田亀源五郎「田舎医者/ポチ」

田舎医者 ポチ

田亀源五郎「田舎医者/ポチ」(ポット出版)¥2520

ゲイ・コミックの巨匠にして、世界的なゲイ・エロティック・アーティストでもある田亀源五郎さんの短篇集が出ました。

表題作「田舎医者」(初出時より6頁加筆)をはじめ、描き下ろし作品「見知らぬ土地で奴隷にされて…」(24頁)収録。
輪姦(和姦)もの、ハードSMもの、ショタ系……などなど、さまざまなバラエティに富んだ計8篇。
著者自身による作品解説付。

のどかな無医村にやってきた青年医師が、古くから伝わる風習で祭りの中であれよあれよという間に村中の男に犯されてしまう狂喜?を描いた「田舎医者」をはじめ、冷酷無比な公開処刑とその舞台裏を実況する「スタンディング・オベーション」、掌サイズになってしまった男が少年に弄ばれる「傀儡廻」、家庭教師と生徒の因縁の関係が再燃する「ポチ」、妹を食い物にした男に兄貴がとんでもない復讐をする「ジゴロ」と妹の元カレを仕込んでしまう「LOVELY BOY」、描きおろし「見知らぬ土地で奴隷にされて…」、一流企業が重役室で行う特殊任務を描いた「43階の情事」と、コメディっぽいものから、ハードSMまで様々な内容になっています。

【収録作品】
田舎医者
スタンディング・オベーション
傀儡廻(くぐつまわし)
ポチ
ジゴロ
Lover Boy
見知らぬ土地で奴隷にされて…
43階の情事

A5判 272P ケース入り

ケースをとった表紙と裏表紙はこんな感じ。背景はポール・ジャクレーの版画みたいに、明るい鮮やかな色の景色が広がります!

田舎医者 ポチ

作家自身による作品解説には、それぞれの作品の描かれた経緯と一緒に、自身に課した克服テーマも語られています。作品ごとにクリアしたいテーマを掲げることで、田亀作品は着実に進化していて、一貫してゲイたちのエロティックな物語を描きながら、読者を飽きさせないのだな〜と思いました。

たとえば、99年に描いた『43階の情事』では「ヒゲや体毛がトレードマークであった自作から、それをさっぱり取り去ってみる」を試みた結果を、「ヒゲがなく年齢も若めの「いい男」を「自分のキャラ」として描くのに、さすがにまだ慣れていないような感じ」と振り返り、しばらくこのキャラを封印してしまったようです。

それから約10年後に描いた『ポチ』では「いかにも現実にいそうな若めのサラリーマンを、「自分のキャラとして「上手く/カッコよく/セクシーに描け」る自信がようやくついてきたと判断して封印をといたそうです。何がどう違うかは言葉では言い尽くせませんが、ゲイでなくとも女性目線から『ポチ』を読んだときすんなりと主人公に好感を抱けたワケが納得できました。微妙なさじ加減の問題かもしれませんが、今回の短編集もまた、作品ごとに違う味付けや調理法をお楽しみいただけると思いますヨ。

田舎医者/ポチより

『田舎医者/ポチ』より(左)P211 「43階の情事」扉絵、(右)P99「ポチ」。ヒゲなし男の好感度の違い、おわかりいただけますか?