イ・ラン 「話し足りなかった日」

イ・ラン 『話し足りなかった日』 (リトル・モア)¥1800+tax

シンガーソングライター、小説家、コミック作家、映像作家、エッセイストとして、韓日のカルチャーシーンで煌めく多才なアーティスト、イ・ランの「悲しくてかっこいい人」に続くエッセイ集。

お金、労働、フェミニズム、コロナ禍……。
韓国大衆音楽大賞授賞式でトロフィーを売った話から、創作の舞台裏、金銭事情、#MeToo運動、友との別れ、荒波の日々。
その言動がしばしば、社会や文化シーンに一石を投じるイ・ランさんですが、ふだんは、カフェ通いを止めて家でインスタントコーヒーを飲んで節約したり、通帳の残高を気にしたり、ライブの損益分岐点を計算したり、文化助成の問い合わせをしたり…. と、殆ど個人事業者な世知辛い日々。
生活や仕事に対する疑問が浮かび、自問自答し、誰かに問いかけながら、働き、記録し、表現してゆきます。

いろいろなものと格闘しているようでいて、ちょっと厄介な普通の人間イ・ランを、どのように受け入れて、付き合ってゆくかにひたすら奮闘する日々のようでもあり….
音楽、仕事、友やペット、いろいろなものに懸命に向き合い食らいつきながら生きてゆく、ありのままの話が強く心にせまります。

[推薦コメント]
ポストイット、花束、既読のメール、未読の本、請求書、たまらない写真。
デスクを痛み散らかしながら、私たちは少しだけ、昨日よりもよい風に、歌う。
―― 折坂悠太(歌手)

働いて稼ぎ、身銭を切って約束を果たす。
化粧の前に手を止め、見えない傷に触れてみる。
火を熾すように日々を書き残す人がいて、
その灯りに応えるように我らもページをめくる。
―― 岡田育(文筆家)

[目次より]
第一部 芸術製造業者
第二部 自分をネタにしてストーリーを作る
第三部 ただの存在なだけです
第四部 今日も話せてよかった
第五部 私はどうして知らないの

[プロフィール]
イ・ラン
1986年韓国ソウル生まれ。ミュージシャン、エッセイスト、作家、イラストレーター、映像作家。
16歳で高校中退、家出、独立後、イラストレーター、漫画家として仕事を始める。
その後、韓国芸術総合学校で映画の演出を専攻。
日記代わりに録りためた自作曲が話題となり、歌手デビュー。
音楽アルバムに『ヨンヨンスン』『神様ごっこ』『オオカミが現れた』
(国内盤はスウィート・ドリームス・プレスより)。
著書に『悲しくてかっこいい人』(呉永雅訳、小社)、
『私が30代になった』(中村友紀/廣川毅訳、タバブックス)、
『アヒル命名会議』(斎藤真理子訳、河出書房新社)など。

四六判268pages