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山川直人「写真屋カフカ 2」

山川直人「写真家カフカ2」(小学館)¥694+税

『コーヒーもう一杯』『道草日和』の山川氏が描く個性無類の新作。
おもちゃ屋、猫屋敷、平和鳥、カセット……消えてなくなりそうなもの、マニアの間のレアアイテムになりつつあるものを通して、人の記憶や過去、あるいは未来までもフィルムにやきつける写真家・谷遠可不可(こくとお・かふか)の写真屋奇譚13本を収録。

懐かしくほっこりするだけでなく、愛しかったものを追いやる時代や人間をも描いているところが、コーヒーみたいにほろ苦い味わいを出しています。

ビッグコミックオリジナル増刊で好評連載中のノスタルジック・ストーリー待望の第2集。

B6判176pages

鶴と亀編集部「鶴と亀 禄」

鶴と亀編集部「鶴と亀 禄」(オークラ出版)¥2300+税

2013年の創刊以来、長野県奥信濃の日常をストリートカルチャーの視点で切り取り、地元のおじいちゃん、おばあちゃんのファッションやライフシタイルを発信することで、ローカルカルチャーへの注目を高めたフリーペーパー「鶴と亀」が、これまでのスナップや取材を再編集するとともに、新たに漫画化したおじいちゃん・おばあちゃんのエピソードやらインタビューや対談を加えた集大成的一冊。

スクーターで移動するおばあちゃん、雪の中でもショベルカラーで作業のおじいちゃんの姿はもちろん
金歯や入れ歯さえも、アクセサリーのようにかわいく見せたり、手拭いの上から農協のキャップをかぶる姿にラッパーを重ねてお年寄りファッションからオシャレなテクスタイルを取り出して新しいスタイルを提案したり。
古木の木肌のような皺、きれいに輝く頭頂部、飛び出た耳毛、おばあちゃんのきわどいトップレス、愛用の道具や腰痛ベルトなどに迫った写真も魅力。

MRIを「いもあらい」と聞き取るお年寄りならではの空耳や人生が滲み出た名言、居間の歴史的なインテリアや、好きなお茶菓子(ってお惣菜?)やらの紹介。
敬老GROOVYでは、田我流、のん、角舘健悟ら、おじいしゃん子、おばあちゃん子たちと仲良しおじいちゃん、おばあちゃんとの対談。

いろいろなものを選択した=洗練された「素敵な暮らし」とは別のそこにあるもの、あるがままを生きる生活の証の本!

213mm × 276mm 234pages

川上未映子責任編集 増刊『早稲田文学』女性号

川上未映子責任編集 増刊『早稲田文学』女性号(筑摩書房)¥2200+税

最近は、親しみやすいフリーペーパー「WB」の形でお届けする機会が多い早稲田文学から、川上未映子責任編集の「女性号」が出ました。

女性の書き手ばかりを集めた「女性号」というテーマに、疑問や違和感を持ったら、それこそが編集者の「意図」なのかもしれません。

性の多様性が認められ、女性に限らず「人間」が取り上げられるべき時代である一方で、ネット上でで性をめぐるポリティカルコレクトネスが可視化され、人々が意見を発し、世界中の情報・動向を把握して相対化できる現在だからこそ、この特集で、現在において「女性が書く」or「女性を読む」ことの抑圧と解放、女性の創作について、形にして記録すべく取り組んだと、川上編集長は記します。

すでに故人となった人から現在まで、約80人の寄稿者による再録や新作を収録。

===コンテンツ===

川上未映子 巻頭言

《巻頭詩》
●エドナ・セント・ヴィンセント・ミレー 小澤英実=訳
●石垣りん

ルシア・ベルリン 岸本佐知子=訳・解説「掃除婦のための手引き書」
多和田葉子 松永美穂=訳「空っぽの瓶ボトル」
津村記久子「誕生日の一日」
佐藤文香「神戸市西区学園東町」
イーユン・リー 篠森ゆりこ=訳「かくまわれた女」
小山田浩子「蟹」

《図版》
●井上佐由紀

伊藤比呂美「夏のおわり。秋のはじめ。」
今橋愛「そして」
文月悠光「発動せよ」
中山奈々「O-157」
東直子「青葡萄」
左川ちか
松田青子「許さない日」
ロクサーヌ・ゲイ 野中モモ=訳「わが父の死去にあたり」
イ・ラン Ko Younghwa=訳「韓国大衆音楽賞 トロフィー直売女」
堀越英美「女の子が文学部に入るべきでない5つの理由」
山崎まどか「私はいかに心配するのをやめて、フェミニストと名乗るようになったか。」

石垣りん
中島みゆき
蜂飼耳「彼女の中の女」
井上法子「素直に届けられる夜」
永瀬清子
盛田志保子「季節に」
川口晴美「世界が魔女の森になるまで」
早坂類
茨木のり子
古谷田奈月「無限の玄」
雪舟えま「俺たちフェアリーている(短歌版)七十七首」
松井啓子「のどを猫でいっぱいにして」
ノラ・ゴムリンガー  松永美穂=訳・解説
ヴァージニア・ウルフ 片山亜紀=訳・解説「ロンドン散策――ある冒険」

エドナ・セント・ヴィンセント・ミレー 小澤英実=訳・解説
葛原妙子
中島悦子「被流の演技」
安立スハル
鈴木しづ子
鈴木晴香「生まれてきた日を覚えていない」
野口あや子「エレクトラ・ハレーション」
神田さよ「鎮める」
齋藤史
吉原幸子
池田澄子
最果タヒ「白い花」
銀色夏生「壁と満月」

