ひさうちみちお「精G–母と子の絆」¥1050
平安時代が王朝文化、江戸時代が町民文化の時代だったとすると、高齢少子化がすすむ平成は童貞と介護の文化の時代かもしれません。
モブ・ノリオ「介護入門」、橋幸夫の「お母さんは宇宙人」、坪内ミキ子「母の介護–102歳で看取るまで–」と文芸方面でも介護は一大ジャンルを築いています。
そしてガロ系作家さんたちも介護ジェネレーションに達し、林静一さんが痴呆症になった母を看取るまでを綴った「モモコさんと僕」を上梓してますが、ひさうちみちおさんも現在進行形の介護を元にした漫画を単行本化!
主人公は中年ライター。痴呆による妄想が出はじめた母を実家からひきとり、病院に付き添ったり、妄想話につきあい…、ボケゆく母に困惑する一方で、表現者としての好奇心と観察眼から、過去を聞き出したり、母の中の”オンナ”の部分を淡々としたタッチであらわに描写してみたり。
圧巻は、母の妄言に仕方なくつきあったつもりが、ヘソクリというには高額すぎる埋蔵金を掘り出してしまう嘘のようなくだり…。
お母様は現在もお元気で介護は続行中のようですが、中年を迎えた自らの性とあわせて老いた母の実像を描く異色の母子モノ、現在進行形のリアルな介護漫画、家族の肖像…。今後の展開、続編も気になります!
(四六判192P)