糟谷恭子 Kyoko KASUYA「Listen to the voice of the sea」

糟谷恭子 Kyoko KASUYA「Listen to the voice of the sea」¥1400+tax

在パリのアーティスト糟谷恭子が、太平洋戦争の戦没学生の手記をおさめた「きけわらつみのこえ」に触れ、フランスにもそのこえを届けたいと、場所をフランスに置き換え、戦争に赴く直前の若者の家族や友人へ向けたメッセージを映像化。
ヨーロッパでは特攻隊のイメージが強い日本兵以前の、一青年として、その心情を描いた映像から誕生したzine。

下敷きになったのは、海軍特攻隊に所属し、22才で戦死した東大生、佐々木八郎の日記。
舞台をリモージュに置き換えて、抗いきれない大きな運命を前に、親しい人たちへ自らの気持ちや願いを託しながら気持ちを整理し、彼らの幸せを願う青年を淡々と描く。

フランスでは、マクロン大統領が国民に向けてコロナ感染拡大防止のアナウンスの際に、「これは戦争だ」と強く訴え、それを聴いた戦争体験世代のお年寄の中にパニックになってしまった方がいたと聞く。
このジンを納品していただいた当初、(日本人として、原爆の悲惨さや戦没学生の悲惨を語り継ぐことの大切さは分かっていても)正直、なぜ今? フランス?という疑問がなくはなかった。が、コロナ禍の中、前述のエピソードから、一介の学生や市井の人が否応無く抗い難い力や運命に巻き込まれた時、どのように受け入れるかを考えさせられると同時に、人間同士の戦いとウィルスとの戦いという違いを腑分けして解決に向き合う姿勢も問われているように思います。

A5判28pages フランス語+日本語+英語