漫画」カテゴリーアーカイブ

山川直人「はなうたレコード」

山川直人「はなうたレコード」(平凡社)¥1400+tax

漫画家の豆太と、仕事で一日中黙々とお弁当を作るきな子。
ともに誰とも話さず働く二人が偶然出会い、言葉を交わした縁で互いにいい話し相手となり、やがてともに暮らすように…

喫茶店、古本屋、骨董屋、レコード屋……
どこか懐かしいお店が並ぶ街に暮らしながら、終電を逃して夜の散歩を楽しんだり、銭湯に行ってみたり、たまにちょっとだけ贅沢したり、ときどきすれ違ったり….
はなうたが聴こえてきそうな、豆太ときな子の日々の営みが描かれ、(執筆・連載時期がコロナ禍に重なったこともあり)、思い立ってふらりと散歩に出るのが楽しい、ささやかな日常こそが幸せだったりすることを思い出させてくれます。

古い街並や、アパートの畳や押入が描かれている一方で、登場人物がスマホ使ったり、ファストファッションブランドの袋を持っていたり、作品に様々なレコードや本が描かれていたり….という細部やリアルな部分を見るのも楽しいです。

A5判224pages
初回入荷分にサインを入れていただきました。(なくなりましたら終了となりますので、ご了承ください)

亜蘭トーチカ「順風満帆」

亜蘭トーチカ「順風満帆」(セミ書房)¥1500+tax

97年生まれ、ガロ系私漫画の流れをくむ亜蘭トーチカの2016年〜2021年までに作品12本を収録した初の単行本。

漫画雑誌「架空」16号に掲載されたデビュー作「川へ行く」をはじめ、トマス・ピンチョン『V.』の中のワニ狩りのエピソードを下敷きにした「どぶ街」、同人誌「犬泥棒」に描いた「猫の口に血」「アンドアイラブユー」などに、未発表作を5本を加えたものになります。

「川へ行く」はアメリカのインディ出版社Glacier Bay Booksより英訳版が発行されています。巻末に、高校時代からの友人で漫画家の福本眞久による、作家・作品論を収録。

林静一、安部慎一、つげ義春などが好きな方におすすめです。

目次
たぶん悪魔が
川へ行く
一瞬の夢
どぶ街
猫の口に血
アイドントラブユー
トーキョートラフィックインフォメーション
勉学
この男、目を閉じているが
ピアニストを撃て
Too Young to Go Steady
旅行
著者あとがき
解説:福本眞久「GO!GO!亜蘭」

著者略歴 1997年3月11日生まれ。東京都出身。
17歳のころ漫画を描きはじめる。2017年『漫画雑誌 架空16号』でデビュー。

A5判160pages

丸尾末広「40周年記念 丸尾画報DX I 改」「40周年記念 丸尾画報DX III 改」

丸尾末広「丸尾画報DX Ⅰ(改)」(エディシオン・トレヴィル/河出書房新社)¥4000+税

画業40周年を迎えての、記念増補新装版。『丸尾画報DX 1』に新随筆、追加図版 18点を加えて20ページ増えていますが、紙を見直したため厚さはスリムになっています。

嗚呼、五芒星とともに浮かび上がる亡國の凶兆!
東亜の空に暗雲立ち籠める時、帝都に式神放たれ、丸尾暗黒藝術が闇から目醒める!
『愛蔵版 丸尾画報DX』 1/300~30/300のために描き下ろした
ドローイング作品ほかを増補した決定版。

随筆:丸尾末広 鳥居みゆき ジョン・ゾーン、四方田犬彦、マッド・ジョージ

B5判 230pages
サイン入り


丸尾末広「40周年記念 丸尾画報DXIII改」(エディシオン・トレヴィル/河出書房新社)¥4000+税

『丸尾画報DX 改I』『丸尾画報DX 改II』に続く、その後の新作をまとめた丸尾画報第三弾のデビュー40周年記念増補新装版。。

高畠華宵、江戸川乱歩、夢野久作の衣鉢を継ぐ昭和・平成屈指の怪異•奇想・浪漫が炸裂!

『トミノの地獄』『瓶詰の地獄』『芋虫』『賢者の愛』のカバー画、口絵、挿絵、ポスター画、
短編漫画をはじめ、数々のCDジャケット画ほか堂々200頁に及ぶ、最新の画業を集成。

丸尾末広 書き下ろしエッセイに加え、チャラン・ポ・ランタン、上坂すみれ、荒俣宏、谷川渥、諏訪哲史らの熱き丸尾論やオマージュも収録。

B5判 214pages
サイン入り

ロヤジンマリキ 短編集「くもりのうちに」

ロヤジンマリキ短編集「くもりのうちに」 ¥3000+tax

ロヤジンマリキによる、初の漫画作品集。
リソグラフ印刷で、漫画の効果や話法として多色刷りを使った部分もあります。

ゴミ箱、扇風機、鏡…など生活空間にあるモノの視点でみた6つの日常を描いた短篇集「今日も」。

柵がないため出入り禁止の屋上で、こっそり休憩しているうちに出会った高校生二人のつかのまの交流と別れの物語「屋上に作がなかったから」

流れや空気を壊さぬよう、いつも笑顔でいる「ぽんちゃん」

オンラインでのコミュニケーションがテーマの「KSS online2020」

対話を描く「相づち」

コロナで学生たちが姿を消した美術大学の作業スペースとベテラン警備員さんを描いた「金森さんはつくらない」。

A5判136pages カバー、帯つき

(復刻版)新関健之助 絵物語「富士の山」

新関健之助 絵物語「富士の山」 (セミ書房)¥4000+tax

太平洋戦争末期の、昭和18(1943 )年10月に出版されたナカムラ繪叢書全100冊のうちの最終巻。

著者の新関健之助は、昭和9年に中村書店から「トッカン水兵」でデビューし、戦前から戦後にかけて、子供向けSF冒険モノや動物もの、戦争ものと幅広く活躍した漫画家。

「のらくろ」の流行で、漫画や児童向け出版が活況を呈した昭和初期、
多くの出版社が、このヒット作に倣いに、漫画や廉価版コミックが大量に出回りました。
中村書店もそのうちに一つで、クロス装の上製箱入りという、凝った造りの漫画をナカムラ・マンガ・ライブラリー(NML)と銘打って大量に刊行しました。
しかし、戦局が悪化するにつれ、出版に対する統制も強まり、NMLは、漫画の表示を取り、ナカムラ繪叢書として刊行を続けます。
繪物語として、コマや吹き出しを排し、教育的な体裁で発表された作品は、ある意味、実験的で大胆な構図のBD的なものとして注目に値します。

「富士の山」は、はるか遠方に眺める富士に興味を持ち、学校や家庭で富士山について知識を深めた少年が、お父さんにお願いして、父と妹と一緒に富士登山にゆく小旅行に行く、ドキュメンタリーの形をとった創作です。

前半が富士山についての説明、後半が旅の記録で構成されており、北斎の作品を大胆に引用した、富士山画の構成美の説明もあれば、親子でご来光を拝み、すばしりを転げるように駆け下りて笑い合う楽しい旅の様も描写され、最後は主人公の少年の作文で締めくくられています。

デジタルアーカイブにもない、戦中の貴重な名作の復刻です。

13×18.2cm 160pages オールカラー カバーつき
(1944年発行の第二刷版を底本に復刻しているため、経年劣化もあり
発売当時の状態を復刻したものではありません)

新美ぬゑ、高橋正彦、川勝徳重による解説冊子(16ページ、中綴じ)付き。