どくろく 臨時増刊号「ひとり震災不安定日記」

どくろく臨時増刊

どくろく 臨時増刊号「ひとり震災不安定日記」¥200

特別な趣味もなく休日の予定もないない独身30代女性の日常の考察を綴るミニコミ「どくろく」(どくしんしゃによる どくしんしゃのための ろくでもないざっし の略)を発行しつつ、通勤途中の中央線から見える景色を綴るフリペ「車窓」を発行する武蔵野ヘルスセンターのあらみさん。そんなイベントの少ない?地味な日常が、ある日突然、打ち破られる。東日本大震災ならびに福島第一原発事故の発生である。

放射能の危険に怯えながら常にネット上の情報を収拾し、家族や職場の上司や同僚に、放射能から身を守るためのサバイバル法をメールで、あるいは口頭で伝え、警告を発する中、ついに、恐怖にたまりかね、数少ない親しい学生時代からの友人を頼り一路岡山へ避難。ただならぬ心理状態に、酒が加わり、10数年来の友情関係が一夜にして”わけあり”状態に一転、悶々とした気持ちを引きずりながら、東京に戻ると、悪化する原発の状況とあいまって筆者の気持ちは一気に負のフパイラルに。東京と岡山の温度差、あるいはこの非常時に日常を続行する親や、異常に前向きな職場の人々との温度差をひしひしと感じ、相変わらず周囲に警鐘を鳴らしながら、夜になるとネットをチェックしながら酒を飲まずにはいられず寝落ちする日々…。

震災の発生からの日記の形で、直後の日常をリアルかつ赤裸裸に綴る、これまでのどくろくとは一線を画す異色の震災日記。3.11以前には戻れない放射能下の日常の中、以前の関係に戻れない失恋者然とした気持ちに振り回され、それでも被災地支援に立ち上がるなど、現実と妄想の間をはげしく振れる、ネット用語でいう危険”厨”と化した30代女性が、それでも自らのイタい日々を見据え、自身が拠り所としてきたメディア・ミニコミにまとめた、切なくもリアルな震災下を生きた証し。ヒューマンドキュメンタリー、ミニコミ部門があったら推したい作品です。

A5判92P

※この本の売上は、福島県災害対策本部と日本赤十字に寄付されるそうです。