Diary June.2002  トップへ

by Ayumi NAKAYAMA


●02.06.29 日本映画
 昨日は隅田川にてリクリット・ティラバァーニャの映像を観た。船室で、外で展開されているだろううららかな水辺の景色から遮断され、ただビデオモニターで、リクリットの撮った浅草の水辺の風景を観るという、何かちょっとした拷問のような?鑑賞会。
 しかし、牛嶋神社のよだれかけをした牛の像をただ映していたり、おじいさんたちが挨拶をし合う光景など、どこか往年の日本映画のような景色。そう、われわれは、今、昭和30年代くらいの黄金期の日本映画の断片を、アキ・カウリスマキの映画の中にみつけたり、こういうリクリットの撮ったフィルムの中に発見する。今やあの日本映画の系譜は外国人でなくては撮れないものになってきているような気がする。

●02.06.28 八切止夫
 昨日は、個人的に取り寄せを頼んでいた本が重なって届いた嬉しい日であった。
 ひとつは「歴史民俗学21号 検証・八切止夫」(批評社)。私は八切止夫の魅力を、「燃えるゴミ」などのミニコミを作っていた小川てつオ君から教えてもらった。彼は「何かヘンなおやじなんですよ。サンカの研究とかやっているんだけど、サンカが精力絶倫みたいなことを書いていたり、本の後ろの方を見ると、どうも自社製品らしいんだけど、いっぱい自分の本のリストが書いてあって、お手紙くださった方には全シリーズ30冊無料進呈みたいなことを書いてあるんで、送ってみようかな、と思っているんです」という調子。以来、うらぶれた古本屋のスカスカの本棚にほこりをかぶった八切本をみかけたりすると購入していたのだが、八切氏は日本史ものを中心に膨大な本を執筆しており、いずれも、織田信長を殺したのは明智ではなかった、とか伊達政宗は女だったとか、異説をじゃんじゃん唱えて独自の八切史観を提唱していた。
 さいきんはトンデモ本ブームなどで八切再評価の兆しが出てきて、以前はすごく安かった本がお宝扱いされだし、私もくやしいけれど高いお金を払ったこともある。
 しかし、そうやって読めば読むほど、矢切って何者?という疑問は強まり、それに答えてくれる本が、この「検証・八切止夫」なのであった。
 どうやら八切氏は消火器販売などしながら、日本シェル出版という出版社を作り、自作を激しく出版、最後には全著作権も放棄して、後の世の研究者にひきついでほしいとまで公言したのであった。
 この本でも日本史の異端児にして巨人、八切止夫の全貌はまだまだつかめていないが、その端緒についたという意味では画期的。
 もう一冊の本は、宮沢章夫さんが、日記の中で書いていた、京都造形芸術大学の舞台芸術研究センターが出す「舞台芸術」という本。これについてはまた今度。

