月別アーカイブ: 2017年4月

ムライ コミックエッセイ「京都ご近所物語」

ムライ「京都ご近所物語」(イースト・プレス)¥1000+税

漫画家ムライが、結婚を機に京都に移り住んだのを機に、台湾人夫の”ゴさん”とともに、季節の行事に会わせて名所を散策して描いたコミックエッセイ。

家賃は安いが、夏は暑く冬は寒い古い長屋に暮らす、他所からやってきた若いカップルが、お祭りや玄関先の植木を通してご近所づきあいをしたり、仕事の合間に四季折々の催事に出向き途中で屋台料理や地元のお菓子を味わうーーといった日常の観光&楽しみを描いた、ほっこり京都エッセイ。情報中心のガイドブックとは違った、”楽しみ方”が描かれています。

時代も国も特定できないフィクションの描き手ムライが、地元を舞台に、家族やご近所ぐるみの日常までを描いた、これまでとは趣を異にする作品です。

アイデアが浮かばずに煮詰まったとき、締切が終わって、”ゴさん”と町に繰り出し、名所の謂れを調べたり、感想を語り合います。微笑ましいやりとりに導かれて、京都散策を味わえます。作家の日常、青春モノ、家族モノとしても楽しい、住む京都コミックエッセイです。

A5判168pages

「地点」による演劇の観客の、観客のための雑誌ーー地下室 草号2

地下室 草号2 (地下室編集部) ¥650+税

京都を拠点に、戯曲に限らない多様なテキストを用いて、独自の演劇表現を追求する「地点」。
その観客主導で創刊された雑誌「地下室」。雑誌不況をものともせずに、地下劇場「アンダースロー」から観客による、観客のための雑誌が奮闘中!!

草号の名前の由来は、草案や草稿のように、草を編むことからはじめようというワケで。
この号がむかうのは、そこかしこに草たちの群れつどう夜。アスファルトのひび割れに発芽するコケたちの夜。高架下で商いをはじめる包丁研ぎたちの夜。そして、生きていようと死んでいようと、あなたがあなたを彼らのあいだに発見する夜。そんな夜のための読み物、雑誌です。

[文章]
●こけのむすまで/田中美穂
●ポートアイランドに東屋――接点の見える空間をつくる/家成俊勝
●死者が名前を持つには信仰を持ち出さなければならない
――なぜスタニスラフスキー・システムではダメなのか? 2/三浦 基
●忘れる日本人《二》/松原俊太郎

[写真]
石川竜一

家成俊勝(いえなり・としかつ)
建築家。京都造形芸術大学准教授。1974年兵庫県生まれ。2004 年、赤代武志とドットアーキテクツを設立。アート、オルタナティブメディア、建築、地域研究、NPOなどが集まるコーポ北加賀屋を拠点に活動。代表作は Umaki Camp(2013、小豆島)など。第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2016)にて審査員特別表彰を受賞(日本館出展作家)。

石川竜一(いしかわ・りゅういち)
写真家。1984年沖縄県生まれ。写真集に『絶景のポリフォニー』、『okinawan portraits 2010–2012』、『adrenamix』、『CAMP』、『okinawan portraits 2012–2016』がある。沖縄県立博物館・美術館「写真家が見つめた沖縄 1972–2017」展(2017年4月25日より5月21日まで開催)の展覧会ディレクターを務める。2017年3月25日より4月25日までアンダースローにて石川竜一写真展『草に沖に』が開催される。

田中美穂(たなか・みほ)
古本屋「蟲文庫」店主。1972 年岡山県倉敷市生まれ。岡山コケの会、日本蘚苔類学会会員。著書に『苔とあるく』『亀のひみつ』(ともにWAVE出版)、『ときめくコケ図鑑』(山と渓谷社)、『わたしの小さな古本屋』(ちくま文庫)、編著に『胞子文学名作選』(港の人)、ほか原民喜『幼年画』(瀬戸内人)、龍膽寺雄『シャボテン幻想』(ちくま学芸文庫)の解説を書いている。

