月別アーカイブ: 2008年4月

Chip Eckton & Outsidervoice「黒いTシャツと青い人生相談」

Chip Eckton & Outsidervoice「黒いTシャツと青い人生相談」  ¥1800

 ブログの日記を単行本化することはままあるが、これ人生相談の単行本化。
といっても、答えているアメリカ人のチップさんは、霊視ができるわけでもなければ、有名人でもなし!
 そもそもは、このブログを運営する日本人とニューヨークの職場で知り合い、その後、離れ離れになって別々の道を歩みながらも交流を続けた彼らは、一方が日本でTシャツのブログを立ち上げる際、かねてから一緒に何かしたいと思っていたことからチップさんに声を掛け、「さて、どういう形で参加しよう??」と考えたとき、最近どんなライブが面白いかなんていう週末の過ごし方から人生のことまで、博識で理性的なチップさんのアドバイスに助けられてきた彼は「人生相談は—?」と提案し、チップさんはこれを受けいれ、異国の若人の相談の回答者となった次第。
 質問は、自分に何の価値があるのか、自分は愛されるのか、といったお悩みから、アルツハイマーの親との関係やセクハラ問題、はてはアメリカで日本人のロックがどれほどのもんなの? という疑問まで。
 そんないろいろな質問に対する回答に時間をかけじっくり考えるチップさん。慰めや気休めやヘタな励ましはなし、でも悲観せず諦めもせずに、真摯に問題を分析し、質問者に敬意を持って具体的な解決法を提示する。わからないことにはわからないと答えるけど、だからといって回答を放棄するのでなく、自分の考えうる限り考え応える。
 個人の悩みにたいして、そこまで冷静に向き合う彼の態度そのものが、人との接し方や在り方を示し、質問者を勇気づけます。
 ジョン・レノン亡き後、誰を指標にしていいのか?なんていう質問に「君が私に聞きたかったのは、真似すべき他の有名人の名なら、ちょっと答えに窮する。ジョン・レノンに代わる誰かを思いつくのは、なかなかたいへんなんのだ。みんなはボノって言うけどな…(ため息)」なんていう自分でも悩んでいるような、嘆きとも呆れともつかない、でも思わず相槌を打ちたくなる一節もあったりで、まじめゆえのおかしさも。
 こんな質問や答えにコラボしながら創られたTシャツの絵柄やメッセージが相談の合間合間に出てきて、不思議なTシャツと人生相談の二人三脚ぶりもユニークかも。日英の二カ国語で書かれています。
B6判294P

「HENRY DARGER'S ROOM」あのヘンリー・ダーガーの創作の痕跡だらけの部屋写真

「HENRY DARGER’S ROOM」 ¥3000

 生前は清掃関係の仕事で辛うじて生活し社会との接点を持つ、半ひきこもり状態で1973年に没した稀代のアウトサイダー・アーチスト、ヘンリー・ダーガーが、人生後半の40年を過ごした部屋の内部写真を集めたもの。
 インテリア雑誌のお部屋とは対照的に小さな部屋に生活用品から趣味のものまでをぎゅうぎゅうに詰め込んだ自分宇宙に暮らす東京の若者たちの部屋写真を集めた「TOKYO STYLE」の都築響一氏が小出由紀子氏とともにIMPERIAL PRESSの名の下で編集・発行した自費出版物。
 シカゴ市内にあるタウンハウス、3階奥の一室がダーガーの部屋であった。生前この部屋に彼を訪ねる人はなく、近所の教会の牧師がたまに訪ねてくるか、大家夫人が電球を替えるために入室するぐらいだったという。身寄りのないダーガーが部屋を去り、大家でデザイナーとして活躍していたネイサン・ラーナーが片付けを始めたところ、そこにとんでもないものを発見した。『非現実の王国で』という題の付いた小説15巻と、その挿絵数百枚だった。人は、日常と非日常を往来してアートを生み出す。だが、ダーガーの場合、現実と空想は分かちがたく結びついていた。無慈悲で空虚な現実より、豊かで甘美な空想世界がリアルさを増してゆき、ダーガーはこの部屋に居ながら、『非現実』を生きていた。特異なアートを生み出した特異な人生。どちらもこの部屋で起こった。
 ダーガーは雑誌の少女たちの写真やイラストを写真に撮り、それを拡大したり縮小し、トレース、コラージュして自作を構成していたのだが、その資料となった雑誌の束や、壁に飾られたいくつもの少女たちの切り抜き、分厚いパイのように重なった印刷物や紙の束などなど、没後間もなくしての70年代の写真と、部屋が撤去される直前の90年代に撮影された写真郡によってそのディテールが見てとれ、独特の作品の舞台裏が公開されたようで興味深いです。
 ちょうど3月29日より渋谷シネマライズにて、ヘンリー・ダーガーの「非現実の王国で」を元にしたアニメ『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』の公開がはじまったばかり。あの、ヴィヴィアン・ガールズの女の子たちが動いているんですよ! あわせてヘンリーの内なる世界〜お部屋〜も覗いてみてください。

