櫛野展正「アウトサイドで生きている」

櫛野展正「アウトサイドで生きている」(タバブックス) ¥1800+税

専門の美術教育を受けず、美術業界のシステムの外で独自の活動を続ける特異なアーティストとその作品に魅了され、アウトサイダーアートのキュレーションを行い、自身も規制の美術業界とは一線を画した活動を行う決意表明としてアウトサイダー・キュレーターを名乗る櫛野展正が18人のアーティストを取材・紹介。

70才すぎて写真とMacをはじめた自撮りおばあちゃん、大量の死んだ甲虫を使って武者人形を作るおじいちゃん、10代からの食べたものを詳細な絵で記録する中年男性、河川敷の草を刈ってキャラを描く路上生活者…外からの情報や評価を気にせず、自らの意志と方法で表現を続ける人々を各地に訪ね、”自らを生きる”ことを問う。

福祉施設での就職を機に、アート活動支援を始め、鞆の津ミュージアムの開館に携わりキュレーターとして活動する中で、障害者だけでないアウトサイダーアート「極限芸術~死刑囚の表現~」「ヤンキー人類学」などを企画するようになった作者だが、ミュージアムが障害者の作品を中心とした場所への原点回帰を打ち出したことで独立し、2016年、アウトサイダー専門ギャラリー・クシノテラスをオープン。福祉と美術の間で模索を続けるキュレーターが
「障害がない」ゆえに既存の福祉制度でとりあげられず、美術界でも評価されない周縁アーティストたちの人生に迫った渾身のドキュメンタリー。

目次————-

はじめに
クイーン・オブ・セルフィー 西本喜美子
妄想キングダム  遠藤文裕
隠密ツーリスト  熊澤直子(忍者ぶきみ丸)
怪獣ガラパゴス天国  八木志基
昆虫メモリアル  稲村米治
ラーテルになりたい  ラーテルさん(あなぐまハチロー)
ドローイングディズ  辻修平
路上の果て  爆弾さん
お水のカラクリ道  城田貞夫
極彩色のラッキーハウス  小林伸一
落書きラビリンス  野村一雄
進化するデコ街道  山名勝己
ヲタの祝祭  武装ラブライバー(トゥッテイ)
記憶を包む極小絵画  大竹徹祐
草むらの親善大使  藤本正人
あの味を忘れない  小林一緒
進化を続ける愛の砦  大沢武史
仮面の奥の孤独 創作仮面館

世界を治癒する者 解説:花房太一
おわりに
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●櫛野展正(くしの・のぶまさ)
日本唯一のアウトサイダー・キュレーター。1976年生まれ。広島県在住。
2000年より知的障害者福祉施設で介護福祉士として働きながら、
広島県福山市鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」 でキュレーターを担当。
2016年4月よりアウトサイダー・アート専門ギャラリー「クシノテラス」オープンのため独立。
社会の周縁で表現を行う人たちに焦点を当て、全国各地の取材を続けている。
クシノテラス http://kushiterra.com

四六判304pages
カラー136ページで、関連作品の図版も多数収録しています。