例の東浦和の会場で殴られた瞬間以来、自分の意識が、壁にのめり込んだかのように、前に出てこない。玄関に填められた魚眼から、外界を眺めているような感じ……像が歪んで見えるというわけではないが、それに準じて耳も少し遠くなった気もしたし、実際の目の前のものが発する音よりも、耳なりの方がハッキリと聴こえた。
強調しておきたいのは、わざわざ勇敢に壁に向かって衝突して、自分からめり込んだのではない。壁の方から、わたしを飲み込んだのだ。
の書き出しではじまる、のめり込んだ意識のまま自分について語る物書きの男の短編「軽率」ほか、2009年〜15年に発表された(二木ひとみ名義を含む)7編の短編と書きおろし1編を収録。
四六判上製232pages 河出書房新社
2月7日(日)午後3時よりタコシェにて。20時終了予定ですが、状況により前後することがございます。
※当店でご購入にお客様に整理券をお渡しいたします。