戦前は『マダムと女房』をはじめとした映画シナリオ、戦時中は戦争(協力)ものやスパイもの、戦後はユーモア小説に転じ、大衆小説家として活躍した・北村小松のSF系作品の発掘・紹介をしてきた日本初期SF映像顕彰会が今度は北村の軍事科学冒険小説を復刻。
北村小松「火ー少年科学防諜作戦ー前編」(日本初期SF映像顕彰会)¥1429+税
北村小松が昭和16年に「少国民新聞(現在の毎日小学生新聞)」紙上で1年間連載した少年向け軍事科学冒険小説の復刻。
海野十三のような、派手なメカや超科学描写はないが、「子供の科学」レベルの科学トリックを追ううちにだんだんとスパイ追撃の冒険物になっていく手堅い愉しみがあります。
戦前の小説なので、敵の英米組織のアジトが今でいう南沙諸島(当時、新南群島=日本領)内にあったり、英米に騙されている東南アジア住民を日本側エージェントが説得する長口上が延々十数回にわたって続いたり、この時代ならではの描写が多々見受けられますが、それも含めて興味深い冒険小説。連載全323回のうち前半の山場になる181回までの内容を採録。挿絵・海洋画家、飯塚羚児の挿絵も再録、当時の少年小説世界が味わえます。
北村小松「火ー少年科学防諜作戦ー後編」(日本初期SF映像顕彰会)¥1429+税
北村小松が昭和16年に「少国民新聞(現在の毎日小学生新聞)」紙上で1年間連載した少年向け軍事科学冒険小説を飯塚羚児による連載当時の挿絵および単行本版カラーイラストとともに、物語後半である第182回から第323回の最終回までを復刻。
少年向けの科学防諜作戦作品でありながら、日中戦争4年目・英米との開戦前夜の時代の空気が伝わる作品。
この連載の終了直後に北村は二度目の海軍報道班員として南方諸島へ半年間従軍。帰国したばかりの昭和17年7月に大政翼賛会の依頼を受け“日常生活におけるスパイ防止”に関する講話「戦争と世相」を行なっている。 「火」連載当時の世相を知りうる重要な資料として、この講演内容も収録。