佐藤直樹「秘境の東京、そこで生えている Unexplored Tokyo: There, it has grown」(東京キララ社)¥3800+税
アートディレクター、グラフィックデザイナーとして長く活躍し続けてきた佐藤直樹が、2013年頃より木炭で身近な植物を描きはじめた「そこで生えている。」シリーズ。
子供の頃、無心に絵を描いていたのが、誰かに見られる事を意識してから、何かを失い元に戻れなくなった作者が、改めて「それ」を意識したのは、思春期の一時期を過ごした荻窪を歩いていた2011年。「それ」はただそこに生えるように存在しており、その直後に、大地は大きく揺れた。
そこにただ生えているものを描くことで、描いて描きまくれば、それが何かわかるようになるのだろうか?あちこちに、生えているいろいろなものを感知しては描き続け、とまらなくなってしまっている、増殖中の作品の記録、第一弾。
84mに達するパノラマ作品や、30mを超える新作など、全長150mを超え日々進化を続ける作品群の大規模個展が、アーツ千代田 3331にて2017年4月末に開催される。
図録を兼ねた画集として出版される本書は、220mm四方の紙面に作品群を再配置、躍動感溢れる筆致を手に取り観ることができる待望の第一画集となる。
巻末には、水沢勉、円城塔、宇川直宏、原田マハによる寄稿・対談を収載。作品へのレスポンスとしての挿文、アートとデザイン、創造の衝動、絵画史をめぐる対話・論稿など、増殖する作品群と並走するテキスト群を収めた。今日の表現活動に横たわる前提をほぐし、新たな視座をもたらす一冊。