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安田謙一「ライブ漫筆」 装画・イラスト:辻井タカヒロ

安田謙一「ライブ漫筆」 装画・イラスト:辻井タカヒロ (誠光社)¥1500+tax

「ロック漫筆家」安田謙一が「ミーツ・リージョナル」に連載中のライブ評「人間ライブが資本主義」をまとめたもの。2013年5月から2020年5月までの間の85本を収録。

音源が残っていない越路吹雪の公演について書いた演芸評論家・安藤鶴夫の文章を読んだときに、その音が聞こえたきたように、あるいは紅白歌合戦の実況をAMラジオで聴いていた子供の頃、沢田研二が曲の途中で行った鳩を出すマジックを伝えた「沢田さんが鳩を出しました」を耳にした瞬間のように、
曲目や演奏が大事なのは承知のうえで、”そこじゃない”ライブのライブたる部分までを綴った名人芸のメドレーです。

コロナ禍での制作は、みんなで密になって声をあげていた、ライブの当たり前を「何でもないようなことが、幸せだったと思う」作業でもあったそうで、ひょっとするとポストコロナ、新しい生活が定着した後、本書は未来の民俗学的資料になったり、これからの音楽体験の愉しみを模索するヒントになるかもしれません。

掲載ライブ(下記は一部・全体は目次画像参照)
バート・バカラック/恵比寿★マスカッツ/エルヴィス・コステロ/水谷千重子/KIRINJI/民謡クルセイダーズ/クレイジーケンバンド/宇崎竜童/シャムキャッツ/憂歌団/ものまねショウ/松浦真也の吉本新喜劇/MOCKY/ジェフ・ミルズ/ピチカート・ワン/柴田聡子ほか

A6判262pages (誠光社)
辻井タカヒロの挿画部分はリソグラフ印刷になっています。

尾崎織女「世界の民芸玩具 日本玩具博物館コレクション

尾崎織女「世界の民芸玩具 日本玩具博物館コレクション」(大福書林)¥3000+tax

電鉄会社で車掌として働く青年、井上重義は、書店で斎藤良輔「日本の郷土玩具」を手にしたのをきっかけに、77年より、非番や休日を利用して、消え行く各地の郷土玩具を収集、自宅の一部に展示スペースまで作ってしまった。
コレクションは増え、サラリーマンが作った異例の私設博物館として話題になり、ついに「日本玩具博物館」と改称し、来場者の期待に応え、学芸員を迎え活動を本格化。
現在では世界160カ国、3万点を越える世界の民芸玩具コレクションへと成長した。

本書は同館の学芸員・尾崎織女が、コレクションの中から味わい深い玩具や装飾品などを選び、美しい写真とともにその誕生背景や成り立ちを紹介したもの。

木、土、木の実、麦わら、ヤシの葉、ヒョウタン、紙……身近なものを使った多様な表現を通して、世界の造形文化を旅します。
メキシコの陶芸の村で作られたアヒルの貯金箱、
イヌイットの作った骨のけん玉、
東欧や北欧の国々に伝承される翼を広げた木製の鳥。
時代に取り残され、消滅しようとしている民衆芸術に光を当てます。

民芸玩具に関するエッセイも収録。
企画・デザインはCOCHAEの軸原ヨウスケ。カバーをはずした表紙、目次、読者カード、どれも民芸テイストで愛らしい。

B5判変型糸かがり上製 160pages

スズキナオ「酒ともやしと横になる私」

スズキナオ「酒ともやしと横になる私」(シカク出版)¥1300+tax

大阪シカクのメルマガで連載していたエッセイコラム「鈴木のぼやき」を加筆修正、書き下ろしを加えた、昔の言葉でいうと洒脱、いまの言葉でいうと新感覚無意味系脱力なエッセイ!

格安深夜バスで大阪と東京を往復しながら、
罪悪感を減らして健康を増進するために?ラーメンにもやしを加えながら
あるいは書店でビジネスや自己啓発系の本のタイトルを眺めたり、お酒を飲みながら、スズキナオが感じたこと、考えたことを語った208頁。

「心底どうでもいい話を読まされてるなと思ってたら、それが宇宙の真理に直結していたりする。ナオさんの頭の中って、本当どうなってんだろ」パリッコ(酒場ライター)

格安深夜バスとか30円のもやしを尺度にする小さな人間にみせかけて?日常を軽やかにする視点を教えてくれるエッセイの名手。
昭和の若者が吉田健一から、新幹線時代に各駅で旅する悦びやお酒の飲み方を教わったように、令和にはスズキナオのエッセイを味わう若人がいるに違いない。

