2005. 3.      トップへ

  by Ayumi NAKAYAMA

●05.03.20 乳首…じゃなくて?
 先日、アーティストのルドルフ(スイス人)がやってきて、連れのアンディ(イギリス人)を紹介してくれた。アンディはパリ在住で、EVIL MOISTUREという名前でイラストを発表したり音楽活動をしているそうで(LE DERNIER CRIからも本がでている)、代官山で展覧会を行うのに合わせて来日したらしい。
 というわけで、代官山の TREES ARE SO SPECIALにアンディさんの展示を観に行った。おもちゃの楽器のようなもの、オリジナルのTシャツのほか何種類かCDがあった。音も聴いてみたくて、店員さんに、それぞれのCDの説明を求めたのだが、私の尋ね方が悪かったのか店員さんも全部聴いていないのか、十分な情報が得られずちょっと判断しかねて、クレジットを見てルドルフも参加している一枚を選んだ。
 タコシェでみんなと聴こうとCDを取り出し「ねぇ、この乳首、ヘンじゃない?」とジャケットを見せたところ、店員たちは「これ、乳首じゃなくて、お尻じゃありません?」「肛門ですよ」「HOLEって書いてあるじゃないですか」などと言う。そう言われて見ると、まさしく肛門以外のなにものでもない…。「だったら、ちゃんとアスホールって書いて欲しいなぁ〜」と悔し紛れに言ったものの、わざわざ店員さんに尋ねて、真面目な顔して最終的に肛門を選んでしまう自分が恥ずかしかった…。でもって肝心な音は、一言“この人たち不良”ってかんじでした。
 TREES ARE SO SPECIALは肛門だけでなく、スーザンチャンチオロのかわいい服や冊子なども売っていて、とてもオシャレな空間でした。

●05.03.19 電波が届く
 オタク男を眼中に入れずに毛嫌いするような『負け犬の遠吠え』に叩きつけた挑戦状にして勝利宣言『電波男』。恋愛資本主義に踊らされている現実の女どもに絶縁し、二次元の純愛に邁進する、その生き方の原理を、オタクならではの豊富な知識(プラトンのイデア論以降の様々な思想および文学&週刊誌ネタ&ゲームetc...)とひかえめな口調と強い思いこみの絶妙なブレンドで放電する、私にとっては電車男よりうんと応援してあげたくなる一冊…。
ただ、負け犬への容赦ない反論は私にとってちょっと痛い。

●05.03.17 2005年のミニコミ
 新幹線ができて(って今から40年も前の話ですが)よかったことといえば、仕事や急ぎの用の人たちにはみんなそっちに乗ってもらって、自分はのんびりと東海道線で旅ができる、といったことを吉田健一が書いていたと思うのですが、そのでんで言うと、インターネットやホリエモンが出てきてよかったことは、すぐに買える情報やてっとり早いものはネットにまかせて、無駄やのんびりを紙で楽しもうということになるのかもしれません。(あるいは、速さや大量の情報とお金の流れを大事にする高速回線の世界に、迂回したり楽しみをより長続きさせる仕組みを作ること〜POST PETなど〜の方がより斬新な創作という気がします)
 大阪・堀江にある貸本喫茶ちょうちょぼっこさんとの共同でミニコミガイド的な本(100冊くらいのいろいろなミニコミを紹介する)を作りながら、いろいろなミニコミを読み直したり、編集・発行人やミニコミ読者の方たちに原稿をいただくうちに、今、わざわざ自分で本を作る意味を改めて考えさせられます。
 ただ情報のやりとりだけじゃない、場を作ること、役に立たない(でもそれがあれば世の中はうんと楽しい)ことを楽しむ精神、そんなものを作り手読み手が求めているのだなぁ、と感じました。
 ときどき、自分がお取り扱いしているものが時代遅れになってゆくのかしら…とか、私が面白いと思っても大部分の人にとっては無関係のものなのかも…などと弱気になることもあるのですが、いろいろな本と原稿に元気づけられるガイドブック作成作業です。感謝。

