月別アーカイブ: 2020年10月

緊急事態宣言下の夜の街を記録した写真集 小田駿一「Night Order」

小田駿一「Night Order」¥8000+tax

いつもは、商業カメラマンとして肖像の撮影を中心に活動している小田駿一の初写真集。

コロナウィルス蔓延による緊急事態宣言下、著者が都内に出てみると、昼間は都市機能や生活を維持するために、それでも人々が働いているのに対して、夜の飲屋街には人っ子一人おらず、その景色を目の当たりにして衝撃を受けます。

多くの人たちが、罰則があるわけでもないのに、生活の糧を犠牲にしてでも、未知のウィルスから命を守り、困難を乗り越えようとしている切実さを記録しようと、カメラマンとして立ち上がります。

ふだんなら人々で賑わう週末の夜の街に出向き、誰もいない路地や街灯だけがともる通りを撮影します。ただ閑散としたのとは違う、緊急事態宣言下のゴーストタウン的な凄みと、未来への希望を託しての街の灯りとで構成されています。

記録的・報道的な写真でもあること、未知のウィルスに人々が立ち向かった緊急事態での希望と警鐘の入り混じる現実を長く残すために、本という形を選び、大事に手元において眺めてもらえるよう、プロダクトとしても完成度の高いものを目指したのだそう。
表紙の銀箔および背のスケルトン加工に施した銀箔は手作業で剥がしたり削っており、基本デザインは同じですが、一冊ずつ加工が異なります。

A4判128pages 500部

著者・小田駿一氏自身が、この本への想いをnoteにまとめていますので、ご参照ください。>>>

背は透明樹脂が厚盛りされた上に銀箔を施し、一部表面を削って樹皮のように加工しています。

甲野酉 漫画作品全集2 2010-2020「未踏」

甲野酉 漫画作品全集2 2010-2020「未踏」(セミ書房)¥1636+tax

甲野酉が2010年から、10年かけて描いた超能力漫画。

大学内の超能力サークル「未踏」は、スプーン曲げのような”わかりやすい”超能力を見せたりするのでなく超能力があることをしめすべく精力的に活動を行いテレビの取材を受けたり、学内で会見を行ったりする。
リーダーの神迫令のもと、普及活動をしたり、超能力を体験するために自身の感覚のより深い部分を掘り下げてゆくのが、真剣であるほど侵しがたり怪しさや不可解がにじみ出てくる。
超能力か、はたまたカルトか、不可思議な”未踏”域を漂う感覚が描かれています。
通常、共通の目的や利益をかかげることでまとまる集団から、わかりやすい目的や利益を取り除いた場合の人間像を描いているのかもしれません。

巻末に、評論や文芸創作の際の別名義・内島すみれとして書いた「未踏」のノベライズ版「アイドル係数」も収録。

A5判228pages

山川直人「初期の山川直人漫画集 屋根裏」

山川直人「初期の山川直人漫画集 屋根裏」¥1000+tax

中学生の頃から漫画を描きはじめ、20代半ばで漫画誌デビューするも、40才を過ぎて「コーヒーもう一杯」の連載が始まるまでは漫画誌に載ったり載らなかったりで、カットやイラストの仕事をしながら同人誌で作品を発表していたと振り返る山川さん。

自主制作で出した5冊の作品集に収録した作品は、後に出版社から出た単行本に再録されましたが、そこに収録されなかった作品や未発表の作品を自ら編んだのが2018年に自費出版した「初期の山川直人漫画集 地下室」。それに続くのがこの「屋根裏」で、この初期作品集2種と『口笛小曲集』(2005)『地球の生活』(2008)『ナルミさん愛してる その他の短篇』(2007)ー3作ともKADOKAWAーをみれば、2000年までに発表した山川作品がほぼ網羅されるそうです。