●02.06.27 アートな人生、無冠のミニコミ
 昨夜は、駕籠真太郎さんのサイン会のチラシ配りに高円寺をまわる。高円寺PAL商店街を抜けて新高円寺方面にまっすぐ歩いたところにある市場大介さんの古着屋さんに寄ったり(市場さんは「暑くなったり寒くなったりで、こうへんな陽気だとお客さんも何を着ていいんだからわからなくて服が売れないね。それに雨とサッカー準決勝が重なって…、今日はもう店じまい!」なんていってゴミを出すところであった)さらに歩いてマーブルトロンに行き、チラシを置いてもらったり、編集部にご挨拶してお取り引きのお願いをしたり、1Fのカフェでお茶を飲み、帰路につく。
 今日は石川次郎さんが来店。大柄なのにつぶらな瞳には子犬のようにピュアな輝きが宿る次郎さんは、長髪を束ね、インディアンの聖人みたいな雰囲気さえ醸しだしており、2週間に一度の割で納品や品物の入れ替えにみえる。もう2、3年このペースであろうか。
 タコシェに入って、右手の小物類がいろいろ置いてあるスペースに、次郎さんコーナーとでも言おうエリアがある。豆本や駄菓子パッケージのようなお手製オブジェなどの作品郡は、次郎さんが小さな字やレタリングで書いたたポップで飾りたてられ、全体がサイケな輝きを放っている…。
 DTP時代にありながら手書き・手製本の豆本のスタイルをこだわり、赤裸々な周辺雑記を出し続けたり、廃物を活かした大竹伸朗ばりのコラージュ作品を作ったり、お刺身についてくるわさびを盛るプラスチックのお皿やウレタンなどを利用したチープなマスコットを生み出したり、音楽活動を行い闇地獄沼次郎名義でカセットをリリース、エロ雑誌のグラビアを用いた小物づくりと、その活動や寺山修司じゃないが、輝く多面体である。
 おそらくタコシェの中で次郎さんはもっとも長きにわたり、多岐にわたるミニコミやオブジェを作り続けているのではなかろう。私たち店員は、タコシェにいることによって、そのひとつひとつに接し、次郎さんの軌跡を追うことができた幸せな鑑賞者である。
 周辺雑記や半生記的な豆本の中では、腰痛から次第に落ち込み鬱になり自殺まで企て故郷の海に投身するものの、波によって荒磯に揉まれた末に打ち上げられ体中から流血しながら人々のさらし者のようになって家に戻る生と死の波打ち際が描かれていたり、性欲とその発露(オナニー&セックス)がリアルに描写されていることもあれば、アーティストとして思い詰めたあげく仕事先に本気で討ち入りに向かうくだりもあり、壮絶な過去が展開されている。そこには次郎先生の慟哭や咆哮に満ち、これを読めば、そんじょそこらの癒しの言葉なんか薄っぺらで偽善的に思えてくるくらい。
 そう、次郎さんはその作品のひとつひとつに血肉を分け与えていると同時に、作品の集合体、ひいては次郎さんそのものが巨大な生けるアートなのであった。
 それは、ときには、小さな袋を開けてみると、脱力感に襲われるような、ダジャレオブジェが出てくることもある。しかし、それも含めて次郎さんなのである。大吉しかないお神籤が無意味なように、あるいは、はずれることがあるからといって馬券を買わない者が競馬の悦楽を享受できないように、この脱力感をも含めた次郎作品群を味わわなくては意味がないのだ。
 ミニコミの世界にも、資料性の高さ、アートディレクションのセンスなど、それを評価する切り口は存在し、その価値を認められるものがある。しかし次郎さんは、ただ自らにのみ従ってミニコミを作り、人生をアートする…。そんな唯一無二の存在を感じるべく、一見無造作な入口付近のコーナーに目をとめてみてください。2週間にいっぺん少しずつ生まれかわっているのです…。

●02.06.26 書肆アクセスの日記を読む
 神田にある地方小出版の直営店・書肆アクセスの店長・畠中さんと店員だった黒沢さん共著の『神保町書肆アクセス 半畳日記』が出たので、同業者として拝読しているが楽しい。
 前半は新人だった頃の黒沢さんの目に映った、面白いお客さん、個性の強い神田の書店人たちが大勢登場。ときには床に座って一日中本を読んでいる客、自分の話をしだして止まらない客…高額商品を買おうとする客に向けた「おやじ、いいぞ」といった心の声も大胆で、おもしろい。好奇心旺盛で、最後にはそういうお客さんにも愛情を寄せる黒沢さんならではのキャラクターが、おやじよばわりも許させてしまう。
 タコシェにも楽しいお客さんは見えるのだが、この日記でも店主である私がお客さんのことを自社ホームページで面白がって書いていいものかな?という躊躇もあってどうしても自らへの禁じ手みたいになってしまう。納品者の方の場合でも、そうかな…。
 というので、今日は特別に営業に見えたKAERU VOXの堀川さんのことを。堀川さんはお嬢様育ちの元アイドルというすごい経歴の持ち主。整った小顔とスリムな体型は、いまもアイドルの輝きをおしみなく放ち、タコシェの男性店員がひそかに来店を楽しみにしている人物である。堀川さんは、石立鉄男、天本英世らのサンプリングCDシリーズをリリースするKAERU VOXの営業レディ。その苦労と奮闘ぶりは雑誌「サイゾー」に営業日誌として連載されていて、その内容たるや、美人ゆえにときにはセクハラを受けたり、辣腕買い付け担当に無理難題をふっかけられ…と涙ものなのだが、そのことを質すと、「サイゾー用にちょっと面白く書いてます」と話し微笑みを浮かべた。そんな姿形も気持ちも常にアイドルな堀川さんが手ずから運ぶ天本英世の説教CD…。そういえば耳を傾けると、おやじ臭さの中に、さわやかなレモンの香がほのかにするような…。あなたも一枚どうですか…?
 って、人のことって書いてて楽しいですね!

●02.06.25 マイポエム
 神田に出て、問屋や本屋へ。
 メールで日本の現代詩について問い合わせを受け、80年代には吉増剛造が出るイベントに行ったり、伊藤比呂美、ねじめ正一などの注目若手の詩集もかなり買っていたはずが、最近、詩壇のことをチェックしてなかったなぁ、などと反省し、書店の詩のコーナーを見た。
 そういえば、私の好きな詩って何だっけ…、すぐには思い浮かばないよ! こういうとき、声に出して詩が出てくるとすごいでしょうね。
 カラオケの十八番のように誰にお気に入りのマイポエムってあるのかなぁ?

