武富健治『掌編集』¥525
『鈴木先生』で知られる武富健治さんは、少年時代から友人と漫画の同人誌を作ったり、大学漫研の部内誌で作品を発表し、現在でも胡蝶社名義で作品を自費出版を続け、自ら編集者・解説者となり自作を眺め磨きをかけて独自のキャリアを築いてきましたが、そのシリーズの最新刊です。
作者が高校3年から大学3年くらいの間に、同人誌や漫画研究会の月刊コピー誌などのために描いた作品の中から、”比較的作品としてしっかりしたもの”と語る10編をセレクトした短編集です。
いつものように自作解題もあり、学生でありながら旅行ものを描くために九州へ取材したことなど、描いた背景なども語っており、武富作品のルーツや背景を知る上で面白いのですが、粗いタッチと細かいペンの描き込みが混在しているあたりに、若さと作風を確立する以前のなみなみならないエネルギーを感じさせます。
巻末には『鈴木先生』の連載直前に、後輩の同人誌のために描きおろした最新短編で時代ものの「右馬之佐東行日記」が収録されています。これは『蟲愛づる姫君』の続編にあたるもので、中世のちょっと怪奇なお話になります。最近の作品ですが同人誌つながりということで収録されています。(単行本未収録)
A5判74P