●05.03.14 林月光図録
 豪人先生こと林月光先生の図録の編集も大部分が終わりました。ホッとする反面、取材や調べものなどの楽しい作業が終わってしまって、お祭りの後の気分です。
 まず、展示する絵を選ぶにあたって、昨年から今年にかけて、二日ほどかけてエロティックなイラストを拝見したのですが、膨大な量の絵を見るうちに、絵の精度にばらつきがあることに気づき、それは職人である豪人先生が、掲載時の絵の大きさや印刷(網版か口絵カラーかなど)に応じて、自在に解像度を調節して描いていたのだとわかりました。印刷のときにとばせる下書きの鉛筆の線がそのままのものもあれば、ルーペを使って、髪の毛よりもうんと細い体毛を緻密に描き込んだものもあるのです。
 豪人先生が活躍した時代の大部分は活版印刷の時代で、現在のデジタルな画像処理の時代とは違います。なので図録では、便利な機器を使って一様に絵を実物に近い状態で掲載するのではなく、絵に応じて先生が想定した精度で掲載するべきではないかと考えました。
 ファンとしては、実物に近いものほどありがたいと思うかもしれませんが、これまでにいろいろな画集と原画を見比べてきて、かなり贅沢に作ってもやはり何かが違うのです。それに図録は記録文書とは違うのでなんでも一様にスキャンするのは、忠実というより怠慢なのではなかろうかとも思いました。原画は原画としてお楽しみいただき、図録は図録として楽しめばよいかと思うのです。
 そんなことがひっかかっているとき、竹熊健太郎さんのインタビュー集・戦後サブカルチャー偉人伝『篦棒な人々』の中の石原豪人先生の部分を読み直してみると「昔は印刷所もわがままを聞いてくれたんです。“豪人の絵は俺じゃなきゃダメだ”という印刷屋の社長もいましたよ。(中略)こちらがエンピツの線を出さないでって頼めば、ちゃんとそうなって印刷されてくる。製版もうまい人がいたんですよ。今では、流れ作業になってそんなこと無理でしょう」という部分があって、やっぱり、絵を見て感じた通り、絵の精度にあわせて調整してもらうことにしました。
 このインタビュー、豪人先生の晩年に雑誌クイック・ジャパンで行われ、単行本化にあたり、先生自らが丁寧に校正を行いながら、発売直前に亡くなられたという、最後のロングインタビューで、生い立ちから最新の仕事までを語りつくしています。豪人先生亡き今、展示や図録作成にあたり、遺された言葉の数々がたいへん参考になり、改めて、意義深いインタビューだと感じました。この本にはほかにも川内康範、康芳夫、糸井貫二という篦棒な人々が収録されています。

●05.03.12 募金箱
 ミニコミのミニコミたる部分を存分に発揮し、ユニークな企画や特集で読者を唸らせる『車掌』の最新号は、編集スタッフのひとり、伊藤岳人特集。実はこの伊藤さん、次号では稚内に出向き取材をして、それで特集を作るという使命を担っているのです。というわけで、まずはその伊藤さんの人となりを知る特集というわけです。体重45キロという驚異的な体で、ふだんは出版社で本の編集(これまで100冊くらい手がけているらしい)をしている伊藤さん。詳細は車掌の23-45号をご覧いただくとして、次号の資金を調達すべく、タコシェにも募金箱が設置されました。伊藤さんの取材はすべて募金でまかなわれ、それ以外の資金を足すこともなければ、募金を余らせることもなく、活用されるそうです。
 最近では、あやしい宗教団体や政治団体などが街頭募金を行い、その使途も不明で社会問題となっているので、タコシェのレジ前におかれた、手作り募金箱もあやし気で、皆さんも警戒することでしょう。ごもっともです。ただ、タコシェでは、責任をもって車掌に募金をお渡しはしますので、気が向いたら、あるいは伊藤さんを応援する方、充実した稚内特集を見たい方は募金してみてください。