《収録内容》
●『インタルード』
同人誌「KIZ」第八号(99)掲載 自主制作本『インタルード』(02)収録
●『ギッタンバッコン』✻
同人誌「カミナリパンチ」第二号(96)掲載
●『珈琲殺人事件』
同人誌「よいこの喫茶店」(96)掲載 自主制作本『この星の空の下』(99)収録
●『言葉の見える街』✻
「まんがライフバラエティ」93年10月号掲載
●『人生に相渡るとは何の謂ぞ』
同人誌「KIZ」増刊第二号(95)掲載 自主制作本『ぼくはきみより頭がいい』(97)収録
●『昼の月』
山川直人ホームページ(00)掲載 自主制作本『インタルード』(02)収録
●『HONE』
山川直人ホームページ(00)掲載 自主制作本『インタルード』(02)収録
●『地球儀』
山川直人ホームページ(00年)掲載 自主制作本『インタルード』(02)収録
●『オレくん』✻
「おおきなポケット」00年9月号掲載
●『好青年』
手製コピー本「父への手紙」(94)掲載 自主制作本『父への手紙』(96)収録
●『GROW OLD WITH ME』
同人誌「がらん」創刊号(89)掲載 自主制作本『父への手紙』(96)収録
●『恋する街角』
「まんが4コマ丼」98年8月号掲載 自主制作本『この星の空の下』(99)収録

✻は単行本、自主制作本、初収録。

B6判128pages 初回入荷分はサイン入

カルチャー & タトゥーマガジン「SUMI(スミ)vol.3」

カルチャー & タトゥーマガジン「SUMI(スミ)vol.3」¥600+tax

タトゥーを通して、人物、食、銭湯、ショップ、本などカルチャー全般を紹介する雑誌。

これまでよりも10ページ強増ページし、今号は音楽関係のアーティストのインタビューが充実しています。

タトゥーのある人はもちろん、銭湯やショップはオーナーやスタッフのタトゥー有無に関わらず、タトゥーに寛容なスペースがが取材されています。

内容はーーー
RAHに感謝 JNKMN×らーめん陸
読むDRUG ILNESS 「ラスベガス・71」
[インタビュー]Jin Dogg ラッパー
[インタビュー]ELLE TERESA ラッパー
[インタビュー]WILYWNKA ラッパー
[インタビュー]PIZZALOVE ラッパー
[インタビュー]CRUELLASEX ジュエリーショップ
銭湯の片スミ 齋藤湯(銭湯・日暮里)
[インタビュー]戦慄かなの アイドル、プロデューサー

A5判46pages

「鴻池朋子 絵のうら側に言葉の糸をとおす」聞き手 大竹昭子+堀江敏幸

「鴻池朋子 絵のうら側に言葉の糸をとおす」聞き手 大竹昭子+堀江敏幸(カタリココ文庫)¥900+tax

2017年、鴻池朋子を招き、聞き手、大竹昭子+堀江敏幸で行った対談の再録。

東日本大震災後の2011年3月、大竹昭子の呼びかけにより「ことばのポトラック」がおこなわれました。本書はいまも継続しているこのトークイベントに、美術家・鴻池朋子が登壇した回の内容を再構成した鼎談集です。
聞き手は大竹昭子と堀江敏幸がつとめ、三人それぞれが多くの言葉を足しました。

鴻池朋子は大震災のとき、個展のを開催中で、揺れが収まってから会場にいくと、自分の作品に少しも情熱がもてなくなっているのに気が付きました。そこでいったん制作を停止し、描くとは? 創るとは、作品を見せるとは? など、つぎつぎと湧きおこる本源的な問いに全身全霊でむきあい、模索します。

そこから絵画パネルという既存の表現形式を超えて、動物の皮革に描いたり、糸で縫ったりという手法が編み出されていきました。

「描くこと」「創ること」ことを、人間の営みの歴史や地球の活動にまで広げてとらえようとする彼女の意欲は、既存の「美術」を超えた刺激と発見に満ちています。

「ポトラック」の会場はその日、大変な熱気に包まれましたが、人々が集うことがしづらくなったいま、そのときのエネルギーと思考の軌跡を活字にしてお届けしたいと思いました。

コロナ禍と津波は同じではありませんが、人間の想像力を超えた事態に直面したとき、それに立ち向かおうとする姿勢には希望が感じられます。

日常が滞りなく過ぎていると見えにくい物事の本質は、大きな石が転がり落ちて行く手がふさがれたとき、たちまちあらわになります。
そのときに立ち止まって考えることができれば、つぎの山を登る力が蓄えられると彼女の言葉は教えます。

文庫60pages

震災後の、カンザスで制作展示した作品のカタログTornado Huntingもございます。