Chip Eckton & Outsidervoice「黒いTシャツと青い人生相談」 ¥1800
ブログの日記を単行本化することはままあるが、これ人生相談の単行本化。
といっても、答えているアメリカ人のチップさんは、霊視ができるわけでもなければ、有名人でもなし!
そもそもは、このブログを運営する日本人とニューヨークの職場で知り合い、その後、離れ離れになって別々の道を歩みながらも交流を続けた彼らは、一方が日本でTシャツのブログを立ち上げる際、かねてから一緒に何かしたいと思っていたことからチップさんに声を掛け、「さて、どういう形で参加しよう??」と考えたとき、最近どんなライブが面白いかなんていう週末の過ごし方から人生のことまで、博識で理性的なチップさんのアドバイスに助けられてきた彼は「人生相談は—?」と提案し、チップさんはこれを受けいれ、異国の若人の相談の回答者となった次第。
質問は、自分に何の価値があるのか、自分は愛されるのか、といったお悩みから、アルツハイマーの親との関係やセクハラ問題、はてはアメリカで日本人のロックがどれほどのもんなの? という疑問まで。
そんないろいろな質問に対する回答に時間をかけじっくり考えるチップさん。慰めや気休めやヘタな励ましはなし、でも悲観せず諦めもせずに、真摯に問題を分析し、質問者に敬意を持って具体的な解決法を提示する。わからないことにはわからないと答えるけど、だからといって回答を放棄するのでなく、自分の考えうる限り考え応える。
個人の悩みにたいして、そこまで冷静に向き合う彼の態度そのものが、人との接し方や在り方を示し、質問者を勇気づけます。
ジョン・レノン亡き後、誰を指標にしていいのか?なんていう質問に「君が私に聞きたかったのは、真似すべき他の有名人の名なら、ちょっと答えに窮する。ジョン・レノンに代わる誰かを思いつくのは、なかなかたいへんなんのだ。みんなはボノって言うけどな…(ため息)」なんていう自分でも悩んでいるような、嘆きとも呆れともつかない、でも思わず相槌を打ちたくなる一節もあったりで、まじめゆえのおかしさも。
こんな質問や答えにコラボしながら創られたTシャツの絵柄やメッセージが相談の合間合間に出てきて、不思議なTシャツと人生相談の二人三脚ぶりもユニークかも。日英の二カ国語で書かれています。
B6判294P