鈴木ちはね 三上春海「時間のかかる短歌入門 1」

鈴木ちはね 三上春海「時間のかかる短歌入門 1」(稀風社)¥500+税

2015年に発行された往復書簡形式の「誰にもわからない短歌入門」から3年。
短歌や言葉をめぐる状況も大きく変わる中で、この本の著者、鈴木ちはねと三上春海は、斉藤斎藤の第二歌集「人の道、死ぬと町」に出会います。

東日本大震災をはさんだ2004年から2015年の作品を編年体でおさめたこの歌集は、歌人を取り巻く状況の変化に心を揺さぶられ、乗り越えるべく思索を深める中で作品のスタイルまでもが大きく変化してゆく軌跡を追うことになる、稀有な書物であり、二人は宮沢章夫の「時間のかかる読書」的アプローチで時間をかけて書簡による対話形式で読み解いてゆきます。

時間をかけて作られた歌集を、時間をかけて、おおきなものさしで読みながら、様々な歌人の個々の歌を一首ずつレビューした前作では掘り下げることができなかった短歌における時間や連作形式について考ます。

本書は課題の本の全体の1/10程度の段階のもので、続編が予定されています。

—(稀風社ブログより)
既刊「誰にもわからない短歌入門」では、一首評、という切り口から、短歌という問いをかんがえました。

今回の「時間のかかる短歌入門」では、そこで欠けていた「連作」「歌集」という側面に切り込むべく、2016年におおきな反響を巻き起こした『人の道、死ぬと町』という書物を題材に、ふたたび往復書簡形式で、こんどは、収録の連作の読解をこころみました。

『人の道、死ぬと町』は、その内容の重厚さから、短歌をつくらないひとにもそうではないひとにも、刊行時、おおきな反響を巻き起こした書物です。しかしながら、その巨大さゆえに、いまだ十分に消化されきってはいない、さらなる批評を待ち望みつづけたままねむっている、そんな印象をわたしたちに残す書物でもありました。

本書「時間のかかる短歌入門」には、「連作」「歌集」といった短歌のしくみのみならず、そのような反響を生み出す斉藤斎藤さんという歌人の作家性にも着目する、一個の「斉藤斎藤論」という側面があります。
しかしながら、一個の作家論でありながらも、基本は入門書として、ぐるぐると時間をかけて、「連作」「歌集」とはなにかを考えながら、短歌というふしぎに対してアプローチをこころみる、
本書はそのような、やや特殊な形式の、あたらしいタイプの入門書となりました。

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B6判 96pages 稀風社