読み応え十分の思想誌 SITE/ZERO 〈病〉の思想/思想の〈病〉

SITE/ZERO 01号 「〈病〉の思想/思想の〈病〉」¥2201
 

 M・フーコー、S・ソンタグらは、「病」が社会や権力によって構成された「言説」「隠喩」であることを明らかにしマイノリティ分析のための方法論を創出した。あるいは、E・レヴィナスやJ・デリダやM・C・テイラーは、「アレルギー」「ウィルス」「自己免疫化」を、「他者」を論じる際の概念装置として用いた。病は一つのイデオロギーから解放されながらも、いずれにしろ現実の病の比喩であり続けている。
 一方、実際に「病」の治癒に携わる臨床的立場から発信された思想も存在する。こうした思想潮流は、今日の日本においても独特の存在感を誇り、宮本忠雄氏、木村敏氏、中井久夫氏といった個性的な思想家を輩出してきた。しかし、うした「病」に対する態度は、精神疾患を脳の機能不全へと還元する器質機能主義がドミナントな昨今、単純な自然主義に対する重要なオルタナティヴだとも言える。
 「病」を日常=正常の外部に置き、病について語るロマンティシズムにからめとられることなく、また自然主義回帰でもない、病についてのディスクールを考えることで、生について思考しようというのがこの号の試み—というのがざっとした企画趣意。
 というと難しく感じられますが、具体的には「脳トレ」ブームや、闘病記の文体などを通して病についての語り方を考察したりと楽しい内容にもなっています。
 執筆陣は—柳澤田実、木村敏、十川幸司、斎藤環、柿本昭人、小林昌廣、橋本一径、郷原佳以、岡崎乾二郎、中谷礼仁、田中純、藤本壮介、稲賀繁美、エティエンヌ・バリバール、レオ.シュビッツァー、フランソワ・ジュリアン、南後由和—-
 とにかく字がいっぱい、思想いっぱい、これで2200円ならすごく得! お値段的にもお時間的にも超得! ちょっと頭を揉みたい(揉まれてみたい?)というのにもってこい。
B6判 479P