モツ煮狂い 

クドウヒロミ モツ煮狂い 1 ¥350

 近頃、博多風のモツ鍋がジンギスカンに代わって流行中。狂牛病はいまなお私たちの食肉生活を翻弄しています…。しかし、このブームでモツが「肉」と別格な部位であることをやっと知りました。なぜなら私の育った家庭では、焼き肉と称して鉄板でホルモン全般を焼いて食べていたので、20歳過ぎても肉とホルモンの区別がつかないくらい、ホルモン漬けだったのです。ところが、モツ鍋を一緒に囲んだ友人・知人はモツ初体験なんて人もいて、けっこうカルチャーショックでした。
 この「モツ煮狂い」によると、「浅草以東、曳舟から立石にかけてと、折り返しの町屋への京成トライアングル」こそ、近代化の中で、工場となめくじ長屋と色街が形成され、モツが煮込まれていったとのこと。そして、私はこの三角地帯で生まれていたのでした。渦中にいると気づかない事ってあるんですね。
 しかし、著者は京成人でありながら、モツ煮が下町の味と文化であることに気づき、こうして本を出していらしたのです—–
東京下町のソウルフード、もつ煮。豚の白モツを使った、いわゆる煮込みこそ、戦前から東京下町(特に浅草以東の極東!)独自カルチャーにもかかわらず、席巻する居酒屋チェーン店の画一化されたモツ煮の前で、本来の味や姿を忘れられがち、ということで、これまで開発から取り残されていたのを幸いに続いてきたモツ煮の名店を巡り、開発に飲み込まれないうちに、東京の味のフォークロアを行うというのが本書。
 と根底には高い志を持ちながら、実際には、タイプ別にモツ煮の名店と名品を紹介し、最後にご家庭でも作れるモツ煮レシピ(煮汁を継ぎ足しながら、味付けを醤油、味噌、洋風と自在に変え、毎日でもモツ煮を食べることができるという、画期的というかトライアスロンなお料理教室です)がついています。
 表紙はモノクロですが、中は全部カラーです。 A5判 32p
 東京の人も、そうでない人も、この本を通してもモツ煮を二度味わってみてください。