ジェンダー・エッセイ 清田隆之「さよなら、俺たち」

清田隆之「さよなら、俺たち」(スタンド・ブックス)¥1700+tax

学生時代に、女性たちの恋バナに耳を傾け、相談に乗るうちに、「桃山商事」としての文筆業やラジオなどが現在の活動につながった清田隆之。

これまで女性の言い分を収集してきた彼が、蓋をしてきた自身の恋愛や失恋などの過去に向き合い、これまで聞いてきたエピソードや、友人・知人らとの語らい、本や演劇などのカルチャーと擦り合わせて、みえてきた自分の中の男性性問題をあぶりだす。
過去の幼稚で狡猾な言動、見たくない部分を振り返り、甘えや油断、無知や加害者性などの「俺たち」にさよならして、「私」への脱皮を目指す、著者初の本格的ジェンダー・エッセイ。

失恋、家事、性的同意、風俗、夫婦別姓、マンスプレイニングからコロナ離婚まで、様々なテーマに根づく男性問題を掘り下げています。

【目次】

さよなら、俺たち

1 あの人がいない人生を生きるのだ――失恋による小さな死

あの人がいない人生を生きるのだ
失恋による“小さな死”を乗り越えるには
こじらせ男子の当事者研究――失恋ホストの現場から

2 俺たちは全然客観的で中立的なんかじゃない ――男の幼稚さ

「気づかない男たち」 ――ハラスメント・スタディーズ
俺たちは全然“客観的”で“中立的”なんかじゃない―― セカンドレイプ
ボクたちはいつ大人になれるのだろうか ――大根仁作品における「男の幼稚さ」について
『ラブライブ!サンシャイン!!』のPRイラスト論争。批判の声に怒っているのは誰なのか
女子小学生にまで求められる“男ウケ”のモテ技。俺たち男はなぜ「さしすせそ」で気持ち良くなってしまうのか
世界で進む「性的同意」の議論。俺たちはその意味を理解できているのか

3 私たちはすれ違ってすらいないのかもしれない――コミュニケーションと聞く力

「男をひと括りにするな!」から進むために
我々が“聞ける男”になるために必要なこと
「コロナ離婚」の背景にある絶望感の正体
私たちは“すれ違ってすらいない”のかもしれない

4 生理が〝自己責任〟になってしまうディストピア――強固な男性優位の社会構造

田嶋陽子が再ブーム。“日本でいちばん誤解されたフェミニスト”はこんなにカッコ良かった
エロ本の作り手にお話を伺う中で見えてきた巨大構造
生理が“自己責任”になってしまうディストピア
doing偏重社会に生きる私たちに突きつけられた“ミラー小説”
「子どもを産まなかったほうが問題」は失言ではない。現政権の本音だ
「夫婦別姓は犯罪が増える」というトンデモ発言は“男性特権”が生んだ無知の末路

5 加害者性に苦しむ男たち――抑圧と孤独

女性の恋愛相談を聞きまくった結果、過剰に抑圧されるようになった私の性欲
“加害者性”に苦しむ男たち
内面の孤独
性欲は“本能”って言うけれど……男性にとって風俗とはどういう場所なのか

6 生まれたからにはまだ死ねない――beingから「私」へ

矛盾への恐怖と恋愛相談
「だったらひとりで生きればいいのでは?」と絶望される前に
家に一冊も本がなかった
自分を掘れば他者とつながる
ぺこぱ“NEO優しい”の衝撃 「優しいのにおもしろい」という革命
笑いと脱力をもたらすbeingの世界――さくらももこ論
生まれたからにはまだ死ねない

B6判304pages