CRY IN PUBLIC マニフェスト

ジーン・リース 堀江里美=訳「ジャズと呼ばせておけ」
村田沙耶香「満潮」
盛可以 河村昌子=訳・解説「経験を欠いた世界」
藤野可織「私はさみしかった」
今村夏子「せとのママの誕生日」
おさないひかり「柔らかい、つるつるの毛の生えた soft, sleek hair is growing」
川上未映子「変奏」
栗木京子
黒田夏子「るす絵の鳥」
樋口一葉 川上未映子=訳「大つごもり」

小平麻衣子「林芙美子・〈赤裸々〉の匙かげん――『放浪記』の書きかえをめぐって――」
江南亜美子「21世紀の女性作家たち
豊彩夏「変身――松浦理英子『親指Pの修行時代』、女の子たちのパロディ的カルチャーについて――」
岩川ありさ「クィアな自伝――映画「ムーンライト」と古谷田奈月『リリース』をつないで」
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ くぼたのぞみ=訳「イジェアウェレへ――あるいは十五の提案に込めたフェミニストのマニフェスト」
柴田英里「いつまで〝被害者〟でいるつもり?――性をめぐる欲望と表現の現在」

《図版》
●橋爪彩

haru.「どこかの誰かさんへ
菅野つかさ+中西歩乃歌(Scarlet&June)+野中モモ+川上未映子「インディペンデントメディアという「場」」
桐野夏生+川上未映子「女性と地獄」
小澤英実+倉本さおり+トミヤマユキコ+豊﨑由美 司会:斎藤美奈子「われわれの読書、そのふたつの可能性~批評と書評~」

◎ブックガイド フェミニズムと女性に近づくかもしれない23冊

《巻末詩》
●栗木京子
●葛原妙子

ブックデザインは名久井直子、表紙イラストは魚座

23.6 x 18.2 x 3.3 cm 556pages

坂口尚「12色物語」

坂口尚「12色物語」(マンガ作品保存会)¥10000+税

1995年、49才の若さで逝去した漫画家・坂口尚の名作短編集「 12色物語」の新装復刻本。

緑のイメージから「生」をテーマに描かれた『朝凪』、白のイメージから孤高の芸術家魂を記した『雪の道』、黄のイメージから牧歌的で軽やかな恋を顕わした『ひまわり畑』など、12の色からイメージする、様々な人々、さまざまな国を舞台に紡がれる連作漫画。
坂口尚の圧倒的な画力、豊かな詩情、緻密な構成力をご堪能ください。

●坂口尚
高校在学中の1963年に虫プロダクションへ入社。
アニメーション作品『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』等で動画、原画、演出を担当した後フリーとなり
69年に漫画雑誌『COM』にて『おさらばしろ!』で漫画家デビュー。70年代後半の漫画界における”ニューウェーブ”の潮流の先駆的存在として活躍。24時間テレビのスペシャルアニメ『100万年地球の旅 バンダーブック』『フウムーン』等で、作画監督、設定デザイン、演出等を担当。
1980〜90年代に『石の花』『VERSION』『あっかんべェ一休』の長編3部作を発表した。

A5判 300部限定

本作を創作する際に作家がプロットや構成などをメモしたり、キャラクターの下描きをした創作ノートから構成した冊子「12色物語 創作ノート」、2016年の展覧会の展示作品に解説などを付したカタログ「はじめての坂口尚展」もございます。

沼田学「築地魚河岸ブルース」

沼田学「築地魚河岸ブルース」(東京キララ社)¥2000+税

移転問題で注目される築地市場。
撮影に通ううちに、そこで働く人たちの人生が刻み込まれた沢山のいい顔に魅了され、その姿と表情を撮るベストアングルを見つけた沼田学。
働く人たちにとって馴染みの景色の一部になるべく、同じ時間に同じ場所に撮影機材をセッティングをし、カメラを構え、撮った写真をご本人に贈るうちに、構えず飾らぬ姿を写すようにーー。
それらの写真を集めての展覧会「魚河岸ブルース」が好評を博し単行本化が実現しました。
巻頭テキスト: 戌井昭人

A5判144pages

沼田学(ぬまたまなぶ)

1972年北海道生まれ。早稲田大学商学部卒。写真ワークショップコルプス修了。 雑誌編集やデザイン、音楽に興味がある学生時代を過ごし、たまたま授業の課題で扱うことになった写真に出会う。同時期に森山大道・倉田精二に影響を受け、以降写真ばかりを撮るようになる。
その後、ロックバンドのローディー、ライブフォトグラファー、肉体労働、アシスタントをなどを経験、思い切り遠回りして2003年独立。雑誌、書籍、広告、web、ムービーなどを中心にアンダーグラウンドな文化をドキュメントすることに軸足をおき、幅ひろく活躍している。
歌舞伎町のホストクラブを取材したシリーズ 「指名アリ」はCNNで特集され好評を得る。続く花街を取材したシリーズ 「赤線」は写真キュレーションサイト、フラクションマガジンで特集される。
現在は明治時代の写真術に影響を受けた技法で市井の人たちの一風変わったポートレートを撮るシリーズ「界面をなぞる」はアサヒカメラ2014年11月号ポートレート特集に掲載。展覧会は東京スポーツでとりあげられる。