タコシェと関わり深いアーティストたちがひとつの展示をめぐって活動の危機にあります。
90年代から、タコシェにシルクスクリーンの刺激的なグラフィックブックを届けくれる、フランスはマルセイユの出版芸術集団Le Dernier Criの主宰者パキート・ボリノ。昨年の南フランスでのHeta-Uma/Mangaro展では共同キューレーションをつとめ、50人近い日本の作家と作品を現地で紹介してくれました。
もう一人は、2012年にタコシェで個展を開いてくれた、在独アメリカ人アーティストStu Meadです。
7月から8月27日まで、La fricheというマルセイユの複合芸術施設内のLe Dernier Criのアトリエで、Stu MeadとReinhard Scheibnerの在独アーティストの二人展が開催されました。これはいつも行っているアトリエ展示で、Le Dernier Cri(LDC)はすでに何冊かのStuの本を出し、ここで作品展示もしており、アトリエは何ごともなく500人ほどの来客を迎えていたようですが、一方で、作品がエログロであるとの理由から(特に幼児性愛が問題され)、18禁などの対応はとったものの、電話やメールでパキートやLDC、会場となるla friche、マルセイユ市の文化芸術関係の部署に、不特定の脅迫が執拗に繰り返され、ネット上にパキート(および関係者)の個人情報まで晒されました。
(2012年のStu Meadの展示の際に、Le Dernier Criが作ったカタログ)
8月末には、地方選を控える極右政党国民戦線(FN)のネガティブキャンペーンの材料になり、PACA(プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏)の助成を受けたla fricheが幼児性愛ポルノを公開しているといった非難がSNS上で展開され、アトリエ閉鎖を求める抗議も起こり、極右に近いキリスト教集団まで加勢。
8月28日のla friche内の新施設Art-O-Ramaの開館式を考慮して、展示は27日に繰り上げ終了しましたが、開館式に際してウルトラカトリックが(すでに終った)展示の打ち切りを叫ぶ事態に。作家たちのフランスでの活動禁止を求める署名も進行中で、これに対して表現の自由に基づくパキート・ボリノとLDCならびにStu MeadとReinhard Scheibnerを支持する署名もはじまりました。
La fricheは争いを避けながらも、表現の自由を守りLDCを支持するスタンス、脅迫と炎上の渦中のパキートは、「年頭にシャルリ・エブドが攻撃され、自分までもが20年間やってきたことを今さら非難され、中世に戻ったみたい」と困惑しながら、なおアトリエで印刷を続けています。
ーー以下、署名のためのサイトと参考記事のアドレスです
Un Dernier Cri contre la censure
表現の自由に基づき、パキートおよびLDC、Stu MeadとReinhard Scheibnerを支持する署名はこちらです。仏文に続いて全文の英訳があります。(le dernier criにかけて検閲への叫びのタイトル)ご賛同いただけましたら、署名をお願いします。
【参考記事】
9月4日のル・モンド
この概要の英語版
9月3日のLa Provence.com
9月1日のles inRocks