●02.06.24 隅田川には今日も歴史上の偉人たちが往き来していた…。
 市場大介さんの展示は、紙の大きさが微妙に額の大きさとずれていたためマットでなく新聞紙を周囲に敷くという方法で対処し、絵も連作を展示しているし、全作品に新聞紙がついているしで、これまでの展示の中でもっともコンセプチュアル?。一貫したテイストが出ていていいと思います。
 昨日は、店には出なかったものの実は中野付近をウロウロし、ブロードウェイ周辺マップ(主に食べ物屋)作成に役立ちそうな店めぐりをしていた。食べ歩きじゃなく、店の構えを見てまわるだけの何やらわからない行動…。しかし、いつも中野にいながら、本当に店の近くしか出歩いてなかったので、周辺地理が少しわかって発見の連続だった。
 今日は、隅田川周辺で展開されているリクリット・ティラヴァーニャのイベントや船上上映会の予定を教えてもらおうと、浅草の隅田川べりの船着き場へ行く。上映を行っている客船は「竜馬」号というらしいのだが、「竜馬号はいつ出ますか」と訊くと幕末史マニアのようで恥ずかしいので、「ビデオを上映している船は…」と尋ねたら、毎日不定期なので、当日電話で問い合わすようにとのこと。そこにあったチラシをもらってきたが、隅田川の船は竜馬号とか海舟号、道潅号、マルコ・ポーロ号などというらしい。どれもすごい名前である…。

●02.06.21 ひるさがり、来客はいそいそ帰ってゆく
  昼過ぎに店にやってきた市場大介さんや営業マンたちは、3:30からブラジル×イギリス戦ですので、と用事をすませてさっさと帰ってゆく。こんなに仕事をしない人たちがいて、本当に経済効果があるのだろうか、ワールドカップ。
 私は間違って送られてきた為替の処理とか、駕籠さんのイベント、佐伯さんの展示のための準備などに追われ、閉店後のこれからはあすの市場さんの展示の準備。

●02.06.20 大葬儀!?2
 昨日、発生した「大葬儀」発売記念サイン会の話、今日はさっそく太田出版の方がみえて細部の打ち合わせと、トントン拍子。
 店内も葬儀の雰囲気を出すために小道具を調達して…という話になったとき、つい「もし揃わないものがありましたらご相談ください」と申し出てしまったのは、家の仏壇から一時的に拝借すれば…と思ったからである。
 おりしも今日は父の命日。あれから19年になるが、成長した娘は墓参りにも行かずに、父親の仏壇から仏具をそっと持ちだそうとしている…。しかし、こんな形で父に助けられ仕事ができるとは、お父さんはいまも私を見守ってくれているんだなぁ…なんてひとりよがり? ちゃんと仏壇に手を合わせとかないといけませんね。
 今日は、ほかにも佐伯俊男さんの展示の件でも、佐伯さんと最終的な確認がとれて嬉しい。

●02.06.19 大葬儀!?
 駕籠真太郎さんの新刊「大葬儀」(太田出版)発売にあわせて、7/6あたりにサイン会を行うという話が、持ち上がり急にまとまる。
 が、しかし!
 本のタイトルの「大葬儀」にちなんで、葬儀形式のイベントにしたいというのが駕籠先生や出版社側のご希望であった。太田出版の方は「こういうことを御理解していただけるのはタコシェさんだと思いまして…」とおっしゃり、そういえば以前にも取次から扱い拒否を受けた本のサイン会をしたこともあったなぁと思いながらも、気がかりは隣近所である…。
 不謹慎だとか縁起でもないなんて思われやしないであろうか。前日に菓子おりでも持って御説明にまわった方がよいだろう、などとそっちの段取りをまず考えてしまう。
 店員も喪服で参加…、私は祖父母や父親など身近な肉親をすでに失っているものの喪服を持っていない。父のときはまだ学生だったせいもあるが、その後、老衰で大往生した祖父母の場合でも、何かあぶなくなってから喪服を作ると、「準備万端、これでいつお迎えがきてもOKだよ、おじいちゃん」みたいかなぁ…と作りしぶってしまったのである。なので、これがいい機会なのかも。駕籠先生のファンはもちろん、私のような方もこの機に喪服を作っていらしてください。
 それにしても、7/6にイベントが行われたとして、翌日は従弟の結婚式
に出席の予定である。何か盆&正月みたい。

