辰巳ヨシヒロ「劇画暮らし」

辰巳ヨシヒロ「劇画暮らし」(本の雑誌社)¥2520

「辰巳ヨシヒロ氏の提唱する劇画は、マンガの世界に初めてリアリズムの視点を導入した画期的なものだった。マンガを子供の世界から飛躍させ、現在にいたるまで発展させたのは、辰巳さんの功績であることを忘れてはならないと思う──つげ義春」

1950年代、マンガに革命が起きた。ユーモアやデフォルメを極力排した「マンガ」でない「マンガ」。若く血気盛んな一群の作家たちが、それまでにないリアリティを追求した実験作を次々に発表し始める。荒々しくも斬新なその作品群を、彼らは「劇画」と呼んだ。その後のまんが表現に決定的な影響を与えた劇画の提唱者・辰巳ヨシヒロによるもうひとつの戦後マンガ史。

少年時代の手塚治虫との出会い、大阪での貸本まんが家デビュー、さいとう・たかをや佐藤まさあき、つげ義春らまんが青年たちとの交友、まんが出版社や古本屋経営の顛末、海外での高い評価、進行中の映画『TATSUMI』のこと。
トキワ荘出身作家たちとは違う、オルタナティヴな表現世界を生み出した鬼才が歩んだ劇画道とは? 昭和三十~四十年代を背景にしたまんが青年たちの群像劇であり、戦後マンガ史というべき内容になっています。

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劇画に関しては、同じく辰巳ヨシヒロ「劇画漂流(上)(下)」(青林工藝舎)、松本正彦「劇画バカたち!」(青林工藝舎)などもあわせてどうぞ!