●05.03.05 巣箱
 千倉の海猫堂で開催される『わたしの巣箱』展のため、バードウォッチャーの私は徹夜で巣箱を作り、当日直接納品することに。朝には完成の予定が、昼近くになり、東京駅に出て特急に乗ろうとすれば、1時間以上待ち時間があると言われ、11時すぎに家を出ながら会場に着いたのは4時近くになっていました。
 電車の中で、風俗誌関係の資料を読んでいたのですが、うっかり寝てしまい、気づいたときは終点の千倉で電車の中に閉じこめられていました。あわてて、清掃のおじさんに「眠ったまま降りられなくなりました。どうしたらいいでしょう??」と泣きつき、鍵を開けてもらい運転席から降りましたが、その間、ずっとトップレスの女のグラビアを胸に抱えていたのに気づいたのは駅を出てからのこと。電車と連絡するバスも出てしまい、タクシーで会場の海猫堂に。
 そこで、私は気づきました。みんなは自由な発想で、赤や黄色の巣箱を作ったり、発光したりフェルト素材の巣箱を作ってましたが、私は図面をひいて木で四角いほんとの巣箱を作ってしまったかも、と。
 それはともかく、タコシェの開店時間中に東京に戻れそうにないので、そのままオープニングパーティに参加させていただくことにしました。
 海辺の小屋を利用したカフェで、漁師さんが持ってきて蒔であぶってくれた干物をいただいたり、地元のハムやパンが差し入れされたり、ママさんがお鍋で作るというおいしいチーズケーキが出たりして、海辺の町の豊かさ、暖かいおもてなしを堪能しました。

●05.03.03 ゆるーい日常に潜む…
 2月なかば、松本正彦先生が亡くなられました。数年前に『パンダラブー』という、たこ焼き好きで不細工さがかわいいお間抜けなパンダ(人間の世界で暮らしているのだけど、ドラえもんみたいに役には立たずに、単純さや間抜けさゆえにトホホな日常を送っている)のコミックが復刻され、その作品に触れた方もいらっしゃると思います。
 先生は若い頃、劇画という言葉や概念を作るきっかけとなった「駒画」を提唱され、その作品で実験や実践をなさったそうです。その流れの作品の一部を復刻した『たばこ屋の娘』ができあがりました。ご病気の中で、先生ご自身が復刻を心待ちにして、巻末インタビューにも応えてらっしゃる作品集で、コミカルな『パンダラブー』とは違った世界が展開しています。
 木造アパートが当たり前だった時代、女心に疎い青年が、殺風景な部屋でうだうだと過ごす…なんていった、なんともいえないなんにもおこらない日常の空気を行間ならぬコマの間に表現した、とんでもなく地味でいてとても斬新な作品です。その後の、川崎ゆきおさんやいましろたかしさんといったゆるーい日常を描いた漫画を経た目で、松本先生の作品を読むと、2005年地点だからこそ、その志が見えてくるような気がします。

●05.03.01 初々しいCD
 円盤大学で知り合った沼田さんは、長い間、大きなレコード屋さんで仕入れのお仕事をしてらしたが、少し前に退職されて、自分でレーベルをはじめた。CDを売る側から作る側へ。最初に作られたのは大友良英さんのソロ。ジャケットに小さな穴がくり抜かれていて、CDの盤面にプリントされたてんとう虫がちょうど見えるのだけど、なんとなく手をかけたくて、そんなデザインを考えて自分でセットしたそう。納品のときも学生さんみたいに初々しい雰囲気で、新しいことはじめるっていいな〜と思った。中身は渋いですが、フレッシュな気持ちに包まれた新譜。ほかにも大友さんが音楽を担当して、浜田真理子さんが参加した『カナリア』のサントラも入荷したので、あわせてどうぞ。。。


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