●02.06.18 自転車で悩む
 日本決勝トーナメント初戦、そして雨。今日も辺りは静かである。
 実は中野通り沿いに、最近、自転車店ができて、私はそこで自転車を買おうかどうか悩んでいる。
 現在、ほぼ毎日駅に行くまで乗っている愛車は10年以上前から使っているママチャリで、近頃町で見ることがまれな色やデザインである。
 手入れは一切しないので、錆と汚れでそうとう老朽化も進んでいるが、これが盗難防止に効果があるのだ!てなことを言っていっこうに磨きもしない。
 ときどき修理で自転車店へ持ってゆくと、もう寿命だね…と言われるが、それは新しいのを買わせようという魂胆じゃない…?と思ったりして、「使えなくなるまで乗るの」と言って、修理でごまかしつつ乗り続けてきた。
 周囲からはタイヤ交換するくらいなら、スーパーで新品買うのと殆どかわらないよ…とも言われていたのだが、「なんで完全に乗れなくないのに新品を買う? エコロジーだよ、エコロジー」と無視してきた。
 でも自転車専門店の自転車を見ていたら、新車もいいなぁと思えてきたのである。
 それに、東京都もいつなんどきどんな災害に見舞われるかわからないので、歩いて帰れるように、自転車で中野から葛飾まで一度走っておいた方がよかろう、と考えたのであった。
 しかし、そうはいっても、中野から葛飾までって、どれくらいかかるんだか、さっぱりわからない。そこで、たまたま電車の中で会った岸野雄一に尋ねてみると
「そうだね、休憩をとりながら1日かかるんじゃない…でもふだんあまり乗らない人の場合、相当、足腰にくるみたいよ…あのね、うちの近くの押上にもいい自転車屋があるから、そこからにしたら…」と心配そうな表情。押上からなら距離は1/3くらいになるのか。
 さらに弟にも聞いてみると「1日、いや2日はみないと…帰るので一日仕事、さらに翌日筋肉痛で動けなくなるから、まる2日」だと。
 たったひとりのツール・ド・フランスじゃない、ツール・ド・東京。完走しても、手にするものは栄光と筋肉痛のみ。一日中歩いても筋肉痛にはならないけど、自転車は違うのかな? どうしたものかな…。もちろん、私が買おうとしているのは、またしてもママチャリである。自転車有識者にききたい。

●02.06.17 あわやひったくり強盗
 昨夜、仕事の帰り、駅から自宅まで自転車に乗って走っていると、後ろからバイクの音。近付くにつれ減速しているようなので、さては、これがバイクを使ったひったくりだな…と背中を耳にして気配をさぐる。
 平和そうな下町でも、最近、このてのひったくり被害の話を聞くことがある。同級生のお母さんも、昼間に自転車で走っていたところを、若い男が後ろからバイクでやってきて、カゴに入れていたバッグをとっていったという。幸いケガはなかったが、数日前に入院したおじさんの入院費を届ける途中だったそうで、まさに泣き面に蜂という状態。しかも「おばさん、あれから、病院で帽子にマスクの男の人が横を通っただけでもなんかこわくて…」とPTSDじゃないが、これまでの威勢のよさとはうってかわって気弱な様子で、非常に気の毒である。口や手はよく動くが、これに反して反射神経や足腰が弱くなりはじめた私たちの母親世代というのが餌食になってしまうようで、腹立たしい。
 減速して近付いてくるバイクの音を聞きながら、ひったくりと分かったからには、とられてなるものか、逆にこっちから先に一発かまして痛い目にあわせてやれ、と思った。急停車して、「テメェ、ひったくりのつもりかよ」と一喝して、丈夫な足でもって蹴りをかまし、商売道具?のバイクを横転させてやろうと考えたのである。
 バイクが真後ろにきたところで、私はバッグを抱きかかえて自転車を急停車させ飛び下りると、すごい形相(自分でも眉間や鼻に縦じわが3本くらい寄っているのがわかった)睨みつけたが---、そこには、配達先を目前にしたピザ配達の若い男の子が恐怖に凍り付いていた。ふりかえりざまに回し蹴りなどをしないでよかった。
 今日は夕方、太田螢一さんグッズのための打ち合わせ。セミオーダーのトートバッグの通販を行っている、その道のプロみつばちトートさんの協力や助言で話も具体化、現実的になってきた。バッグ自体がオリジナルの太田さんグッズができますよ!