松原俊太郎(まつばら・しゅんたろう)
作家。1988年5月生。熊本県熊本市出身。神戸大学経済学部卒。地点『ファッツァー』で演劇と出会う。2015年、処女戯曲『みちゆき』で第15回AAF戯曲賞(愛知県芸術劇場主催)大賞を受賞。2017年4月、戯曲『忘れる日本人』をKAATで地点が上演予定。2016–2018年度、演劇計画Ⅱ(京都芸術センター主催)に委嘱劇作家として参加。

三浦 基(みうら・もとい)
演出家。劇団「地点」代表。1973年生まれ。文化庁派遣芸術家在外研修員としてパリに滞在する。2001年帰国、地点の活動を本格化。2005年、京都へ拠点を移す。主な作品にチェーホフ作『桜の園』『三人姉妹』、イェリネク作『光のない。』『スポーツ劇』など。2013年、京都にアトリエ「アンダースロー」を開場。著書に『おもしろければOKか? 現代演劇考』。2017年、第24回読売演劇大賞選考委員特別賞受賞。

B5判 44pages

ムービーマヨネーズ/MOVIE MAYONNAIS 創刊号「青春映画特集」は未公開青春&学園映画の学参書?!

ムービーマヨネーズ/MOVIE MAYONNAISE「青春映画特集」¥833+税

日本で未公開・未発売の映画DVDを紹介するサイト、Gucchi’s Free Schoolによる未公開青春&学園映画を特集した2016年秋の上映イベントのパンフレット。
タイトルのマヨネーズは『カイエ・デュ・シネマ』の創刊者である、映画評論家のアンドレ・バサンが映画制作を(成分がバランスよく混ぜ合わさってはじめてうまくできる)マヨネーズにたとえたという(トリュフォーの記述)に由来する。

青春&学園ものにちなんで、参考書やガイドブックのような意匠で、上映全作品の紹介、200本以上の現代ティーン映画の名作巡りのフィルム『ビヨンド・クルーレス』引用リスト「チェックドリル」&作品レビューなどを掲載。
映画の原作、字幕、音楽、そして青春と学園についてとことん、それぞれのジャンルのスペシャリストたちがとことん語ります。

コンテンツはーーー
・作品評
黒岩幹子(boidマガジン/編集者/ライター)、篠儀直子(翻訳者)、柴田元幸(翻訳者)、三宅唱(映画監督)、門間雄介(編集者/ライター)、山崎まどか(コラムニスト)

・特別講義=『ウェット・ホット・アメリカンサマー』トークショー採録 松岡葉子(字幕翻訳者)

・『ビヨンド・クルーレス』チェックリスト&(ほぼ)全作レビュー
鈴木わたる/高柳翼/関澤朗/則定彩香/mika/Shimayoshi Yuka

・翻訳者こぼれ話
伊藤めぐみ(『タナーホール』)/井上牧子(『スラッカー』)/上條葉月(『シスターフッド・オブ・ナイト 夜の姉妹団』、『ティーンエイジ』)/森彩子(『ビヨンド・クルーレス』and more)/NAO(『ハイスクール マリファナ大作戦』)

・その他コラム、イラスト等
工藤鑑/高橋美希/新堀太一/本庄真理子/むぎほ/Kenji Komine(LSTNGT)/indo/Yuko Kagawa/Yumi Aita/YUSEI SAGAWA(アートディレクター)

B5判108pages

大人ごはん vol.2 「みんなの食卓探訪記」

大人ごはん vol.2「みんなの食卓探訪記」¥650+税

食を通して日常を描く新雑誌「大人ごはん」第2号。

創刊号では女優の門脇麦、作家の角田光代など、作家やアーティスト、食にかかわる人たちに、ふだんの食事について取材し、個人誌と思えぬ編集スキルを見せた「大人ごはん」。
2号目では、各地で取材を行い、大人がこどものために作るごく普通の保育園のごはん、認知症のお年寄りを預かりディサービスの託老所よりあいのごはんなど、市井の食の現場の声にじっくり耳を傾け、様々な人の様々な食についての考え方にふれ、ゆたかな食事を考えさせられる内容になっています。

