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川上未映子責任編集 増刊『早稲田文学』女性号

川上未映子責任編集 増刊『早稲田文学』女性号(筑摩書房)¥2200+税

最近は、親しみやすいフリーペーパー「WB」の形でお届けする機会が多い早稲田文学から、川上未映子責任編集の「女性号」が出ました。

女性の書き手ばかりを集めた「女性号」というテーマに、疑問や違和感を持ったら、それこそが編集者の「意図」なのかもしれません。

性の多様性が認められ、女性に限らず「人間」が取り上げられるべき時代である一方で、ネット上でで性をめぐるポリティカルコレクトネスが可視化され、人々が意見を発し、世界中の情報・動向を把握して相対化できる現在だからこそ、この特集で、現在において「女性が書く」or「女性を読む」ことの抑圧と解放、女性の創作について、形にして記録すべく取り組んだと、川上編集長は記します。

すでに故人となった人から現在まで、約80人の寄稿者による再録や新作を収録。

===コンテンツ===

川上未映子 巻頭言

《巻頭詩》
●エドナ・セント・ヴィンセント・ミレー 小澤英実=訳
●石垣りん

ルシア・ベルリン 岸本佐知子=訳・解説「掃除婦のための手引き書」
多和田葉子 松永美穂=訳「空っぽの瓶ボトル」
津村記久子「誕生日の一日」
佐藤文香「神戸市西区学園東町」
イーユン・リー 篠森ゆりこ=訳「かくまわれた女」
小山田浩子「蟹」

《図版》
●井上佐由紀

伊藤比呂美「夏のおわり。秋のはじめ。」
今橋愛「そして」
文月悠光「発動せよ」
中山奈々「O-157」
東直子「青葡萄」
左川ちか
松田青子「許さない日」
ロクサーヌ・ゲイ 野中モモ=訳「わが父の死去にあたり」
イ・ラン Ko Younghwa=訳「韓国大衆音楽賞 トロフィー直売女」
堀越英美「女の子が文学部に入るべきでない5つの理由」
山崎まどか「私はいかに心配するのをやめて、フェミニストと名乗るようになったか。」

石垣りん
中島みゆき
蜂飼耳「彼女の中の女」
井上法子「素直に届けられる夜」
永瀬清子
盛田志保子「季節に」
川口晴美「世界が魔女の森になるまで」
早坂類
茨木のり子
古谷田奈月「無限の玄」
雪舟えま「俺たちフェアリーている(短歌版)七十七首」
松井啓子「のどを猫でいっぱいにして」
ノラ・ゴムリンガー  松永美穂=訳・解説
ヴァージニア・ウルフ 片山亜紀=訳・解説「ロンドン散策――ある冒険」

エドナ・セント・ヴィンセント・ミレー 小澤英実=訳・解説
葛原妙子
中島悦子「被流の演技」
安立スハル
鈴木しづ子
鈴木晴香「生まれてきた日を覚えていない」
野口あや子「エレクトラ・ハレーション」
神田さよ「鎮める」
齋藤史
吉原幸子
池田澄子
最果タヒ「白い花」
銀色夏生「壁と満月」

CRY IN PUBLIC マニフェスト

ジーン・リース 堀江里美=訳「ジャズと呼ばせておけ」
村田沙耶香「満潮」
盛可以 河村昌子=訳・解説「経験を欠いた世界」
藤野可織「私はさみしかった」
今村夏子「せとのママの誕生日」
おさないひかり「柔らかい、つるつるの毛の生えた soft, sleek hair is growing」
川上未映子「変奏」
栗木京子
黒田夏子「るす絵の鳥」
樋口一葉 川上未映子=訳「大つごもり」

小平麻衣子「林芙美子・〈赤裸々〉の匙かげん――『放浪記』の書きかえをめぐって――」
江南亜美子「21世紀の女性作家たち
豊彩夏「変身――松浦理英子『親指Pの修行時代』、女の子たちのパロディ的カルチャーについて――」
岩川ありさ「クィアな自伝――映画「ムーンライト」と古谷田奈月『リリース』をつないで」
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ くぼたのぞみ=訳「イジェアウェレへ――あるいは十五の提案に込めたフェミニストのマニフェスト」
柴田英里「いつまで〝被害者〟でいるつもり?――性をめぐる欲望と表現の現在」

《図版》
●橋爪彩

haru.「どこかの誰かさんへ
菅野つかさ+中西歩乃歌(Scarlet&June)+野中モモ+川上未映子「インディペンデントメディアという「場」」
桐野夏生+川上未映子「女性と地獄」
小澤英実+倉本さおり+トミヤマユキコ+豊﨑由美 司会:斎藤美奈子「われわれの読書、そのふたつの可能性~批評と書評~」