●02.06.16 半分お休み
 この日曜日も、青山方面に出て、アートスペースで手作り本の展示を見たり、SPANA+でアグラ家具の展示を見たり、6%DOKIDOKIに寄ったりとギャラリーや店めぐり。途中意味なくOPA!に寄って、お茶をもらったりサッカー中継をみたりと、私の原宿での休憩スポットはギャラリーOPA!となっている。和めるギャラリーなので、おすすめである。夕方からタコシェにでてメールのチェックや豊浦氏の搬出など。

●02.06.15 急にパレスチナ問題
 日本中がワールドカップにうかれている間に、ふとニュースをみたら、京都を拠点にプロジェクトPというネットワークを作ってセクシャリティ関係の活動をしていてタコシェにもその出版物を納品していただいている日比野さんが、人間の盾として知られるNGOに参加し、イスラエルに逮捕・拘留されていたことを知った。
 人間の盾というのは、イスラエル軍の侵攻で外出もできないでいるパレスチナの人に物資を運んだり、病人や怪我人が出た場合は医者のもとに送ったり医者を呼んだりというお手伝いをしている団体で、その方法というのが、イスラエルにもパレスチナにも属さない外国人のボランティアが中心となり、丸腰のまま白旗を振ったり万歳スタイルで戦意のないことを表明しながらときには生身の体を盾にして病人を運んだり食料を届けるという大胆かつピースフルなものだが、非暴力を全面にかかげているにもかかわらずこれまでに銃で撃たれたメンバーもいる。
 日比野さんには電話で連絡をとって納品をお願いしたり、途中で追加や精算の連絡をとっただけで直接お目にかかったことはないのだが、彼自身はバイセクシャルであることをはやくからカムアウトしつつ、単にそうした立場の人間の権利の主張を訴えるのではなく、ゲイからもときには特殊なものとして扱われがちなバイセクシュアルという立場を通して、ゲイムーブメントを補ったり修正するだけでなく、当たり前になっている世の中の制度(戸籍問題、そもそも性を外性器によってどちらかにふりわけようということ自体が無理じゃないのかという性別問題、同性愛の団体が公共施設の使用をことわられたことから男女別室やトイレの男女別は何のためか?考える問題…)に疑問を付して、ゲイもレズもバイも含めた人々が住みやすい社会を考えようとしていたと思う。
 それだけに、彼がセクシャリティ運動を通して多くの社会の問題を痛感し市民運動や社会参加の方法を模索していたのも納得でき、今回の逮捕や拘留も驚きではなかったのだが、そんなことさておきサッカーに熱狂している状況というのが妙な感じがする。
 日比野さんは保釈され、現在不当な逮捕や拘留に対する異議申し立てを行っている。こっちにもサポーターは必要な気がする。

●02.06.14 CDチェンジャー
 午前中にアポが入っていたので一度店に出てから、昼すぎからかかりつけの病院へ。途中、千駄ヶ谷の駅では国立競技場でのパブリック・ビューに集まる日本ユニフォームの大量のサポーター…。サッカーの経済効果がいろいろと言われているが、昨日乗ったタクシーの運転手さんも試合があると人が出なくなってさっぱりだよと、逆経済効果を嘆いていた。タコシェも日本の試合の時は寂しい…。
 人が少ないので、Oz discの田口さんが持ってきてくれたCDチェンジャー設置を行う。CDの棚の隣に新たにCDチェンジャー用の棚を組み立てそこに機械を置こうというもの。東急ハンズでパーツを買ってきて、昨日組み立ててみたのだが(正確には私は買いだしと口だしだけで、組み立てはイトーである)、微妙に棚板が大きく棚に収まらないので削ってみたり、私の買ってきた金具では脚がうまく固定できないので、違う金具を買い直して、再度組み立て。今度は脚もグラグラせずにうまくいった。
 ワールドカップ期間、いつもは手薄になりがちな棚や内装関係に力を入れることにしよう。