山田勇男「戯れ」

山田勇男漫画集「戯れ』 ¥2625

 
 『アンモナイトのささやきを聞いた』や、つげ義春原作の『蒸発旅日記』などの映像作品の監督であり、美術家の山田勇男が『夜行』や『幻燈』に発表した、「日向の匂ひ」「浮世」「戯れ」「うつぶせ」「いたずら」「みち草」「みどり龜」「冬の猫の鳴き聲」の8篇に、書下し「ダンディズ夢の涙」を加えた「瑠璃シリーズ」作品集。
 巻末に、原マスミ(ミュージシャン・画家)との対談「ポール・デルボーの死に寄せて」「シュールレアリズムの墓場から」と天野天街(劇団「少年王者舘」主宰)との対談「日本映画の夜明け」「曖昧さのリアリティとは」を収録。松枝到(和光大学教授)の評論「夢のトポス」が栞としてついています。装丁:天野天街
A5判上製 240P 限定380部

またしても熱く邦画を応援するジンが…「DVU」

DVU 01  ¥1000

 2007年に劇場上映された、自主映画の監督や製作関係の人のインタビューや対談を中心としたジンです。
『ラザロ』や『ヒミコさん』のパンフやいまおかしんじのシナリオなどを発行している松島政一氏の松島出版こと「現代映像研究会」の出版リストがカラーの書影入りで掲載されていいたりします。(映画秘宝にて柳下毅一郎氏がもっぱら勝手パンフを作る松島出版を紹介しつつ、その目録を作ってほしい、と言っていたのに応えるかのように、ビブリオグラフィーでその業績を紹介しています)
コンテンツは—-
序文に代えて
「おもしろさ」は価値観を超える 高橋洋インタビュー
自由にやっているつもりが一番恐ろしい 諏訪敦彦インタビュー
「現代映像研究」とは瞬発力の連続だ 井上紀州×松島政一
現代映像研究会出版目録
いま「自主映画」が補うものとは 井上紀州×松江哲明
日記(編集人による日記)
A4版116P

Le Muscle Carabine 最新号入荷しました

Le Muscle Carabine 02Amyotrophie Spinale Cahier – Etat second  ¥2520

 イラストのほか影絵手法の絵や舞台美術を手がけたり、自費出版にも取り組むアーティスト、ステファン・ブランケのUnited Dead Artistsが編集発行する雑誌 Le Muscle Carabine の最新号が入荷しました。
 作品のディテールまで味わえる大判の見開き2ページに1アーティストといった割合で、いろいろな世代の東西のアーティストが登場しています。
 今回はElles sont de Sortie誌で活躍したパルカル・デューリーやリシャール・ブルーノから、フランスのフェティッシュアートを代表するジル・ベルケ、ミルカ・ルゴシ、アメリカのデヴィッド・サンドリンらとともに、日本から市場大介、春川ナミオ、友沢ミミヨが参加しています。
 参加アーティストは掲載順に—-
  Daisuke Ichiba, Pascal Doury, Namio Harukawa, Robert Crumb, Blanquet, Remi, Aurelie William Levaux, David Sandlin, J.Rosen, Chris Hipkiss, Gilles Berquet, Mirka Lugosi, Francesco Defourny, Mimiyo Tomozawa, Placid, Bruno Richard, Lolmede, Xavier Robel+& Helge Reumann, Frederic Fleury, Blex Bolex
300×400 40P(カラー/モノクロ)
 付録でMarie-Laure Dagoit「La Jolie Colonie de Vacances」(表紙写真はジル・ベルケ)がついています。120×180 20P