月別アーカイブ: 2016年7月

藤宮史 木版漫画集「或る押し入れ頭男の話」

藤宮史 木版漫画集「或る押入れ頭男の話」

藤宮史 木版漫画集「或る押入れ頭男の話」(青林工藝舎)¥2000+税

大学に入り、一人暮らしをはじめたものの、人間不信から、ひきこもりになり、白昼夢想にふけり「押し入れの中で暮らしてみたい、いっそ自分自身が押し入れになってしまえば、煩わしい人間関係に悩むこともない」と念じつつ、うたた寝からさめてみると男の頭は押し入れになっていたーーー

そんなカフカの「変身」のようにはじまり、人間存在を問う作品。
迂闊にも孤独を手に入れたいと思った男が、その容貌もあって、現実世界に翻弄され陥穽に落ちてゆく姿を描きます。人間から押し入れ人間、やがてほぼ押し入れ、そして……、緩慢に消滅へと向かう数奇な男の物語。

前作「黒猫堂商店の一夜」収録作と、この本の収録作を制作するのに10年を費やしたそう。ゆっくり濾過されるように歳月をかけて形になった、寡作な作家の貴重な作品集。

A5判上製144pages

oshiire400_1 oshiire400_2 藤宮史 木版漫画集「或る押入れ頭男の話」

 タイトルと表紙のワンポイントは型押し

真樹日佐夫 原作漫画全作品研究

真樹日佐夫 原作漫画全作品研究

真樹日佐夫 原作漫画全作品研究(劇画マイノリティ・レポート) ¥800+税

梶原一騎の実弟で「ワル」の原作で知られる・真樹日佐夫が生涯に手がけた原作漫画全85本の書影と作品データ、ストーリー概要と解説を発表順にまとめた資料性の高い一冊。

これまでに出た、真樹日佐夫 原作漫画全作品研究vol.1とvol.2を増補改訂合本したものを実話系雑誌風の表紙で装いも新たに、劇画マイノリティ・リポートよりリリース。

A5判108pages

米沢嘉博「戦後怪奇マンガ史」

米沢嘉博「線顔怪奇マンガ史」

米沢嘉博「戦後怪奇マンガ史」(鉄人社)¥2000+税

漫画評論家、米沢嘉博が、1986年から1990年まで、ホラーハウス(大陸書房)で連載していた「戦後怪奇マンガ史」「恐怖マンガの系譜」をまとめたもの。

戦後怪奇マンガの始まりに近いとされる手塚治虫「ロストワールド」から、つのだじろう「新うしろの百太郎」まで、約40年の流れを概観した通史。編者は赤田祐一、巻末に想田四と成瀬正祐による解題および、怪奇マンガを多数出版してきたひばり書房の主要刊行物と作家・作品名のリストを収録。

水木しげるや手塚治虫、わたなべまさこ、楳図かずお、日野日出志、伊藤潤二はもちろん、竹内寛行、いばら美喜、陽気幽平ら異色作家たちもマンガ史の中にしっかりと論じられ、怪奇漫画を体系的に語っています。

「戦後怪奇マンガ史」目次ーーーーーー

〈第一部 戦後怪奇マンガ史〉
はじめに/前史/「こわいまんが」の出現と成立/水木しげると兎月書房/「怪奇探偵漫画」の台頭/怪奇時代劇と小島剛夕の人気/怪奇アクションシリーズ登場/小説と映画の静かな怪奇ブーム/貸本劇画の奇書、怪書、珍書

〈第二部 恐怖マンガの系譜〉
楳図かずお 恐怖の刻印/恐怖の完成/少年から少女へ
少年誌発・妖怪ブーム
ムロタニ・ツネ象・孤高の怪奇世界
楳図かずおと古賀新一
古賀新一・因果の舞台劇
怪奇競作短編ブーム その1
山田ミネコ 魔法少女の時間
萩尾望都・吸血鬼幻想/怪奇からSFへ
山岸凉子・「ゆうれい談」の登場/肉体・精神・霊/霊感少女の災難
日野日出志・原色の風景/狂気の地獄絵
手塚治虫・青年怪奇マンガへの挑戦/暗い時代の中で/闇の記憶としての恐怖
山上たつひこ・悪意と恐怖とグロテスク
池上遼一・不条理の風景
諸星大二郎・日常にひそむ闇/SFの中の怪異
永井豪・笑いから恐怖へ/恐怖からSFへ
怪奇競作短編ブーム その2
古典名作書き下ろしシリーズ
ひばり書房の軌跡
立風書房・レモンコミックスの作家たち
美内すずえ・伝奇ロマンの語り手
佐伯かよの・SFの中の恐怖
里中満智子・愛に恐怖を
わたなべまさこ・悪魔の少女たち/怪奇メロドラマへの道
つのだじろう・マンガと心霊科学
〈解題〉成瀬正祐/想田四
〈資料〉ひばり書房 怪奇マンガ総目録(暫定版)