●02.06.13 商業統計調査
 毎年、この時期、商業統計調査とういうのがあって、店を対象とした国税調査みたいにアンケートへの回答を求められる。売上の内訳などを記入しなくてはならず、3月末の在庫の金額なども書かなくてはいけないのだが、年度末が3月ではないタコシェでは、そういう数字を計算したり、明細を報告するにしても紳士服・婦人服・子供服の分類しかない調査に対してTシャツというくくりで売っている服が分類のしようがなかったりで、結局、苦心してそれらしい数字を算出することになるのだが、税金のための申告じゃないんだから適当でいいか、と思う反面、適当に書いて申告書と違うと何か言われたりするのかな?など心配してしまう。
 ところで、その調査票の入っている封筒の裏に平成11年度の東京都の各区や市の商店数、従業員数、年間販売額の表が出ていて、私の住む葛飾区は23区の中で数字が低い3区(一般にはワースト3などという)に入っていることがわかった。ほかに数字が小さい区は荒川区と北区である。近所の区だ。
 商店数、従業員数、年間販売額(100万円単位)の順で、
荒川区---3605店 18723人 611474百万円
北区---- 4666店  26188人 771895百万円
葛飾区---5782店  30312人 797319百万円
である。ちなみにタコシェのある中野区は4087店25820人とここまでは葛飾区より少ないのだが1303250百万円と売上は倍近くある。商売上手なのである(というより、丸井本社など大きな会社の本社があるためなどと考える方がまっとうであろう)。この3区のほかはみな売上が一桁、区によっては二桁多い。
 ワールドカップがこんなにもりあがり、不況のアルゼンチンも注目されるように、区対抗サッカー大会をすれば葛飾、荒川、北にも活躍の場があるだろうか。それとも外国人勢が多そうな港区などが強いのだろうか。

●02.06.12 ナンシー関さんのフェアのことなど
 タコシェへのテレビ局からの問い合わせでナンシー関さんの訃報を知った。ナンシーさんには以前、フェアに作品を出していただき、たいへんお世話になった。
 例の、消しゴム版画を拡大したパネルや版画つきヴィンテージ作品を展示しつつ、各地の展覧会場を回った後、お宅に眠っていた直押しの消しゴム版画で作ったミニパネルを、原版さえ残っていれば大丈夫だからと販売用に500個ほど出してくださり、1個150円というサービス価格で放出。店内の棚のあちこちにミニパネルを貼りつけお客さまはお気に入りのキャラを、果物狩りのように自分でとって籠に入れて買うという、豪快なイベントになった。パネルがなくなると、私たちは次から次へと補充して、たくさんあった版画もすべて売り切れてしまった。
 イベント名も「ナンシー関版画まつり」で、「まつり」という言葉を盛り込みたいという希望通り、まさにお祭りの屋台のように、子供から大人まで、誰でもひやかしに来て、お小遣いで楽しめるものになった。150円で本物の版画をそばに置いて味わいながら暮らすという楽しみをたくさんのお客さまに分けてださったことに改めて感謝したい。あのパネルを今もお部屋に飾っている方も少なくないのでは。私も牧伸二などのオヤジものを身近に置いている。
 ナンシーさんは辛口のテレビ評で知られるが、こんな風に自身の作品を売るという段になると、自分にも厳しいのか「家に置いておいても使わないから、ただでもっていってもらっていいくらい」と謙虚でいて、そんな潔さが、あの何にもおもねらない文章の切れ味に繋がっていたのでは、と思える。
 ナンシーさんがいなくなって誰がテレビを見守るのか、寂しい限りである。つつしんでご冥福をお祈りいたします。

●02.06.11 本に関する雑誌が頑張っているのは…
 発売日から、ちょっと遅れたけど、本に関する雑誌recorecoが入荷。タコシェに納品していただいているミニコミ編集人も何人か執筆してたり、コミックや画集・写真集にも対応した執筆陣、かなり読ませてくれます。出版業界は不況と言うが、そのわりに、あるいは、それだからこそ、本に関する雑誌が創刊されたり頑張っている、という印象も。
 暫く前に出た「BOOKISH」は新刊・古書を網羅しながら、著者や作品と読者を結びつけるだけでなく、版元や書店にも取材して本のバックステージを見せるという工夫をしていたり、「RECORECO」も普通の書籍からアートブックやミニコミにまで目を配ったうえであえて本そのものでなくガチャガチャにスポットを当てた特集を組むという技が。
 そんなところに、出版界や書店の活路のヒントもあるように思えて読んでしまう。
 ただ、「声に出して読みたい日本語」にしてもそうだが、何やら、本そのものより、何をいかに読むか?に読者は興味をひかれているような。読者もまた何か指針をもとめて漂流しているのでしょうか…。

