(復刻版)新関健之助 絵物語「富士の山」

新関健之助 絵物語「富士の山」 (セミ書房)¥4000+tax

太平洋戦争末期の、昭和18(1943 )年10月に出版されたナカムラ繪叢書全100冊のうちの最終巻。

著者の新関健之助は、昭和9年に中村書店から「トッカン水兵」でデビューし、戦前から戦後にかけて、子供向けSF冒険モノや動物もの、戦争ものと幅広く活躍した漫画家。

「のらくろ」の流行で、漫画や児童向け出版が活況を呈した昭和初期、
多くの出版社が、このヒット作に倣いに、漫画や廉価版コミックが大量に出回りました。
中村書店もそのうちに一つで、クロス装の上製箱入りという、凝った造りの漫画をナカムラ・マンガ・ライブラリー(NML)と銘打って大量に刊行しました。
しかし、戦局が悪化するにつれ、出版に対する統制も強まり、NMLは、漫画の表示を取り、ナカムラ繪叢書として刊行を続けます。
繪物語として、コマや吹き出しを排し、教育的な体裁で発表された作品は、ある意味、実験的で大胆な構図のBD的なものとして注目に値します。

「富士の山」は、はるか遠方に眺める富士に興味を持ち、学校や家庭で富士山について知識を深めた少年が、お父さんにお願いして、父と妹と一緒に富士登山にゆく小旅行に行く、ドキュメンタリーの形をとった創作です。

前半が富士山についての説明、後半が旅の記録で構成されており、北斎の作品を大胆に引用した、富士山画の構成美の説明もあれば、親子でご来光を拝み、すばしりを転げるように駆け下りて笑い合う楽しい旅の様も描写され、最後は主人公の少年の作文で締めくくられています。

デジタルアーカイブにもない、戦中の貴重な名作の復刻です。

13×18.2cm 160pages オールカラー カバーつき
(1944年発行の第二刷版を底本に復刻しているため、経年劣化もあり
発売当時の状態を復刻したものではありません)

新美ぬゑ、高橋正彦、川勝徳重による解説冊子(16ページ、中綴じ)付き。