<著者略歴>
米沢嘉博(よねざわ よしひろ)
1953(昭和28)年熊本市生まれ。明治大学工学部入学を機に上京。
漫画批評グループ「迷宮」の活動に参加しマンガ評論、大衆文化評論を開始。
80年12月からコミックマーケット代表、2001年7月から日本マンガ学会理事をつとめる。
2006年10月1日、病没。享年53。
2009年には「米沢嘉博記念図書館」(明治大学)が開館された

21cm×13cm 288pages

しろうべえ「マンガミニマムショート集」

しろうべえ「マンガミニマムショート集」

しろうべえ「マンガニミマムショート集」(しろうべえ書房)¥600+税

10年ほど前から、自作コミックをホチキス製本のジン形式で発表していた、しろうべえが4年前に、小出版の普及を目的にした印刷・製本所「しろうべえ書房」を京都に立ちあげ、独自の製本ノウハウを築く中で、現時点で持てる技術を駆使して、自身の作品集を発行!!!
編集・デザイン・装丁・印刷・製本すべてを自身が担当し、帯のデザイン、質感の違う紙づかい、部分2色刷りなども取り入れつつも、持ち味の?DIY感、手作りスピリットを伝える一冊に仕上がりました。

トーンを使わない力強い線画のタッチが魅力。特に最後の中編「タイムマスリップ」は、連続した見開きを大胆に使ったクローズアップなど、映画を眺めているような展開が印象的。

A5判128pages

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しろうべえ「マンガミニマムショート集」

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安部慎一「闇の公務員」展 ーー中央線沿線四箇所合同 安部慎一展

安部慎一展

2016年8月13日(土)〜26日(金)
安部慎一「闇の公務員」展 @タコシェ

※中央線にゆかりの作家・安部慎一の展覧会を8月に、新宿新宿眼科画廊、中野タコシェ、阿佐ヶ谷ギャラリー白線、国立ギャラリービブリオの四箇所で開催します。会期は各会場によって異なりますのでご注意ください。

タコシェは、根本敬さんによるアベシンの怪作「僕はサラ金の星です!!」普及活動の一貫で、氏のお手製「僕サラ」コピー本を店頭で立ち読み用に長期間公開し、幸なことにアベシン再評価のきっかけに関わりました。そんなご縁から、「僕サラ」と並ぶアベシンの怪作?「闇の公務員」を展示するとともに、この2作に短篇1本と安部慎一インタビューを加えた冊子「闇の公務員」を発行いたします。

安部慎一「闇の公務員」

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あわせて、これまでのアベシンの著作や、青林工藝舎からの作品集「安部慎一傑作短篇集」(限定500)や雑誌「アックス」の安部慎一特集などもご用意いたします。

安部慎一(あべしんいち)
1950年 福岡生まれ。
永島慎二、つげ義春や林静一の影響を受け、1970年「やさしい人」で「ガロ」からデビュー。翌年、中央線沿線の阿佐ヶ谷を舞台に、後に妻となる美代子を主人公にした短篇「美代子阿佐ヶ谷気分」が人気となり活躍するも、80年代に入り、新興宗教にはまり、続いて統合失調症を発症、活動は停滞。しかし、この間“アベシン”が狂気と正気の狭間で描いた「僕はサラ金の星です!」を、90年代に入り、根本敬がコピー手製本し、タコシェで立ち読み用に公開したり、雑誌”クイックジャパン”の連載「消えたマンガ家」で大泉光成に取材され、再評価の機運が高まり、二人の息子がロックバンド”スパルタローカルズ”として活動を始めたことも話題となり、21世紀に入り著作の復刊、単行本化が続き、生ける伝説として活躍中!!