●02.06.10 老人バスに乗る
 家から最寄り駅に行くと、駅前の踏切にお巡りさんやパトカー。おっ、事件か?と近付いてゆくと、ポイント故障ということで、線路に100人くらいの工事の人たちが作業している。そんなにたくさんの人で直すのか…、と成り行きを野次馬していたかったが、これから店に行かなくてはならないというのに、電車は不通、復旧の見通しがたたないポイント故障を見守ることは無理である。残念だが、バスに乗り地下鉄で…とルートを変更し、なかなか駅員さんがくれようとしない振替チケットをもぎとり、バスを待ち地下鉄の駅に。途中バスで自宅付近を通ったときは、事故を知ってから40分ほど経っていた…。自宅付近で何をもたもたしているのかと少し焦ったが、昼間のバスは、老人がたいへん多く安全運転である。老人が座りきるまで、降りきるまで発車しないのである。たいへんよいことだが、バスはなかなか進まない。立っている老人もいたので、「若いのは席をゆずらんかい」と思って見渡しても、50才くらいの人が若い部類で、老人がもっと年とった老人に手をかしたり席を譲る世界である。昨日、原宿あたりではまわりがみな若くみえて場違いじゃないかと少し気になったが、今日は自分がまだまだ子供に思える。ポイント故障のおかげで思いがけず老人世界にどっぷり浸り、自分の若さをかみしめた。
 途中、神田で本を少し仕入れてタコシェに到着。

●02.06.09 そういえば開店記念日
 青山に出て、ビリケン商会というおもちゃと絵本のお店に行ったり、Nadiffや知り合いのイラストレーターさんたちも出品しているOPA!ギャラリーのサッカーTシャツ展などをまわる。何か休日にこういう町を歩くってOLみたい、と浮き浮き気分になる。その後、ちょうど近くに出たので、岸野雄一のインストアイベントを覗く。ワールドカップの日露戦にぶつかって大丈夫かな?とも思ったが、ファンが集っていて、ゲストの中の中ザワヒデキ、常盤響、池松江美は、アーティスト岸野ではなく岸野が作ったキャラクター・ヒゲの未亡人の私生活を探る不思議な展開に。
 その後、市場大介さんのライブにと思ったが、会場がわからず結局、帰宅。ちゃんと調べて書きとめておけばよかった…。
 そうそう、タコシェは1993年の今日、西早稲田に開店しました。その日は皇太子と雅子さん御成婚の日でもあった。あれから丸9周年。皆様どうもありがとうございます。

●02.06.08 川崎タカオ展初日
 川崎タカオ原画展の初日。左衛門橋通に鳥越神社のお祭をみながらタコシェに行くと、「自分で作る小さな本」の著者である田中さんがみえて、手作りの贅沢な豆本を見せてくださった。本来は製本の素材でないものを本とは違った豆本というミニチュアに利用し、最初から誂えたように本のパーツとしてバチッときめてしまう技に感服。
 閉店後は川崎タカオさんの初日打ち上げ。居酒屋で若いイラストレーター仲間の皆さんもご一緒で、青春群像…というかんじであった。

●02.06.07 私の当たりはまだまだである
 昨日は、版元さんたちの集まりに参加したが、一通りの報告や話し合いが終わっての親睦会や飲み会では、会社勤めなどしていない私が日頃あまり接することのない、中年の方々もかなりいらして、そのパワーを垣間見た気がした。私は30代なのだが、ちょっとしか年が違わないようでいて松沢呉一もそうだが40代の方々でメディア関係の仕事をしている人の中には市民運動や学生運動に何らかの形で関わってらした方も多く、彼らは議論が好きだったりしてどこか熱い。「山芋たべなよ」「はい、でも一昨日も昨日も私は山芋を食べているので…」「じゃあ今日も食べればいいじゃない!ほらぁ」と、ささいなことにもエネルギーの波動を感じます。帰りの電車の中でも、本の置き方や棚について苦言を呈されたが、私は上司とか先輩に殆ど無縁に働いてきたので、たまに忠告されると実にありがたいと思う。
 明日から川崎タカオさんの展示。川崎さんのイラストを雑誌などで見ていても川崎さんがその作品の人だとピンとこない人もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方のためにもこのタカオワールドを捧げます…。
 今回、額装やタイトルのタグつけまで川崎さん本人がご用意くださり、何度も足を運んでいただいた。ささやかですが、グッズもご用意しましたのでよろしく。

