田房永子(若松あやの)「むだにびっくり」

田房永子(若松あやの)「むだにびっくり」 ¥525

 潜入漫画レポに憧れていた筆者・田房永子さんこと若松あやのさんは、あるとき男性向けエロ本雑誌から、毎月、風俗や変態パーティに取材する仕事を受け、チャンス到来とばかりに、都内の盛り場に勇んででかけたのだが、それまで風俗とは全く縁のなかった彼女が目にしたものは、男性の性への欲望が作り出したやたら多すぎるサービスの数々であった…。
 取材先に気遣い「すごいですね。素晴らしいアイデアですね」と感服してみせながら、内心(なんて無駄なものがあるんだ!)と別の意味で関心する日々。
 スニーカーを履き潰し眼鏡をかけた、およそ風俗にほど遠いいでたちで、地味に店長や風俗嬢に取材をして、セクシーでかわいい女の子のキャラで潜入体験ルポを書きながら、書けない事実や内なる声が心の底にたまって空しさだけが膨らむ…。
 本書は、そんなこれまで書けなかった(書く必要もなかった)「むだにびっくり」を集めた、男性誌に書けなかった風俗潜入異色ルポ。
 Tシャツにジーパンという格好のまま、女王様に縛ってもらっても、Mっ気もないせいか「こんなものか…」と冷めている筆者。しかし同行の編集者や店の人への気遣いもあって、縛り吊るされた状態で「いや、すごいですね!まいったなぁ、こんな世界があるんだなぁ、いや、すごい」と稲川淳二のように振る舞う、ちょっと間抜けで異様なパフォーマンスが展開される取材現場。
 そんな取材の様子を含めて、風俗の現場を描いた「むだにびっくり」は男性はもちろん、女性の方も安心して楽しくお読みいただける本です。田房さんのイラストもふんだんに盛り込まれています。
A5判96P
 帯をとると、楽しいイラストが出てくるしかけになっています。