日別アーカイブ: 2011 年 1 月 17 日

再入荷 泉信行「漫画をめくる冒険 下巻」

泉信行「漫画をめくる冒険 下巻」(ピアノ・ファイア・パブリッシング)¥1890

好評のうちに、品切れとなり、長らく増刷が待たれていた「漫画をめくる冒険」が、電子書籍時代にあえて、コマのシークエンスから成り立つ漫画という表現を改めて考えるべく?増刷されました。

本書は、漫画の読み方ではなく、漫画の読まれ方を検証する漫画読本。上巻では漫画を紙とインクからなるメディアとして、ページやコマの連続の中でいかに知覚されるかについてを述べた基本編でしたが、下巻ではさらに掘り下げて、より多くの作品を例に挙げ、コマの流れ、構図、パース、アングルなどを見ながら、作品の読まれ方を検証している。

これは、頭から湯気が出ていたら怒りとか、電球が絵がレテいたらヒラメキというようなお約束とは違ったレベルで、漫画がどのように知覚と結びついているかを考察したもの。

内容は—–

下巻の序 眺め・ながら・得ていくもの
ながく[永]
ながむ[詠]
ながれ[流]

第三章 視線の力学
読者のまなざし
アングル 傾いていく視線
ベクトル 向きとその強さ
『アレクサンドロス』の東制と西帰

第四章 漫画の読み方
漫画の文法
主体と客体
読み方から見え方まで

対談 夏目房之介×泉信行

終章 時間における人間
読書のおもいで
情報と情熱の保存

巻末資料 Ⅰ 空間すなわち時間
Ⅱ アングル揺動の八要因
Ⅲ ベクトルの効果

下巻解説「”あなた”のための漫画論」(さやわか)

みなもと太郎、スコッチ・マクラウド、板垣恵介、山野一、萩尾彬、荒木比呂彦、本宮ひろ志、長谷邦夫、手塚治虫、菅野博之、津田雅美、夏目房之助、浦沢直樹、島田英次郎、高野文子、安彦良和、ジョージ・マクマナス、吉住渉,赤松健、島本和彦、富樫義博、今日マチ子、乙ひより、大友克洋、高橋留美子、小林尽、富沢ひとし、赤塚不二夫らの作品を例にあげて検証。

A5判216P

であ・しゅとぅるむ

であ・しゅとぅるむ

であ・しゅとぅるむ(であ、しゅとぅるむ編集室) ¥1000

楳図かずおをテーマにアートクラスタたちが創作した漫画、小説、評論をまとめた冊子。100年前に表現主義を主導したヘルヴァルト・ヴァルデンによって創刊された美術誌「DER STRUM」が美術をリセットし新たな表現の可能性を探ったことに倣い、「であ・しゅとぅるむ」と題し、アートメディアとは一線を画したアプローチを試みています。

執筆者は、【マンガ】坂本夏子、遠藤俊治、宮田篤、荒木涼子、梅津庸一 【小説】伊藤亜紗 【評論】石岡良治

漫画は、楳図作品をリアルタイムで体験していない若い作家たちによるもので、楳図作品をベースにしたものから、一見、全く共通性のないものまで様々。また、文学・パフォーマンスのジャンルで評論を展開している伊藤亜紗が初の小説を発表し、2010年1月18日に東京芸術大学における石岡良治によるレクチャー(40000万字超評論)を収録。マンガ学、マンガ論をおさらいしつつ、資料をあたりながらのレクチャーをそのまま書き起こしているので、言葉は平易ですが、対応資料が本誌の図版だけではちょっと不足しがち。お手元の楳図本をひもときながらじっくり読んでみるのもよいかも。
A5判96P