月別アーカイブ: 2020年6月

日本暮らし3年、 “今知っている単語と文法で書き殴った”パワーが圧倒的 おむつ「純情手冊」

おむつ「純情手冊」 ¥900+tax

在日3年、目下、日本の永住権取得を目指して、日本で働きながら、喫茶店巡りや映画・音楽鑑賞に励む中国出身のおむつさんの個人誌。

新型コロナによって、仕事が「2日出勤の5日休み、逆転暮らしは幸せを通り越して普通に「無」」という状態の中、2019年に巡った昭和な喫茶店や、お気に入りの映画や音楽など、自分が今好きなものを、「日本語を何年勉強してるか、うまく言えてるか悩む前に、今知っている単語と文法で書き殴るだけ。それしかないんだ」の精神で綴って、本にしたもの。

放送事故のように白紙ページが途中に出て来たり(わざとです!)、縦書きも横書きも全部同じページ順で並んでいたり、同郷の友人へのアンケート部分は中国語だったり、言葉の選び方や組み合わせがミラクルすぎたり、「作りたかったものと全く別のものが出来上がった」りしていますが、すべて、おむつさんの喫茶愛、音楽愛、映画愛、zine愛とはんぱない伝えるパワーによって押し切られた圧倒的なジン。大型新人登場?!

写真もおむつさんによるものでフィルムで撮影したものだそうです。

表紙は一冊一冊、手ずからラミネート加工してあり、ポラロイド写真が封入されています。

A5判70pages

香港を舞台に人々の営みを描いた Overloaddance 超載舞步「都市儷人」

Overloaddance 超載舞步「都市儷人」¥1273+tax

香港のアーティストOverloaddance 超載舞步の最新漫画。

グラフィティなど、町のところどころに抗議運動の痕跡をとどめる香港を舞台に、それでも日常は続く—-

ピンポンマンションを訪れたり、誰かを想い、希望や救いを求める人間たちと、体毛のジャングルの中で、パートナーを探して命のエネルギーを燃やす毛ジラミや、花の中に閉じ込められて花粉にまみれて受粉を促す甲虫を重ね合わせながら、人間の営みが描かれています。

傷ついた体を引きずり、舫を断ち切り、一人舟に乗り込んだ男が向かう先は…

18×13.5cm ソフトカバー 132pages
中国語(翻訳ペーパーがはさまっています)

かわいい、毛ジラミたち

津田貴司・編著 「風の人、木立の人」

津田貴司・編著「風の人、木立の人」(カンパニー社)¥2000+tax

フィールドレコーディングや即興演奏で活躍する津田貴司が、芸術と衣食住をひとつながりにとらえて、これまでに出会ったパン職人、靴作家、美術家、陶芸家などさまざまな「つくりて」にインタビューをした「読むドキュメンタリー映画」。

【目次】
まえがき
satomimagae:シンガーソングライター
城下浩伺:美術作家
essay――フィールドレコーディングについて
池田絵美:パン職人/Natural Bakery 日々舎
曽田耕:靴作家
井上陽子:コラージュ作家
essay――制作ノート2016
TAMARU:bass guitar soloist/sound constructor
坂本宰:影のパフォーマンス
essay――風の強い午後に
遠藤真紀子:菓子職人/くろねこかしや
清水恒輔:ベーシスト/mama!milk
essay――生まれたばかりの雲
郡司庸久・慶子:陶芸家
essay――檜原で狐に化かされた話
田口賢治:美術作家
柳沢英輔:フィールド録音作家/文化人類学者
essay――音は、ふたたび私の蝸牛へと舞い戻ってくる
金子遊:映像作家/批評家
巽勇太:美術家/白鷺美術
essay――静けさについて
大上流一:ギタリスト/即興演奏家
あとがき
解説(福島恵一)

編著者:津田貴司(つだ・たかし)
1971年「耳の日」生まれ。早稲田大学第一文学部、同大学院修士過程修了(舞踊学)。
ソロ名義hofliのほか、stilllife、星形の庭など様々なユニットでフィールドレコーディングや即興性に基づいた音楽活動を展開。サウンド・インスタレーション制作、ワークショップ「みみをすます」シリーズを継続するほか、福島恵一とともにリスニングイベント「松籟夜話」ナビゲーターを務める。主な CD作品は『湿度計』『雑木林と流星群』『木漏れ日の消息』など。

B6判256pages

文・ねこざ、しょせん 絵・スケラッコ 「イランくいしんぼ旅」

文・ねこざ、しょせん 絵・スケラッコ 「イランくいしんぼ旅」¥550+tax

台南、ベトナム中部に続く、スケラッコさんのお母様(ねこざ)によるくいしんぼ旅のジン、第3弾。
今回は、妹さん(しょせん)も参加し、お母様or妹さんのテクスト+写真に、スケラッコさんがイラストをつけた家族コラボになっています。

姪っ子がイラン人と結婚した縁で、姉夫婦にお供する形で姪夫婦がいるイランのご実家を訪問したねこざ。テヘラン郊外で、歓迎の家庭料理を味わい、ペルセポリスを始め各地を観光しながら食べ歩き、バザールの模様やイラン料理のレシピを報告しています。
そして母の旅から数年後、しょせんもイランへ。時間差で二人がイランの食をレポートします。

サフランライス、ナン、串焼きキャバブ、サブジ、麺入りスープ、羊料理、フランスパンをくり抜いたサンドウィッチ、フェアラフェル、イランカフェ=チャイハネでの紅茶とお菓子と水タバコetc…
東西の文化が融合した食が次々に紹介されています。

テクストの間や写真の中にスケラッコによる挿絵が登場する、息のあったコラボが楽しい、食いしんぼ旅zineです。

ねこざが日々の食事を記録したブログ、ねこのくいしんぼ日記もどうぞ。

A5判24pages

祝 第二回笹井宏之賞受賞 bouquet, 2020 特集「鈴木ちはね」

「bouquet, 2020 特集「鈴木ちはね」」 (稀風社)¥600+tax

三上春海とともに稀風社を主宰する歌人で、「スイミング・スクール」が第二回笹井宏之賞を受賞した「鈴木ちはね」の特集。
歌人論、受賞作をはじめとした作品論、インタビューなどを含む、鈴木ちはねガイドになっています。

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スイミングスクール通わされていた夏の道路の明るさのこと
ドライヤーの音を鳴らしていたあいだ聞こえなかった雨の音がする
品川の手前で起きてしばらくは夏の終わりの東京を見た
=====(「スイミング・スクール」より)====

【巻頭】 鈴木ちはねロングインタビュー(聞き手:三上春海)

【論評】
小峰さちこ「 スイミング・スクールを読む」
杉本茜「連作はなにを企むかーー鈴木ちはね「スイミング・スクール」」
二三川練「生活のなかの政治」
朝凪布衣「抒情への抵抗ー「スイミング・スクール」に関してー」
山口在果「物語とは別の仕方で」
乾遥香「わたしのための鈴木ちはね入門」
温「固定ハンドルネームの話に近い」
佐倉誰「この世界と戦える歌集」
三上春海「 さよならが来るのを待っている君へー鈴木ちはねについてー」

作品八首 地図のある小説
鈴木ちはね「受賞のことば」

寺井龍哉 連載・寺井さん(第四回):水辺の流れのようにー『うに』『稀風社の水辺』評

表紙&扉:伊丹小夜

A5判80pages