●02.06.05 OKI電気に勇み足のはじ
 お店で、DMなどを作るときは、私は画像ソフトを殆ど使えないので、たいてい、イトーに作ってもらっていた。最近、濱岡にも頼んでおり、今日は彼女の作ったものをプリントアウトしようとしたところ、メモリ不足でうまくプリントできない。解像度をさげるとか、やれ別のソフトに読み込んでみるとか、あれこれ試すがやっぱりうまくいかずに、早く紙でほしいのにどうにもならない。
 イトーは「プリンタのメモリが足りないんですよ」と言い、そのプリンタを買ってきた私は何か腑に落ちない気分であり、濱岡に「だから、ちゃんと作動するかどうか確認しておくように言っといたじゃない」と言ってみたが、濱岡は「まさか、この程度ができないとは思いませんでした」とのんびりした口調で答えるので、私は苛立った。何を落ち着いているのだ、なにかもっと、こう…、問題を解決しようとあせれ。ワールドカップでも、諦めモードになるのがいけないのだ、どん欲に這ってでもゴールを目指さないとダメなように!と
 ともかく、モノクロで10センチ四方くらいの画像が入った文書1P程度をプリントアウトできないプリンタなんて犯罪じゃないか。まさか。私はいきなり「(プリンタのメーカーである)OKIに電話してはっきりさせるのよ!」と言い、イトーに電話番号を探させ、電話をかけた。
 電話に出た女性の係は「さあ…、その程度の画像がプリントアウトできないという報告は今のところないですね」と暗に問題がプリンタそのものでないことを語りつつ、てはじめに私に使用ソフトの割り当てメモリを増やしバックアッププリントをオフにすることをアドバイスした。私は、というか正確には、電話で言われたことをそのままイトーに指示してイトーによってコンピュータを操作するというたいへんに面倒くさい方法で言う通りにして、あっさりプリントできた…。
 イトーは「割り当てメモリを増やすことさえせずに電話した、ってかなり恥ずかしいことですね」と笑って言ったが、どうしてそういう恥をいつも私にかかせるのか? そういう役回りになりたくないものである。

●02.06.04 ワールドカップがはじまるとタコシェは
 ついに、日本もワールドカップ初戦。店にはテレビがないので、どうなっているのかわからない。タコシェはブロードウェイという大きなビルの中にあって、そのビルは近所の方々が駅へ行くのに通り抜けたりするので、商店街のようにいつも人の流れがあるのだが、これが大きなスポーツ大会の決勝戦とか日本の大きな試合のときなど、ビル自体がガラ〜ンとしてしまうのである。
 プロレスの試合を放送する街頭テレビにみんなが集まったとか、流行のテレビドラマの時間帯に銭湯がガラガラになったなんていうのは昔の話であるが、今でもそういう国民的なプログラムがたまにこういう形であるのだなぁ、なんて感じるものの、お店としてはちょっと寂しい。
 漁師をやっていれば海の天候や荒れ具合などに敏感になるようにお店をやっていると、街に人が繰り出す具合というのに敏感になるもの。
 ところで私はワールドカップ、スロベニアに注目しています。

●02.06.03 ポエトリィ・ハラスメント
 辛酸先生こと池松さんに誘われ、先週末、ポエトリィ・リーディングを見て以来、私もその場の流れや礼儀からオープンマイクはいかが?とお声をかけてもらい、結構その気になったものの、私にはあの参加者たちのようにたぎる思いがなく、訴えたいこともない、という致命的問題に直面した。悶々とする日々…。
 岸野雄一に「声をかけてもらったんだけど、訴えたいことがないの。どうしたらいいと思う?」と相談すると「言いたいことがないんなら、やめた方がいいんじゃない…」という、しごく真っ当な答えが返ってきた。しかし、そうは言われても悶々は続き、もはや勉強が嫌いなのにいい学校には入りたい受験生とか、不細工なのにオーディションを受けたがる少女のように始末に終えない状態。
 思いあまって、イトーにまで「ねぇ、言いたいことはないんだけど、誘われたし、一度くらい出てみたいじゃない。どうしたらいいと思う? 池松さんはエコロジーをテーマにするみたいなんだけどサ」なんて愚痴とも悩みともつかにことを言う。しかし、イトーまでもが「さぁ…、出なきゃいいと思うんですがね…」と岸野雄一と同じことを言う。「そうね、言いたいことがないんだからね。でも、出場してみたいから悩んでるの。あ、いま、ふと思いついたんだけどサ、言いたいことがなければ、言いたいことのある人に代わって言えばいいんじゃない? たとえば、森の気持ちになって、(ああ、苦しい、これ以上、私に酸性雨を降らせないで! 私は苦しみのあまり断末魔の杉花粉を散らすのです、うーー)とか」「はぁ…、でも、それエコロジーじゃないですか。池松さんとかぶりますよね」「そうね。じゃあ、どんなテーマがいいと思う?」「日韓ワールドカップ共催とかでいいんじゃないんですか」あまりに思いつきだけのぞんざいなアドバイスである。しかし私は藁にもすがる思いなので「そう? じゃあバイリンガルでやろうかしら。(日韓ワールドカップ共催、おめでとうございマスミダァー!)」「…」
 世間では上司のカラオケにつきあう苦労が語られることはあるが、今、タコシェではカラオケより苦しい上司のポエトリィ・リーディングという修行が果たされている。



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