◎ブックガイド フェミニズムと女性に近づくかもしれない23冊

《巻末詩》
●栗木京子
●葛原妙子

ブックデザインは名久井直子、表紙イラストは魚座

23.6 x 18.2 x 3.3 cm 556pages

Jeffrey Cheung「Jeffrey Cheung 2016 Zine」

Jeffrey Cheung「Jeffrey Cheung 2016 Zine」(Tiny Splendor)¥926+税

あざやかな色彩と、コミカルなフォルムで男性を描くJeffery Cheungのイラスト集。

ほのかなミント色の厚紙に、7色のインクを使ってリソで印刷されています。

サン・フランシスコとバークレーに拠点を持つTiny Splendorからの出版。

203mm×140mm 16pages(表紙含む)

宮崎希沙「CURRY NOTE 2017」

宮﨑希沙「curry note 2017」¥185+税

カレー好き、zine好きで、毎年、手帳仕様のカレーのジンを作っているうちに、デザインの仕事に就き、カレー店のデザインも手がけるようになった著者。
とんかつDJアゲ太郎のデザインから、カレー本への寄稿、オーストラリア人たちとの自費出版など…カレーにも様々なレシピがあるように、仕事が多岐にわたるのに比例して、情報網が広がりカレー店めぐりもこのノートもますます充実。

8年目の今年は、2016年4月~2017年3月までに足を運んだ20のカレー店を紹介。見開きの反対側ページは読んだ人がメモを記入できる定番フォーマットになっています。

店やカレーのランクづけや蘊蓄はなく、自らのカレー体験を読者と共有し、楽しむ、
カレー愛にあふれる冊子です。

所在地ほか、欧風、印度風、和風などの分類と「辛さのの唐辛子マークといった基本データ以外は、お店の雰囲気やメニュー構成を含めてのカレー体験や感想が中心。
一人でサクっと入りたい店、大勢で行ってシェアしたい店、ヘルシー、ヴォリューミー、家庭風、スパイシーetc.と読みながら、目的や体調、エリアにあわせて、行ってみたい店、食べたいカレーのファイリングが頭の中ですすみます。

番外編では、名古屋、京都。
Topicでは、参加した書籍「カレー語辞典」、ウミネコカレーのzine、参加イベントや雑誌RiCEへのカレーコラム執筆など一年の個人的なカレーニュースを紹介。

最後に2010年、2011年,2012年、2013年、2014年、2015年、2016年版で紹介したお店リストとこれから行きたいお店リストがついています。

A6判52pages

再入荷 珍奇世界社「オール見世物」

珍奇世界社「オール見世物」¥9800+税

珍奇世界社のカルロス山崎編集による、見世物小屋の雰囲気を満喫できる豪華ヴィジュアルブック。

実際の見世物小屋に掲げられ各地を旅した巨大な布製看板90枚をメインに、舞台に登場した蛇女、牛娘、女相撲などの芸人、双頭の動物の剥製など小屋の様子を伝える貴重な写真や書き起こした口上を収録。
大半のページは看板の形にあわせて観音びらきという豪勢なつくりで、98ページですが150ページ分くらいのボリュームがあります。

317×220mm上製、タイトル金箔押し 98pages

80年代台湾を描いた漫画+イラスト Gao Yan 高妍「1982」

Gao Yan 高妍「1982」¥1800+税

かつての台湾の何でもない日常や景色を描いた漫画小冊子とA4判ポスター集。

10葉のポスターには、今は台湾では絶滅してしまった台湾豹虎や高砂豹の別名を持つ雲豹や台湾犬などの動物たち、ローカルでレトロな風物とともに人々が描かれています。

作者のGao Yanは台北出身のデザインを専攻する学生。96年生まれの彼女が、古書店で働いているときに「これは6年前の私たちーーー」という書き込みとともに1982年+台湾人の名前が記入された、アメリカの写真家パトリシア・シモンズのPortraits of Taiwan in the year of dragonをみつけたことから、歴史の上では特別な年ではない82年を中継点に、写真家の視点や息づかいを感じとり、かつての台湾の何でもない日々が積み重なって作られた歴史、歴史に記録されない日々や自分の知らない台湾に思いを馳せ、情緒豊かにポスターを描きます。

また漫画冊子では「雨」と題して、台湾でたくさん目にするスクーターの情景の中に父と娘の姿を描きます。亡き祖母への父の想いを察しながら、その死を思い出させる事柄には触れずに、二人乗りの父の背中に顔をうずめる少女の姿から、他愛ない日常の中に人々の歴史があることを語りかけてくれます。

台湾には、親が亡くなったときに婚約中の子供は100日以内に結婚するか、1年先まで待つという
ならわしがあるそうで、これに従って自身の両親が祖母の死から間もなく結婚し、やがて作者自身が誕生した経緯に、生と死の連鎖を感じつつ、漫画の中でも歴史の一部をなす、何でもない日常を詩的に表現したのだそう。

漫画冊子 17.5×12.5cm 16pages
ポスター 27cm×19cm 10枚
英訳ペーパー 28×40cm
活版印刷厚紙ホルダー入り 29.7cm×19.2cm ポストカードカードつき