ほかにも、黒磯でのフードスタイリストの高橋みどりとアンティークショップ店主吉田昌太郎夫妻の熟年夫婦の食、島ぐらしのひとり飯の贅沢と都会の外食の間で考えた事を綴った内澤旬子の巻頭エッセイ、座談会「作家と料理」では、高山なおみさんとともに、武田百合子の『富士日記』『犬が星見た』の料理を再現なども。
グラビアは、大河ドラマ『真田丸』でたか役を演じ、活躍の幅を広げる、岸井ゆき。

◉誰と食べるか?それが問題だ
「飯は飯でしかない」内澤旬子
◉手抜きごはんの嗜み
「サッポロ一番を使った実験」時岡孝行
◉特集・みんなの食卓探訪記
高橋みどり&吉田昌太郎
デジタル・アド・サービス
立野みどり保育園
宅老所よりあい
◉ごはんとわたし
岸井ゆきの
◉日々のなりわい
「ただ本が好きなだけ。それなのに…」
橙書店・田尻久子
◉何食べて生きてる?
柏田道夫
◉へべとレケの喰い飲み放談
「いろいろだよなあ、酒飲みってのは!」
大竹聡&牧野伊三夫
◉作家と料理座談会
「武田百合子さんの料理をつくる」
高山なおみ&狩野俊&マスダユキ
◉本当に愛着あるモノと暮らし
「石巻人がつくるこけし」
◉ある食卓の風景
「動物たちとの騒がしい朝食」
室谷明津子

A5判52pages (うちカラー8pages)

山尾悠子「角砂糖の日」新装判(書き下し掌編小説『小鳥たち』収録

山尾悠子「角砂糖の日」新装版(Librarie6)¥3200+税

1982年に深夜叢書社より刊行され、長らく品切れとなっていた山尾悠子の唯一の歌集『角砂糖の日』がLIBRAIRIE6から新装復刊。新装版特典として書き下し掌編小説『小鳥たち』を収録。

挿画は、合田佐和子、まりの・るうにい、山下陽子。函と表紙に銀箔押しをした、美しい製本です。

「小鳥のやうに愕き易く、すぐに同様する性質の〈水の城館〉の侍女たち、すなはち華奢な編み上げ靴の少女たちは行儀よく列をなして行動し、庭園名物の驚愕噴水にうかうか踏み込みたび激しく衝突しあふのだった。」(『小鳥たち』冒頭)

角砂糖の日より三首ーーーーー

春眠の少年跨ぎこすと月昏らむ いづこの森やいま花ざかり

昏れゆく市街に鷹を放てば紅玉の夜の果てまで水脈たちのぼれ

角砂糖角ほろほろに悲しき日窓硝子唾もて濡らせしはいつ

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A5判変型上製 104pages 函入り

●山尾悠子
1955年岡山県生まれ。幼少期にナルニア国物語、学生時代に澁澤龍彦の著作を介して様々な異端文学に影響を受け、在学中に「仮面舞踏会」を『S-Fマガジン』のSF三大コンテスト小説部門に応募、75年同誌に掲載されデビュー。
日本SF作家クラブのメンバーとして小松左京、星新一、筒井康隆、手塚治虫、永井豪らに刺激を受け創作を続ける一方で、その幻想的な作風と熱狂的な愛好者がいながら作品が単行本されないまま、80年代半ばから休筆状態であったことから、孤高の作家、伝説的作家と見なされるようになる。
99年に「幻想文学」誌に「アンヌンツィアツィオーネ」を発表して復活。2000年には単行本未収録作も含むそれまでの作品を集めた『山尾悠子作品集成』が国書刊行会より発行され、2003年9月には2作目の書き下ろし長編『ラピスラズリ』を発表。「角砂糖の日」は、82年発行の山尾唯一の歌集。