにしてゆきます。一部の好事家たちの伝説を解放し、現実に引き寄せるその作業は、ジャンデックというアーティストの再生に立ち会うようなワクワク感があります。
 あるいは、”傍役音楽家名鑑”コーナーでは、「水中ギター」サウンドの生みの親ヴィンセント・ベルを、チェコのアーティスト・エミール・ダヴィッツが生前東京で密かに撮っていた写真集などなど、見過ごしちゃいけない表現の数々を紹介しています。
 ほかには、BEST MUSIC、名古屋のバンTEASIや、テリー・ギリアムによって映画化された 『ローズ・イン・タイドランド』 の原作者、ミッチ・カリンの書き下ろし短編小説。さらに、タラ・ジェイン・オニール、ジュヌヴィーエイヴ・カストレイ(2007年秋に東京は目白のポポタムで展示をしたばかり)、トム・グリーンウッド (ジャッキー・O・マザーファッカー) らの特別寄稿など。
 表紙を飾るオリンピアの切り絵作家、ニキ・マクルーアとジャッキー・О・マザーファッカーのトム・グリーンウッドのフォトモンタージュを用いたポスト・カードの2葉が封入されています。
B6判128P
【もくじ】
表紙 画:ニキ・マックルーア
p4 Synthetic Sound of the Future
 未来の合成音 文・写真:ショーン・メドウズ(ラングフィッシュ)
p8 BEST MUSIC: Near Motif, Far Feeling?    
「スーパーマーケットのための音楽」をめぐる、きわめて公的な最新インタビュー
 インタビュー・文:御堂筋御豆 写真:森川祐介、池田晶紀
p13 BEST MUSIC、50のインスピレーション
 選・文:BEST MUSIC
p16 画:ジュヌヴィーエイヴ・カストレイ
p20 Jandek: Nowhere Man まるでそこにいないような……
 コメント協力:アラン・リクト、サム・クームズ(クアジ)、ピート・ノーラン(スペクター・フォーク、マジック・マーカーズ)、エミル・エイモス(ザ・グレイルズ)、トム・カーター(ハラランビデス)、リズ・ジェーンズ、ジョージ・パーソンズ(ドリーム・マガジン)
p38 Jandek on Corwood ドキュメンタリー制作者へのインタビュー
 インタビュー・文:ジョージ・パーソンズ(ドリーム・マガジン)
p43 Jandek: 49 Albums Marathon Review
 文:オリヴィエ・プチパ
p60 画:タラ・ジェイン・オニール
p65 At the Nageki no Kinenkan 嘆きの記念館にて
 文:ミッチ・カリン 画:ピーター・チャン
p75 画:トム・グリーンウッド(ジャッキー・オー・マザーファッカー)
p82 TEASI: Climbin’ Up the Mountain ひとりのようなみんな
 写真:緒方四葉 画:松井一平
p92 Comic TEASI
 作:小田島等
p98  傍役音楽家名鑑 その1:ヴィンセント・ベル
 文:水上徹
p107 Kathy zine 特集:スリム・ムーンと近代文学
 監修:チーム・キャシー(ミャーザキ、ダーティ、バニー)
p113 The Tokyo Photographs of Emil Davits エミール・ダヴィッツの東京写真
 文:セス・ハイ 写真:エミール・ダヴィッツ