本はスマホや手札よりちょっと大きな三五判変形で、2センチほどの厚さ。手になじみやすく、パール紙のカバーとあわせて物質感があります。

三五判変形208pages
※サイン、ペーパーつき

小林瑞恵 「アール・ブリュット 湧き上がる衝動の芸術」

小林瑞恵 「アール・ブリュット 湧き上がる衝動の芸術」(大和書房)¥2700+tax

アール・ブリュットとは、伝統的・正統的な美術教育や技法から解放されたアートのこと。

1901年、フランスに生まれたジャン・デュビュッフェは画家を志ながらも、家業や兵役につく傍ら絵を描き続け、40才をすぎてようやく画業に専念しました。
それまで、様々な社会経験を積んだ彼は、人間には美術教育を受けずとも表現したいという欲求が生まれ、見返りや評価に拘らず衝動のままに作品を作る人がいる事に気づきます。
そして45年に、スイスの精神病院や刑務所で出会った未知の表現者たちの独創的な作品に魅了され、これをアール・ブリュット(ブリュットとは、天然の、なまの、原石のといった意味あい)と呼び、48年に、60人ほどの会員を募ってアール・ブリュット協会を設立し作品の収集や紹介に乗り出します。

ジャン・デュビュッフェがアール・ブリュットという概念を打ち出したことで私たちは、それまで美術の世界から、こぼれおちていた多くの作品をしました。

近年、日本でも、障害のある人の芸術活動支援がおこり、専門の美術館やギャラリーもできました。
その中で、国内外に日本の作家と彼らの作品を紹介してきたキューレーターが編んだのが本書となります。表現せずにはいられない40名の作家の270の作品を収録し、個々の作家・作品に解説を付しています。

ここ何年か、中野駅からタコシェに続くアーケード街サンモール、また中野ブロードウェイでも、アールブリュット作品を紹介するパネルやポスターが展示され、町ぐるみでこの芸術を支援していますが、この展示のディレクションも著者が行っています

装丁は、吉岡秀典。章のコンセプトにあわせて紙を変えたり、黒紙に銀刷りの重厚感ある表紙まわりにコデックス装と、作品とともに、その造りも楽しめます。

A5判204pages

刈部山本「埼玉「裏町メシ屋」街道旅」

刈部山本「埼玉「裏町メシ屋」街道旅」(光文社 知恵の森文庫)¥860+tax

町歩きをしながらの大衆食(ラーメン・町中華・食堂・酒場等)レポを、ブログ”デウスエクスマキな食卓”やミニコミ同人誌で発表してきた刈部山本が、『東京「裏メシ屋」探訪記』に続き、今度は埼玉を行く。

前著で、東京周縁部を深堀した著者だが、埼玉に特化した本の企画を提案された時には驚きや戸惑いもあったそう。
しかし、自身が埼玉出身のうえ、「翔んで埼玉」などをはじめとした埼玉への注目度uprという追い風、さらには知られていないものこそ紹介するというミニコミ活動で培ったスピリットで、埼玉の地元に根ざした「いい店」を巡る。

旧街道沿いをメインに、歩いては食べ、食べては歩き、銭湯で休んで最後に一杯。歴史と文化、食が交差する、これまでなかった埼玉グルメ本です。

【目次】

■第一章 工場労働者が支えた川口
~大衆食堂の記憶と、共働き世代の子供の聖地「ぼったら」

■第二章 西川口~蕨 今昔物語
~NK流から大陸中華へ、激変の西川口周辺を散策する

■第三章 ラーメンショップ路線バスの旅
~郊外ロードサイドの象徴「ラーショ」を味わい尽くす!

■第四章 大宮~川越を繋ぐ痕跡
~大宮の昭和残照から川越廃線跡うどん巡りへ

■第五章 川越「裏町メシ屋」紀行
~隠れご当地グルメで辿る“小江戸”じゃない川越

■第六章 広大なるフライ文化圏
~行田・熊谷・深谷の駄菓子メシ「フライ」を求めて

■第七章 秩父盆地 極楽案内
~秩父セメント廃線と、類まれなる盆地カルチャー

コラム1 埼玉の熊手市は酉の市ではない!
コラム2 伊勢崎線(松原団地~越谷)
コラム3 大宮~鴻巣路線バスの旅
コラム4 伊勢崎線(越谷~栗橋)
コラム5 最北の地・本庄へ

文庫326pages(光文社 知恵の森文庫)

※これまでタコシェにて、長年にわたり多くのお客様に”デウスエクスマキな食卓”をお求めいただいたご縁から、著者より16ページの特典冊子『川口「裏町メシ屋」少年期」をつけていただきました。